前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、ブレイク前のアーティストを“ネクストブレイカー”と名づけ、どんな曲が上昇しているか分析してみた。なお、本来は、CDやダウンロードチャートにて1週でもTOP10入りすれば“ブレイクアーティスト”、そしてそれ以外を“ネクストブレイカー”と名づけたいところだが、昨今は、なんらかの強制的な施策や超コアファンの集中から1週だけTOP10入りして急落するケースも多々ある為、ここでは敢えて“のべ2週以上TOP10入りしたことのないアーティスト”を“ネクストブレイカー”と定義することにした。
 TVでは『笑っていいとも』や『はなまるマーケット』など長寿番組の終了、また空の世界では40年以上親しまれてきた“ジャンボジェット”ことボーイング747の引退など、ふだん音楽以外のニュースにはさほど関心のない私ですら、感傷的になってしまった今春(潜在的には消費税率アップが最大の打撃かもしれない(笑))。しかし、見方を変えれば、これは様々な新勢力が注目を浴びる絶好の機会とも言え、音楽面でもその流れはきっと来るはず!ということで、頭を切り替えてネクストブレイカーに着目してみた。
第57回:ネクストブレイカー人気曲TOP10  (2014年4月:2014年3月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数 楽曲名 アーティスト名 発売日
1位 6 100.0 絶対的な関係 赤い公園 2014.3.12
2位 26 46.1 午夜の待ち合わせ Hello Sleepwalkers 2014.1.29
3位 41 38.5 女の子は泣かない 片平里菜 2014.1.15
4位 44 37.5 どんなに どんなに シクラメン 2014.3.19
5位 62 33.5 3355411 小南泰葉 2014.3.5
6位 85 28.9 私のオキテ チキンバスケッツ 2014.2.19
7位 92 27.1 もしかしてだけど どぶろっく 2013.5.22
8位 98 26.2 ハートリアライズ Tia 2014.3.12
9位 126 23.1 涙が止まらないのは 藤田麻衣子 2014.3.26
10位 144 22.1 All My Life 清竜人 2013.10.23
次点 167 19.6 とまどい→レシピ みかくにんぐッ! 2014.2.19
※オリコン、レコチョク、iTunesで過去2週以上ランクインしていないアーティスト限定で
 上位曲を選定した。

 1位は、4人組ガールズ・バンド、赤い公園。本作で彼女達は初めてオリコンTOP20入りを果たし、ここ数ヶ月で、様々なテレビ情報番組やラジオ局、Webサイトなどでピックアップされることが多く、今後フェスの季節も到来するので、次のアルバムのTOP10入りは確実となりそうだ。2位は、女性ギタリストを含む5人組のハロスリことHello Sleepwalkersがランクイン。アミューズ所属らしくキャッチーなメロディーと、退廃的なハードなロックサウンドが共存するのがユニークで、今後更にステップアップしそう。ちなみに、1位が1分40秒、2位が2分50秒と2曲とも3分を切っていて、ニコニコ動画やアイドルブーム同様、人気曲の高速化や濃密化はバンドサウンドにも影響していると言えそう。
TOP10全体を見ると、3位、5位、8位、9位に女性ソロがランクインし、やはり今回のような切り口でも女性ソロの活性化が分かる。特に、8位のTiaは、supercellのryoがプロデュースする作品の第2弾シングル、9位の藤田麻衣子は、アニソン系シンガーソングライターとして約8年間のインディーズ活動を経て、本作でメジャーデビューするなど、アニソンの中でも(アニメ人気だけではなく)歌詞サイトでの楽曲人気を経てヒットするケースも現れている。

 その他にも、コミカル路線だけではなく、今回のストレートな夢追いソングが好調な4位のシクラメンも5月のアルバムでTOP10入りに期待大、6位のチキンバスケッツはSexy Zoneの佐藤勝利が主演するドラマ『49』内の女装ユニット曲、7位のどぶろっくは『エンタの神様』出身で唯一いまだ上昇中のユニット(実は意外と歌が上手い!)、10位はJ:COMのCM曲で囁くようなボーカルから歌詞にも注目が集まる音楽マエストロの清竜人と、どれも興味深い作品ばかり集まった。やはり、音楽発のネクストブレイカーを探すには、アイデア商法がエスカレートするCDランキングよりも、音楽配信やこの歌詞検索など楽曲由来のランキングを頼りにするのが適切ということがあらためてよく分かる。




