前月の解説とも重複するが、昨今の音楽チャートでは、アニメ主題歌がTOP10入りしない週は珍しいほどで、しかもJ-POPアーティストのアニメ主題歌のみならず、アニメ内の架空のアーティストによる楽曲もランクイン、更にはアニメタイアップがなくとも上位入りする声優も登場しており、長らく減少傾向にあるパッケージ・ビジネスを大きく支えている。そのようなチャートから、ビジュアル面が支持されていることは間違いないが、では、楽曲は支持されているのだろうか。それを歌詞検索ランキングから探ろうというのが今回の目的だ。
早速TOP10を見てみると、全曲TVや映画などのアニメ主題歌が並んだ。CDチャートのように、ノンタイアップの声優楽曲がランクインするほどには至っていないが、少なくとも"アニメだけでなく、その関連楽曲も支持されている"様子が見て取れる。1位、2位はともに深夜アニメ『けいおん!!』に登場する架空の女子高生バンドが演奏するオープニング&エンディング曲。顔の1/3ほどを目が占めている、いわゆる"萌え系"のキャラクターだから支持されているように誤解されがちだが、この2曲は、着うたフルでも週間TOP10入り、カラオケランキングでも超早口な「GO! GO! MANIAC」を中心に上昇中、そして本歌詞検索ランキングでも共に総合TOP20入りと、多面的にヒットしており、握手会だけでCD1週目10位→2週目100位以下となってしまうアーティスト達よりも、よっぽど"ヒット曲"らしい動きをしている。
また、3位〜5位、7位〜9位の6曲は、いずれも所属レコード会社(あるいは事務所)がソニー・ミュージックエンタテインンメンント(SME)グループからの発売。ちなみに、平日7時台や土曜の夕方などこれらのアニメが放映されている時間枠は、原作者推薦などの特例が無い限り、すべてSMEグループのアーティスト楽曲からタイアップが決まっており、この点も同グループのアーティストが他社よりもブレイクしやすい一要因となっている。集計時点で発売前であるGalileo Galileiが5位にランクインしていることから、彼らのブレイクも濃厚だと読み取れる。但し、7位のいきものがかりは、タイアップ終了から約2年経過しているように、アニメをキッカケとしつつ、更に大衆に広がった楽曲も多数あることも忘れてはならない。
例えば、10位の「創聖のアクエリオン」は、なんと5年以上前の作品だが、パチンコ台のBGMや数々のユーロビート・カバーでも人気を得て、今でもCD、着うた、カラオケなどで多面的にヒットし続けている。実際に、08年度の著作権使用料では、青山テルマ「そばにいるね」やGReeeeN「キセキ」と同レベルで2位となっており、いかにこの楽曲が、アニメソングを離れ幅広く支持されているかが分かるだろう。確かに、「一万年と二千年前から愛してる〜」と歌われるサビを聞けば、パチンコで一儲けしようと勇気が湧くだろうし(笑)、アゲアゲ・バージョンがドライブでかかっていれば、ついついかっ飛ばしたくなるだろう。
このように、アニメタイアップ曲は、発売時点こそはステッカーやジャケットなどビジュアル先行のパッケージ・ヒットもあるものの、歌詞でも長く支持されているものも少なくないということが分かった。それは、やはり制作者側が、楽曲自体にチカラがあるものを目指すという原点を見失っていないからだろう。アニメ関連曲を敬遠しがちな送り手も我々受け手も、ここから学ぶことは沢山ありそうだ。