―― 昨年末の『紅白歌合戦』、泉さんのMCも含め、感動しました。
二人 わー、ありがとうございます!
―― 大晦日の歌詞アクセスランキングでは、HYさんの「366日」が2位でした。不朽の名曲の歌詞が、紅白でこれだけ読まれることって実は珍しくて。みなさんすでに知っている楽曲だからこそ、逆に改めて歌詞は読まれないパターンも多いんです。
仲宗根 そうか、たしかにそうだよね。
新里 じゃあ実質1位だ(笑)。
―― それだけ歌詞力が強い楽曲なのだなと。また、去年はこの「366日」という楽曲から、月9ドラマ『366日』が生まれ。さらに今年は映画『366日』も公開となり。かなりすごいことですよね。
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仲宗根 そうですよね。もともとはドラマ『赤い糸』の主題歌でしたから。それが16年経って、新たに月9ドラマの大事な部分として使っていただけるとは。しかもその主題歌として何組ものアーティストとデュエットさせていただいて。さらに、映画にまでなるとは。もう私たちとしては、「そんなにやっていただいて大丈夫!?」ってぐらい(笑)。驚きと、嬉しさと、ありがたさと。
新里 本当にそうだね。
仲宗根 でも紅白でもお話させていただいたように、東日本大震災のあと、被災地の方々の前で「366日」を歌わせていただいたことによって、この歌に対する想いが大きく変わりまして。自分の目の前にいるのは、大切なひとを亡くした方ばかりで。その方々にとって、昔の恋愛ではない。それならば、失恋ソングとして表現するのではなく、「もう二度と会えないひとへの大切な想い」として歌いたいなと思ったんです。
自分自身、今は歌いながら、亡くなった父のことを想ったりすることもあって。リリースから16年の月日のなかで、歌詞の意味もどんどん変わっていって、それを経ての紅白での歌唱だった。だからこそ、急遽MCでお話させていただいたんです。みなさんに「あー、昔流行っていたよね」という感じで聴いてほしいわけじゃないと思ってね。
―― そして、映画『366日』の主題歌として、「366日」のアンサーソングである新曲「恋をして」も生まれました。
仲宗根 「恋をして」を作るときは、ものすごくプレッシャーが大きかったです。まずやっぱり「366日」がすごく大きな歌になっているから、それと同じくらいの熱量を持ったものじゃないといけない。しかもアンサーソングでないといけない。16年前は想像もしていなかったことだから、あの歌の先にどういう感情を描くのか難しい。さらに、映画の主題歌として成り立つものでないといけない。考えるともう頭のなかがめちゃくちゃで(笑)。
プラス、映画制作側のみなさんにも強い想いがあって、いろんなご要望をいただきまして。最初は「男性目線のラブソングを」というお話だったんです。でも、私は女性だから、男性の気持ちはわからないし。何より、先ほどお話した「366日」という歌に対する想いの変化があったので、それを映画サイドの方々にお伝えしたんですね。そうしたら、「じゃあこれは恋愛だけの映画じゃいけないね」と、どんどんシナリオを変えてくださって。
―― 「366日」をモチーフに生まれた映画だからこそ、歌自体が変化したなら、物語も変わってくる。いわゆる、映画作品とタイアップ主題歌の関係とはまた違いますね。
仲宗根 そうなんです。そして、「いったん、自分の好きなように書いてみます」と言って、「恋をして」を書かせてもらったら、すごく映画の内容にも合って。なおかつ、楽曲単体としても、しっかり成立するものができた。それで自信を持って映画サイドのみなさんに聴いてもらったら、「もうこれでバッチリです」ということだったので、今はとりあえずホッとしていますね。
―― ヒデさんは、泉さんから「恋をして」を受け取ったときの印象はいかがでしたか?
新里 曲を聴いた瞬間に、鳥肌が立ちました。ひとつひとつ言葉はシンプルなんだけれど、そこにたどり着くまでの様々なバックボーンを感じたんです。イズ自身もこういう経験を経て、この歌詞を生み出したんだなと。それですぐイズに、「マジでとってもいい曲だから、みんなでこれを最高のものにしていこう」ってメールをしました。それぐらい特別な曲になる予感が大きかったですね。
―― 「恋をして」は、歌い出しがヒデさんからというのも印象的で。
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仲宗根 あえてヒデから歌うことに意味があるかなって。「366日」は私がメインで歌うので、リリース当時、みなさんからソロボーカルだと思われていたんですよね。仲宗根泉って名前だけど、HYという名義を使っているような。Superflyさんみたいな形というか。まずそこで自分としてはカルチャーショックがあって。「そんなにHYというバンドは知られてないのか」とか。「こんなにバラードしか出ていかないのか」とか。
だから「恋をして」は、絶対にヒデと一緒に歌いたいと思いました。まず、ヒデというボーカルの声を聴いてほしい。そして、HY最大の武器である、ふたりのハーモニーは入れたい。この歌のハモリは結構、難しいんですよ。そこをヒデに頑張っていただきまして。今の若い子って、みんな歌が上手いじゃないですか。それなら難しいほうが、攻略しようとたくさん歌ってくれるんじゃないかな、と。そんなことも考えながら作りましたね。