絶対的な関係/赤い公園

午夜の待ち合わせ/ Hello Sleepwalkers

女の子は泣かない /片平里菜

 2010年東京で結成された4人組ガールズ・バンド。(12年2月にミニアルバム『透明なのか黒なのか』でメジャーデビューしているため、今、最注目クラスの若手ではあるものの惜しくも“歌ネット・ルーキー”の対象外となった。)ギター担当の津野米咲がオリジナル曲の作詞・作曲を手がけており、ポップロック風からハードロックまで作風は非常に幅広い。更に、SMAPに提供した「Joy!!」のように大衆が口ずさめるようなアイドル・ポップスも書けるので、今後も様々なタイアップや楽曲提供にもハマりそう。この4thシングルは、フジテレビ土曜ドラマ『Lost Days』主題歌として徐々に注目されつつ、音楽番組等でも2分を切る短さながら圧倒的なパフォーマンス力を見せつけたことで、更に人気に拍車をかけた。
  なお、2ndシングル以降のカップリング3曲目には、それぞれ小田和正「さよならは言わない」、平井堅「POP STAR」、槇原敬之「遠く遠く」と、男性楽曲を自己流にカバーしているのも面白い。とにかく、一筋縄で行かぬ大器を感じさせるブレイク必至のバンドだ。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、4位のクリス・ハートに注目。彼は、1984年、サンフランシスコ出身の黒人歌手で、ご存知の通り、テレビ番組『のどじまん ザ・ワールド』での優勝をキッカケとしてデビューしているが、プロフィールを読むと、日本へのホームステイ、日本語ポップスへの傾倒、日本人とのバンド結成、日本系化粧品ブランド会社への勤務を経て、09年に日本移住後、J-POPカバーの動画サイトへの投稿と、日本への愛情を示しながら、地道に努力してきたことが分かる。先にブレイクした、ジェロやシェネルもそうだが、日本人よりも日本語のツボを押さえた絶妙なアクセントでの歌唱ができるのも、そうした愛あればこそだろう。さらに、彼の場合は、人気曲にも挙がっている「home」や「ありがとう」のように、人肌を感じさせる楽曲になると、さらにハートウォーミングな仕上がりになるのが特長的で、13年のカバーアルバム『Heart Song』が大ロングセラーになったのも納得できる。
  更に、2ndシングル「I LOVE YOU」は、大好きだけど別れてしまうという難しい状況の歌詞ながら、彼の性善説的なボーカルが、そのやるせなさを絶妙に表現していることが、2ndアルバム『Song for You』のヒットにも繋がったのだろう。同アルバムには、「まもりたい」「幸せをみつけられるように」「たったひとつの贈り物」など、彼のキャラクターを存分に活かした楽曲が多数収録され、そういった丁寧な制作ぶりも連続ヒットに大きく起因していると思われる。ちなみに、「I LOVE YOU」は、デビュー前のコンベンションやプロモーション資料でも披露されていた楽曲で、筆者自身も「カバーの良さは分かったから、早くこの曲をみんなに聞かせれば良いのに!!」とずっと思っていたほど。今後も、彼のキャラクターを活かしたオリジナル曲で、優れたポップスの名曲を残していって欲しい。



順位 アクセ
ス比率
タイトル 種別 初収録作品
発売日
1 56.2% I LOVE YOU   2nd Sg 2014.2.26
2 5.4% まもりたい〜magic of a touch〜   2nd Sg c/w 2014.2.26
3 5.3% home C 1st Sg 2013.5.1
4 3.1% 最後のラブレター   2nd Sg c/w 2014.2.26
5 2.3% 僕が一番欲しかったもの C 1st AL『Heart Song』 2013.6.5
6 2.1% 幸せをみつけられるように   2nd AL『Song for You』 2014.3.19
7 1.9% ありがとう C 1st AL『Heart Song』 2013.6.5
8 1.9% 旅立つ日 C 1st Sg c/w 2013.5.1
9 1.8% たったひとつの贈り物   2nd AL『Song for You』 2014.3.19
10 1.7% 奇跡を望むなら... C 1st AL『Heart Song』 2013.6.5
種別:C=カバー、それ以外はオリジナル


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 バンドや女性ソロの他に、実は男性演歌歌手も今伸びています!この1年間で自己最高位、あるいは自己最高セールスとなった男性演歌歌手は、紅白出場となった福田こうへいをはじめ、山内恵介、三山ひろし、竹島宏、松原健之、川上大輔と続々。しかも、全員が29歳〜39歳と演歌界では若手。特に、女性並みのハイトーンで華奢な体で踊りまくる川上大輔のダークホースっぷりに注目しています(微笑)。