前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、ギター弾き語りパートのいるソロ、あるいはデュオの人気曲を調べてみた。

  最近、音楽系雑誌やWebサイトのみならず、テレビの情報番組でも取り上げられるようになった「ギター女子」の特集。その流れを作るキッカケとなったのが、2010年にデビューしたmiwaが安定したヒットを飛ばしている事だろうし、アイドル旋風の巻き起こる中、今年前半にRihwa「春風」が大ヒットしたことも追い風になっただろう。ゆずが「夏色」でブレイクして15年以上が経過しているが、その後、ソロ、デュオ問わずこうした弾き語りのスタイルはどれほどいるだろうか。また、男性、女性どちらが多いのだろうか。
第62回:ギター・ボーイズ&ガールズ人気曲TOP15 (2014年9月:2014年8月のデータより分析)
テーマ
順位
順位
アクセス指数
タイトル
アーティスト
発売日
1位 12 100.0 ひまわりの約束 秦基博 2014.8.6
2位 19 81.8 君に出会えたから miwa 2014.7.2
3位 22 78.7 彼に守ってほしい10のこと 植田真梨恵 2014.8.6
4位 30 66.3 春風 Rihwa 2014.2.26
5位 41 57.0 頑張ったっていいんじゃない 大原櫻子(from MUSH&Co.) 2014.6.25
6位 44 55.5 貴方の恋人になりたいのです 阿部真央 2009.8.5
7位 45 54.1 若者たち 森山直太朗 2014.8.13
8位 52 49.3 ミラクル miwa 2013.4.24
9位 54 48.9 日々 吉田山田 2013.12.18
10位 79 38.4 Believe in yourself 阿部真央 2014.5.21
11位 109 32.3 家族になろうよ 福山雅治 2011.8.31
12位 117 31.5 HIGH FIVE 片平里菜 2014.8.6
13位 118 31.3 心情呼吸 近藤晃央 2014.8.20
14位 143 28.5 赤い糸 コブクロ 2008.10.29
15位 165 26.1 SUMMER SONG YUI 2008.7.2
次点 191 24.4 もしかしてだけど どぶろっく 2013.5.22
※ギターソロ、あるいはギター+ボーカルのデュオで主にパフォーマンスしているアーティストを
 ピックアップした。

 全体を見ると、ギター弾き語り系は、総合のTOP200内にわずか16曲、総合TOP10では皆無と世間のイメージ以上にまだまだ少ない事が分かる。ちなみに、総合TOP10には総合1位の西野カナやテイラー・スウィフトの日本語カバーを歌ったMACOといった話題の女性ボーカル、ONE OK ROCKやback number、SEKAI NO OWARIといった歌詞人気常連のバンド、そして三代目J Soul Brothersや『アナ雪』使用曲の「生まれてはじめて」と、大衆的な人気曲が大半を占めていて、確かにここと比べれば弾き語り系はまだまだ地味に見えるのかも(汗)。
 その中でテーマ1位は、秦基博の映画『ドラえもん』3D版の主題歌となった。近年の彼の楽曲に多く見られるようになった心温まるバラードで、これは絆をテーマとしたタイアップとの相性の良さが勝因とも言えそうだ。アルバムではヒット常連だが、これを機に、シングルヒットも量産するアーティストにステップアップすることを期待している。
  TOP15中、最も大勢を占めるのが15曲中9曲を占める女性弾き語り系で、確かに近年の特集の増加自体は非常にトレンディだと言える。
3位の上田真梨恵、5位の大原櫻子、12位の片平里菜など1stアルバム前あるいは、リリース直後といった若手が目立つのも嬉しい。特に、片平里菜の楽曲は、1stアルバム『amazing sky』のリード曲で、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの山田貴洋がプロデュースに参加したギターロックチューン。この他にも、各曲のメッセージに適したアレンジが施されており、今後、アルバム・アーティストとして大いに成長するのではとワクワクさせられる。
 男性の方を見ると、ソロが3組、デュオが2組+次点のどぶろっくと、確かに特集をするには若手が揃ってない状態で、バンド人気に押され気味なのだろうと推測できる。ちなみに、どぶろっくは、歌詞も非常にユニーク(というか、めくるめくエロスの世界で、よくネタが尽きないなといつも感心(笑))で人気だが、ボーカリストとしても非常に良い声質や二人のハーモニーがあるので、今後、真面目なカバーアルバムでも作ったら、意外と9位の吉田山田くらい、歌い手としても注目されるかもしれない。
  以上のように、ソロでも人気が出やすい歌詞サイトで見てもさほど盛り上がっていない弾き語り系だが、言い換えればより強いメッセージ性を持つアーティストの“ヒットの打席”は残されているということかもしれない。注目の歌詞からSNSでどんどん広がっていく昨今、歌詞人気常連バンドが多数出てきたように、弾き語り系でもそんな人気者が出れば、言葉が前面に伝わりやすいスタイルゆえに、音楽業界にも多大な影響を与えるのではと期待している。




