前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は男女混成グループの人気曲を分析してみた。
昨年末から、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の劇中歌を歌うMUSH&Co.、紅白歌合戦で披露した「恋音と雨空」がロングヒット中のAAAや同じく紅白での直列パフォーマンスが話題となったサカナクション、そしてJR東日本CMソングで更なるブレイクを果たしたSEKAI NO OWARI(略してセカオワ)・・と男女混成グループの人気が目立っている。SNS上でも、またリアルなフェスの会場でも、男女分け隔てなく盛り上がっている20代グループを見ていると、今は男女間を超越しても成り立つ絆がメジャーなので、この男女混声グループの人気も無意味ではなさそうだ。
第56回:男女混成グループ人気曲TOP20  (2014年3月:2014年2月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数 楽曲名 アーティスト名 発売日
1位 4 100.0 RPG SEKAI NO OWARI 2013.5.1
2位 5 73.0 明日も MUSH&Co. 2013.12.4
3位 6 70.3 恋音と雨空 AAA 2013.9.4
4位 9 54.4 スノーマジックファンタジー SEKAI NO OWARI 2014.1.22
5位 13 36.7 ちっぽけな愛のうた 小枝理子&小笠原秋 2013.12.18
6位 19 29.3 眠り姫 SEKAI NO OWARI 2012.5.30
7位 25 26.1 スターライトパレード SEKAI NO OWARI 2011.11.23
8位 27 25.4 366日 HY 2008.4.16
9位 29 24.6 不死鳥 SEKAI NO OWARI 2011.8.17
10位 31 23.3 サザンオールスターズ 2013.8.7
11位 32 22.3 銀河街の悪夢 SEKAI NO OWARI 2014.1.22
12位 33 22.2 虹色の戦争 SEKAI NO OWARI 2010.4.7
13位 38 20.8 Love AAA 2014.2.26
14位 43 19.7 Death Disco SEKAI NO OWARI 2013.10.30
15位 45 19.3 笑顔 いきものがかり 2013.7.10
16位 54 18.1 スターラブレイション ケラケラ 2013.5.15
17位 57 17.6 Love the warz SEKAI NO OWARI 2012.7.18
18位 59 17.5 花鳥風月 SEKAI NO OWARI 2011.8.17
19位 61 17.4 幻の命 SEKAI NO OWARI 2010.4.7
20位 63 17.3 アースチャイルド SEKAI NO OWARI 2013.5.1
次点 72 16.4 ありがとう いきものがかり 2010.5.5

 さて、ランキングを見てみると、1位はセカオワの昨年のシングル「RPG」。メンバーのSaoriがピアノ担当で、メディアでもFukaseとの兄妹ゲンカのような本音の言い合いが面白く、また作品に美的センスが加わっているのも彼女の影響が大きいはず。彼らの人気は前作「RPG」のロングヒットに留まらず、2作前の「眠り姫」が6位、3作前の「スターライトパレード」が7位、その他既発売アルバムやシングルのカップリング曲、さらにインディーズ期の楽曲までなんとTOP20に12作もランクイン。実はセカオワはそれだけ後追いファンが続々出ているのであり、これはCDや配信チャートよりも明確に出ている歌詞検索ならではのビビッドな傾向だ。
バンドに紅一点で女性が加わった人気グループといえば、8位のHYや、00年代にヒットの多いAqua Timez、さらにそれ以前となると78年デビューのサザンオールスターズ(10位)となるだろうか。特にHYもサザンも男女どちらのメインボーカル曲にも代表曲があることも、バンド人気の幅広さに大いに影響していることだろう。また、グループ内の下ネタにも動じない(微笑)ほどのマイペースなキャラが、その紅一点メンバーにあったことも、バンドの延命化に繋がっているのかもしれない。
15位のいきものがかりと、16位のケラケラは89年デビュー当時のDREAMS COME TUREよろしく“一姫二太郎”型(本来は、第一子が女子、第二子が男子だと育てやすいという意味ですが)で、こちらも女性ボーカルが“メンバーとの恋愛は有り得ない!(笑)”と一蹴することで、男女幅広くファンを獲得する要因にもなっているのだろう。これとは対照的に、5年ほど前人気曲が大量にあった男女コラボ曲や男女デュエット曲が今回のTOP20に皆無なのも、恋愛を強く意識しすぎるからかなと、ふと思った。

 以上のように、男女混成グループの人気は、現在の男女間の関係に加え、70年代や80年代デビューの人気グループの現役としての活躍も関係していそうだ。本チャート以外にも、アニメ主題歌「オトノナルホウヘ」でメジャーデビューしたGoose house、男女ツインボーカルで注目されるHello Sleepwalkersなども人気上昇中。今年後半には、男女混成グループがますます増えているのではと、ここで予想しておきたい(当たった時は褒めてください(笑))。




RPG/SEKAI NO OWARI

明日も/ MUSH&Co.

