前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は、応援ソングをランキングしてみた。
(この度は東日本大震災で被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。私自身も仕事面で自己最大のダメージを受けましたが、体は元気ですので、一つずつ取り戻していきます。共に頑張らせて下さい。)震災から3週間経ったが、原発による人災もあって、いまだに全国的に危機的なムードが漂っている。そんな中、音楽業界ではチャリティー企画が多面的に実施されており、歌詞検索でも上昇曲が多数見られたので、応援ソングを分析することにした。


第21回:応援ソングTOP15 (2011年4月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル アーティスト 発売日
1位
4
100.0 何かひとつ feat.JAY'ED & 若旦那 JAMOSA 2011.2.23
2位
5
85.2 桜の木になろう AKB48 2011.2.16
3位
7
58.5 ランウェイ☆ビート FUNKY MONKEY BABYS 2011.3.16
4位
19
37.9 Each Other's Way 〜旅の途中〜 EXILE 2011.2.9
5位
20
37.5 あとひとつ FUNKY MONKEY BABYS 2010.8.4
6位
22
36.1 ありがとう いきものがかり 2010.5.5
7位
39
26.1 ベイビー・アイラブユー TEE 2010.10.27
8位
50
23.8 君って 西野カナ 2010.11.3
9位
53
23.0 僕のYELL シアターガールズ(AKB48) 2010.5.26
10位
59
20.9 YELL いきものがかり 2009.9.23
11位
61
20.9 Believe 2009.3.4
12位
63
19,5 もっと強く EXILE 2010.9.15
13位
70
18.5 I Wish For you EXILE 2010.10.6
14位
98
14.7 ダイジナコト AAA 2011.2.16
15位
102
14.4 月光の聖者達(ミスター・ムーンライト) 桑田佳祐 2011.2.23
※応援ソングとしてヒットしたもの、あるいは今回の震災後の応援番組やイベントで、大きな反響を呼んだ楽曲を対象とした。

 テーマ1位は前月度の"数字うた"でも1位だった「何かひとつ feat.JAY'ED & 若旦那」。ドラマ終了後も、ドラマから独立して強く支持されているようだ。そして、2位から6位を見ると、AKB48、ファンモン、EXILE、いきものがかりの人気曲がズラリ。…しかし、この面子、応援ソングという括りじゃなくても、例えば"人気着うたTOP10"でも、"人気カラオケランキング"でも、"人気ベストアルバム"でも、上位となるアーティストばかり。これは、長引く不況ムードの中、着うたやベストアルバムなどで幅広く大衆に支持されるのは応援ソングをしっかりと届けることが出来る人達ということを表わしており、特に今月は震災の影響も有り、それが如実に出ていると思われる。

 また、前月に比べ急上昇した楽曲としては7位のTEE「ベイビー・アイラブユー」が顕著。これは、同作が2月末にUSENチャートで記録的なロングセラーとなったニュースの影響もあるが、それ以上に震災で連絡が頻繁には取れず、大切な人と離れて不安な人達をずっと励まし続けていることが、1ヶ月間ずっと上位にある要因なのかもしれない。
 なお、興味深いことに、応援ソングの歌い手の年齢を調べてみると、30代はEXILEのATSUSHIが30才、ファンキー加藤が32才、若旦那が34才の3人のみでいずれも30代前半、10代はAKB48のメンバーにいるくらい、残りは全員20代ということになる。つまり、応援ソングは、あまりに上の立場である40代以上でも、人生をさほど歩んでいないであろう10代でもダメで、少し先で手を差し伸べてくれる20代が最適なのかもしれない。そう考えると、15位の桑田佳祐(55才)は驚異的な存在だということがよく分かる。

 以上のように、応援ソングは一見J-POPに溢れているようで、発信する側の年代が限られていたり、男性中心だったりと、意外とアーティストの幅が狭いことが分かった。しかし、それと同時に現在のトップ・アーティストになる為の必須条件でもあるようだ。今年いっぱいは"頑張ろう日本"と叫ばれるだろうから、そんな中で新たな応援ソングを歌う、新たなカリスマ性の強いアーティストが現れることを期待したい。




