前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、女性限定ユニットの人気曲を分析してみた。

  レコード会社の一押しアーティストだけに留まらず、今や町おこしや企業のPRまで女性ユニットの楽曲を使った戦略が多数見られる。確かに、不気味な事件や世界の紛争のニュースなどが多い昨今、若い女性たちが頑張っている姿を見ると、男性のみならず女性たちも大いに励まされることだろう。では、その中で実際に歌詞を通して支持されている楽曲はどれだけあるだろうか。
第61回:女性限定ユニット人気曲TOP10 (2014年8月:2014年7月のデータより分析)
テーマ
順位
順位
アクセス指数
タイトル
アーティスト
発売日
1位 7 100.0 Indestructible 少女時代 2014.7.23
2位 12 76.7 E.G. Anthem -WE ARE VENUS- E-girls 2014.7.9
3位 29 54.5 君と夏フェス SHISHAMO 2014.7.2
4位 40 45.8 生まれてはじめて 神田沙也加・松たか子 2014.5.3
5位 86 29.0 雪だるまつくろう 神田沙也加・稲葉菜月・諸星すみれ 2014.5.3
6位 110 24.7 熱帯魚の涙 Flower 2014.6.11
7位 117 24.0 白雪姫 Flower 2013.12.25
8位 141 21.7 Follow Me E-girls 2012.10.3
9位 163 20.0 Best Friend Kiroro 2001.6.6
10位 175 18.8 太陽と向日葵 Flower 2013.8.7
11位 182 18.4 気づいたら片想い 乃木坂46 2014.4.2
※総合TOP200にランクインした女性ユニット楽曲をすべてピックアップした。

 今回総合TOP200に入った楽曲から抽出してみると、表に示した11曲のみとなった。つまり、この11曲以外の人気曲は、女性が参加していても、SEKAI NO OWARIやAAAのような男女コラボだったり、女性ソロ曲だったりで、あとはすべて男性曲なのだ。勿論、女性ユニットが楽曲を発表するということは、全体で見せるダンスのフォーメーションや、もっと下世話に言えばキャバクラ同様に「ど・の・子・が・好・み・か・な」(笑)みたいなビジュアル面の楽しみ方も大いにあろうが、歌詞が支持されている楽曲の少なさにあらためて驚かされる。

 とはいえテーマ別順位を詳細に見ると、いろんなタイプが挙がっていて面白い。1位は少女時代のベスト盤のリード曲。10年〜11年歌詞人気曲が多数見られたK-POPだが、今月は少女時代のみ。アーティスト別の人気でも、他に2NE1が挙がるのみとなった。最も目立つのが、2位、6位、7位、8位、10位とランキングの大半を占めるEXILE TRIBEの面々。彼女たちは、竹島問題以降K-POPの日本での活動が控え目になった時期以降、一気にブレイクしてきたが、ダンスのみならず歌詞検索やカラオケでもしっかり支持されているのも大きな強みだろう。そして、『アナと雪の女王』関連曲も4位と5位にランクイン。これは、6月以降、神田沙也加がTVにて歌を披露したことも大きい。

 CDランキングでは大いに目立っている女性アイドルグループも、ここでは11位の乃木坂46のみ。全楽曲の歌詞閲覧数を合計したアーティスト別で見ても、乃木坂46並みに今月多くなっているのはAKB48、Perfume、ももいろクローバーZくらいで、他のグループの名前は見られない。いかに、彼女達のCDヒットには歌詞以外の魅力が占めているかが示されている。なお、AKB48や乃木坂46については握手券商法ばかりが取り上げられがちなだが、歌詞だけでもそれなりに支持されているという見方もできる。

 こういう事を書いていると、「どんな売れ方であれ、たとえ曲が聞かれていなくてもヒットすればそれで良いじゃないか」とご意見をいただくこともあるが、ピンク・レディーやキャンディーズ、Wink、モーニング娘。、Perfumeなど、歴史を刻んできた女性アイドルグループは、いずれも歌詞にインパクトのある代表曲が思い浮かぶように、やはり楽曲を広めるということが大きな武器となっているはずだ。コアな存在となっている82年デビューのスターボー(デビュー当時性別不明(笑))ですら、松本隆作詞、細野晴臣作曲の「ハートブレイク太陽族」があったことが、後世にまで語り継がれる存在となった大きな要因と言えよう。その意味でも、アイドルグループに限らず、女性ユニットだからこそ、華やかさに楽曲のチカラを持つことで、鬼に金棒の存在のヒット曲が今後出ることを期待していたい。