ひまわりの約束 / 秦基博

君に出会えたから / miwa

彼に守ってほしい10のこと
植田真梨恵

 1990年生まれで、ビーイング所属のもと、7年間のインディーズ活動を経て、2014年8月に本作でデビューした女性シンガーソングライターのギターロックチューン。本作の歌詞ヒットは、歌ネットのトップページでのインタビューや、FM22局でのパワープレイの効果も大きいだろうが、何より「〜ください」と、彼に対するお願い事を並べていくという歌詞やタイトルの面白さもリスナーに響いたのだろう。AメロBメロでは女性からの語り口調なのに、サビで男性からのメッセージに転換する点も昭和の名曲、太田裕美「木綿のハンカチーフ」風で、多分に技巧的だし、歌詞中には9つの願い事しか出てこないのに、楽曲ラストで最後のお願いが出てくるという構成もイカしている。デビュー作はFMオンエア回数では3位まで上昇したが、CD、ダウンロードともに週間TOP50入りしていない。但し、他の若手と被らないようなちょっとハスキーでキュートなボーカルと、こうしたユニークな視点から、今後更に伸びていくことが大いに期待できる。シングルのカップリング曲「ダラダラ」や「アリス」もまずは目で歌詞を追ってみたくなるほどだ。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
  今月は、ルーキー7位にランクインしたジャニーズの新人グループ、ジャニーズWESTに注目。彼らは、メンバー全員が大阪府か兵庫県出身という7人組。関西ジャニーズJr.の中から選抜されて、13年〜14年にかけてのジャニーズカウントダウンライブにてCDデビューを発表、2月には7人体制での活動がスタートした。
 4月にリリースしたシングル「ええじゃないか」は、限定盤など18種類でのCD販売で累計31万枚と、既にジャニーズ3〜4番手の高水準となっているのに対し、8月に発売された1stアルバム『go WEST よーいドン!』は、発売4週間で9.5万枚とシングルに比べまだまだ少ない。
おそらくデビューに対するご祝儀的に一部のファンが大量にシングルを購入しただけで、ファン自体はさほど増えていないのだろう。現に、そのデビュー曲も、彼らの人気歌詞TOP10では11位(4.2%)と、現時点の代表曲なのに最新アルバム収録曲に負けてしまうほどまだまだ楽曲が広がっていないのだ。
  しかし、実際に彼らのアルバムを聴いてみると、むしろジャニーズだからという理由で食わず嫌いの人が多いのでは?と思うほどユニークだ。まず、歌うキーが全体に高く、ノリの良さが伝わってくる。メンバーには関西ジャニーズらしく苦労人も多く、7人中3人が既に25歳以上と遅咲きだが、それを感じさせないほど若々しい。きっとこれも戦略の一つだろう。また、歌の中のギャグのセンスが散りばめられている点もユニーク。同じく関西出身の関ジャニ∞もそういったテイストは多いが、彼らは演歌・歌謡色を強めにデビューしていたこともあり、コミカルな部分が前面に出たのはデビューから2〜3年経過してからだが、ジャニーズWESTの場合はデビュー作からギャグ路線が板に付いていて感心する。一番人気曲の「Summer Dreamer」はメンバーの名前が散りばめられているし、「粉もん」はお好み焼きやタコ焼き好きが、東のもんじゃにもハマるというのがおかしいし、「Ole Ole Carnival!」は途中、ムード歌謡風のメロディーや即興風の台詞も挿入されるというアゲアゲなポップチューンで、きっとライブは楽しいのだろうなと想像できる。関東ではたまに音楽番組に出ているなという程度だが、関西では、TVのレギュラーが週7本、ラジオが週2本と既に大人気の存在。コミカルな楽曲やパフォーマンスの魅力が、口コミとなって全国の一般リスナーに広がれば、真のヒット・アーティストになるかもしれない。
順位 アクセス比率 タイトル
1 14.7% Summer Dreamer
2 11.3% 粉もん
3 11.2% Ole Ole Carnival!
4 9.4% Criminal
5 8.0% バンバンッ!!
6 7.2% Break Out!
7 7.1% P&P
8 6.9% Wake up!
9 5.1% ちゃうねんっ!!
10 4.8% LET'S GO WEST 〜K A N S A I !!〜
※すべて1stアルバム『go WEST よーいドン!』収録。


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 8月27日に、企画したコンピレーションCD『大切な人と聴きたい15のラブソング 2』が発売になります。こちら、宇多田ヒカル「Flavor Of Life -Ballad Version-」、GReeeeN「愛唄」、いきものがかり「歩いていこう」、ゴスペラーズ「ひとり」、mihiharuGT「幸せになろう」、ET-KING「愛しい人へ」などラブソング多数で、半年以上じわじわ売れ続けた第1弾同様にロングヒットすればいいな〜と期待しております♪ただ、「歩いていこう」って、歌詞を最後の方までよく読めば離れ離れに歩いていくのを誓った歌なんですよね〜。結婚式の入場シーンなどで使われる人気曲というアンケート結果から収録したので、必ずしも間違いではないのですが、歌の捉え方が人によって真逆になるんだな〜とこの仕事を通して学んだのでした。