何かひとつ feat.JAY'ED & 若旦那
JAMOSA

桜の木になろう
AKB48


ランウェイ☆ビート
FUNKY MONKEY BABYS


2月に発売された9年ぶりのオリジナルアルバム『MUSICMAN』のラストに収録され、三井住友フィナンシャルグループのCMソングとして年初から流れている重厚なバラード(あのCM、何回見ても涙腺が緩みます)。「現在(いま)がどんなにやるせなくても/明日は今日より素晴らしい」という歌詞は、まさに現在の日本全体に向けてのメッセージだから、今後何らかのイベントやTV出演などでいっそう注目されそうだ。
同アルバムは、死後の世界を綴った歌詞とバイオリンの音色が交錯するアッパーな「銀河の星屑」や、いかにも湘南!という感じのミディアム「古の風吹く社」、よく1年間も「めざましテレビ」で流れていたな〜と感心するエロモード全開の「EARLY IN THE MORNING」のアルバム・バージョンなど、あまりに多彩な作風に舌を巻く。もし、購入されるなら104ページにわたるライナーノーツ中心のBOOKやドキュメント映像満載のDVDなどが付いた初回盤のPerfect BOXが断然オススメ。資料を首っ引きで見れば深堀りが出来るほど、深遠な作品。

 


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 新人部門では5ヶ月連続KARAがダントツだが、2位のねごと、5位のMAICOが上昇中だ。MAICOは、名古屋の4人組バンドCHERRY BLOSSOMのメンバーとして活躍し、09年に発表したアニメ『家庭教師ヒットマン REBORN!』のエンディング曲の「桜ロック」が2万枚ヒットとなった。バンドは、2010年6月に解散し、MAICOはソロ活動を開始、今年3月にアルバム『LIFE IS SPECIAL』を発表した。
 CHERRY BLOSSOM時代は、MAICOの高音部がSPEEDのhiroの初期同様ピンポイントで突き刺さる感じで、しかも女性ツインボーカルだったから尚更に"SPEEDのバンド版?"と素直に聞けなかったが(すみません)、こうしてソロになった楽曲を聞くと、キュートな声が多く、それでいて音程が安定している優れたボーカリストだと分かる。
 本作が注目されたキッカケは、有線やFMプロモーションで話題となり、「歌ネット」でも検索が急上昇した「元カレがやって来る」。♪元か〜れがうちにくっるぅ、元か〜れがうちにくっるぅ〜というサビのフレーズは、彼女のハラハラドキドキ感が伝わるボーカルも相まって、かなり中毒性が高い(ACの♪ポポポポーン〜に匹敵するほど)。
 他にも彼氏の良い部分を並べ立てるラブバラードの「愛してる?」や、ドライブに出かけるように陽気な「ファスナーfeat.Toss」など、歌詞にも歌声にも耳がいく楽曲が多い。"友達以上兄弟未満"の恋愛に悩み苦しむ「内緒のside story」も彼女のキュンとする声あってこそ、映えるストーリーだろう。歌声も歌詞も好感度が高いという意味では、西野カナ級の逸材かも。今後、更なるブレイクに向けて親しみやすいキャラクターが浸透していくことにも期待したい。



順位 占有率 楽曲
1 82.4% 元カレがやって来る
2 5.5% 愛してる?
3 3.9% ファスナー feat.Toss
4 3.7% Life is special
5 3.7% 内緒の side story



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic。
色々な考えがあろうとは思いますが、私は「花見の自粛」に反対です。なぜなら、来月が旬となる東北地方の方の楽しみまで奪ってしまうかもしれないから。上司がいつまでも会社にいるせいで渋々残業している部下や、お客様が食べないからいつまでも手付かずの料理などと同じ現象が起こるのでは、と。適度に息抜きしながら一緒に励めれば良いですね。