恋音と雨空 /AAA

 企画盤を除き、39作目となるシングル。「日本赤十字社平成26年はたちの献血キャンペーンソング」らしく、普遍的な“Love”をつづった穏やかなバラード。全員がリレーしながら優しく歌う様子は、まさに歌詞中の“手を取り合って繋がりあって小さな世界”を作り上げていくようで、さりげなく高いスキルを感じさせる。テレビではダンスを封印し7人が並んで歌うパフォーマンスも感動的。シングル盤では、カップリングに半年近くダウンロードでTOP20入りしている前作「恋音と雨空」のオーケストラバージョンも収録。また、3月26日には40thシングル「SHOWTIME」も予定されており、こちらはアッパーチューンとのこと。デビューから数年目までは、エイベックスの期待を背負いすぎた為か、様々な施策やタイアップを盛り込んで実力以上にオリコン最高位だけが一人歩き(そして2週目以降早めにチャートダウン)していたが、最近は、CDもダウンロードも「恋音と雨空」に至ってはカラオケも自然に上位入りするアーティストに成長し、これも現在の高いパフォーマンス力によるものだろう。エイベックスがマネジメントも担当する全アーティストの中で、実は1,2を争うほど高セールスという事実も押さえておきたい。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、「春風」が月間総合1位にもなったRihwa(リファ)に注目。彼女は、1989年札幌市生まれで、09年より地元でライブ活動を開始、その後インディーズでのCD発売を経て、12年7月、シングル「CHANGE」にてメジャー・デビュー。2ndシングル『約束』は人気アニメ『TIGER&BUNNY』の劇場版挿入歌に起用され、アニメファンの支持を受けてオリコン13位まで急上昇した。その後、4thシングル「Last Love」が、篠原涼子主演のドラマ『ラスト・シンデレラ』の挿入歌に抜擢され(これは同じ所属事務所の三浦春馬が出演していたことも大きいだろう)、1曲入りCDがオリコン14位まで上昇、本サイトの歌詞検索でも月間2位、ダウンロードではレコチョク、iTunesともに週間1位を獲得、この曲で見せた流麗なピアノに乗せて伸びやかに歌うスタイルが大いに支持された。
今回の「春風」は、9ヶ月ぶりとなる5thシングルで、こちらも三浦春馬が出演するドラマ『僕のいた時間』の主題歌で、ピアノの美メロと一途な想いを寄せた歌声が印象的なラブ・バラード。歌詞サイトでも早期から話題を呼び、自身初のオリコンTOP10入りにも結びついたので、今後発売されるであろうアルバムでもTOP10入りも確実だろう。
但し、これまでのところ、「約束」「Last Love」、「約束」はいずれもスローなバラードなので、彼女のもう一方の特長であるギターをかき鳴らしてパワフルに歌う楽曲も今後ヒットしていけば、さらに支持が広がるはず。そういった意味でも、まだまだ魅力が秘められたアーティストだ。

順位 アクセ
ス比率
タイトル 初収録作品
発売日
1 87.9% 春風 5th Sg 2014.2.26
2 8.4% Last Love 4th Sg 2013.6.5
3 0.9% 約束 2nd Sg 2012.10.3
4 0.6% 好きなのに 2nd Sg c/w 2012.10.3
5 0.4% モンスターのかくれんぼ 3rd Sg 2013.2.20



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 2月26日にコンピレーションCD『旅立ちSONGS〜大切な人に贈る歌〜』が発売になりました。学生向けの卒業ソング集でもエールソング集でもなく、30代〜50代に向けた送別会や壮行会で使える名曲集となっています。といっても、アンケート結果に沿って選んでいるので「贈る言葉」「春なのに」「想い出がいっぱい」「卒業写真」(今回は山本潤子さんバージョン)など卒業人気曲も多数収録されていますが(笑)。無難に見える選曲群の中から、平原綾香「星つむぎの歌」、本田美奈子.「つばさ」、加藤登紀子「Now is the time」あたりで個性を感じてくださると嬉しいなと思います。あと、布施明「歓送の歌」は中西保志バージョンとは歌詞が異なる初出バージョンで、現在のところダウンロードもなく、このCDでしか聴けません!自分用でも贈り物用でも是非どうぞ♪