Indestructible / 少女時代

E.G. Anthem -WE ARE VENUS-
E-girls


君と夏フェス / SHISHAMO

 2014年7月23日にリリースしたベスト盤『THE BEST』に初収録されたミディアム・テンポの楽曲。2010年の日本デビュー以来、「GENIE」「Gee」「MR.TAXI」「GALAXY SUPERNOVA」などアッパーチューンでグイグイくる感じのヒット曲が多かった彼女たちだが、本作は“壊れない絆”がテーマで、ベスト盤のラストをしっとり聴かせると共に、“ベストが出たけれど、この先も(買い控えることなく)応援ヨロシクネ」みたいなメッセージにも受け取れる(微笑)。「たとえあなたが/崖から落ちそうになっても/その手だけは/はなさないの」と、歌詞中に崖が出てくるというインパクトや、“はなさないで”ではなく“はなさないの”という能動的な表現に、テクニカルな魅力を感じる。ちなみに、「GALAXY SUPERNOVA」にも参加したKAMIKAORIが歌詞を手がけていて、キャッチーな英語とメッセージ性のある日本語の使い分ける部分もユニーク。今後、シングルでもミディアム路線の代表作が出来るのか注目したい。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


  今月は、ルーキー4位にランクインした女子3ピースバンドのSHISHAMOに注目。彼女たちは、2010年夏、同じ高校に通う3人で結成し、高校生アマチュアバンド選手権『TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2012』にて優秀賞とボーカル賞を受賞をキッカケとして、タワーレコード限定のCDデビューを経て、翌13年1月にプレデビューアルバム『卒業制作』を発表。当時は、オリコンTOP100圏外だったが、「宿題が終わらない」「第3ボタン」など10代ならではの視点や、ボーカルの宮崎朝子(現在まで発表した22曲中19曲の作詞、全曲の作曲も担当)の甘酸っぱさと透明感を兼ね備えたような歌声が話題となり、
11月に発表されたデビューアルバム『SHISAMO』はオリコン34位まで上昇、累計は5千枚を突破した。これは、2位にランクインしている「僕に彼女ができたんだ」がリード曲となっているが、こうしたタイトルのつけ方やイントロをキャッチーに仕上げる点なども実に上手い。
  今回の大きな上昇は、1stシングル「君と夏フェス」によるもので、夏らしいポップロックに、彼女たちらしい若々しい清涼感も加わったことで一気に広がった。オリコンでは最高位21位ながら、サウンドスキャンデータにて1品番限定で見ると12位と既にTOP10目前まで伸びている。アニメファンなども取り込みうるチャットモンチーとも、アイドルファンにも人気のSCANDALとも、そして女子人気が圧倒的なSilent Sirenとも異なるナチュラルな魅力があるので、女性版・スピッツのような立ち位置で今後更にブレイクする可能性大。スピッツのように、マイペースでじっくりと活動していくことを期待している。
順位 アクセス比率 タイトル 初収録作品
発売日
1 40.3% 君と夏フェス 1st Sg 2014.7.2
2 8.1% 僕に彼女ができたんだ 1st AL『SHISHAMO』 2013.11.13
3 6.3% 恋する 1st AL『SHISHAMO』 2013.11.13
4 4.9% 彼女の日曜日 1st Sg c/w 2014.7.2
5 4.8% 脇役 1st Sg c/w 2014.7.2
6 4.0% バンドマン 1st AL『SHISHAMO』 2013.11.13
7 3.8% 行きたくない 1st AL『SHISHAMO』 2013.11.13
8 3.1% 君との事 1st AL『SHISHAMO』 2013.11.13
9 2.3% こんな僕そんな君 1st AL『SHISHAMO』 2013.11.13
10 2.3% 君に告白した理由 プレデビューAL『卒業制作』 2013.1.23
 


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 8月20日に、記憶の名歌手・畑中葉子のソロ活動の集大成となる35周年『“後から前から”BOX』の企画・監修・執筆を担当。オリコン最高69位の伝説の迷曲「後から前から」や、その次のシングル「もっと動いて」の衝撃的な歌詞や、黒柳徹子を筆頭とする“元ポルノ女優”という執拗なレッテルのお蔭で、なかなか実力派だと認められませんが、このBOXカバー曲が19曲も収録されていたり、歌謡曲〜ロック〜ラップ〜コントなどなど様々なジャンルの楽曲が収録されていてかなり野心的です。お求めやすいようにロック価格6900円(税抜き)に設定したり、ネタとしても遊べる“後から前から開けることのできるBOX仕様”(通常のアイドルBOXは前からしか取り出せません)にしたりと工夫していますので、よかったら手にとってみてください♪