第75回:映画タイアップ曲TOP15
今や映画タイアップはドラマ以上の影響力!
前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今月は、映画タイアップ曲を分析してみた。最近、情報番組を見ていると映画製作発表の会見を報じていることが多かったり、また週末の映画館で早朝から長蛇の列が見られたり、また映画をメインとする若手俳優が次々と育っていたり、エンタメ事業の不況が言われ続ける中でも、映画については良いニュースが多い気がする。その恩恵は音楽界にも行き渡っているのだろうか、と疑問に思い、今回調べてみることにした。
第75回映画タイアップ曲TOP15(2015年10月:2015年9月データより分析)
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※楽曲がヒットしてからタイアップが付いたものも含める。
上位16曲中4曲がアニメ映画、さらに7曲が漫画原作の実写化と
あらためてアニメ&漫画の影響力の強さに驚き!
まず、表全体を見ると、総合順位TOP30に入っている映画タイアップ曲は7曲だが、同様にドラマタイアップでは4曲(家入レオ「君がくれた夏」、wacci「大丈夫」、Little Glee Monster「好きだ。」、MONGOL800「小さな恋のうた」)だった。TVドラマのタイアップは、90年代の全盛期と比べるとCDセールスへの影響力は落ちているものの、依然として音楽配信や動画サイト、そしてこの歌詞サイトなど総じて"ヒット曲創出"に貢献しているのだが、映画タイアップはそれ以上の影響力を持つようだ。あらためてアニメ&漫画の影響力の強さに驚き!
次に、どんな曲が挙がっているか見てみよう。1位は、西野カナの最新シングル「トリセツ」。桐谷美玲の変顔が大きな話題の映画『ヒロイン失格』と、ちょっとコミカル、だけどラブリーという西野の楽曲の内容と合致して、今月圧倒的にアクセス数となっている。2位以下のアクセス指数が非常に低くなっているのは、それらが弱いのではなく、この「トリセツ」の支持があまりに強烈なのだ。
2位は、TVシリーズの人気から映画化した『アンフェア』最終章の主題歌の三代目J Soul Brothersのバラードで、これは今年ノリに乗っている三代目効果が大きいだろう。3位は、映画『明烏 あけがらす』主題歌となった[Alexandros]のメジャーデビュー曲。こちらは、映画をキッカケとしつつも、その後、[Alexandros]が夏フェスでの熱演や、『HEY!HEY!NEO』などのTV出演で大きな反響があったことが、ロングヒットに繋がっているようだ。その下を見ても、SEKAI NO OWARIが小さな子ども達にも人気が出るキッカケとなった「RPG」が4位、大原櫻子が類まれなボーカリストとして大きく注目されることになった小枝理子&小笠原秋名義の「ちっぽけな愛のうた」が6位(MUSH&Co.名義も13位)と、スターのブレイク・ポイントに映画タイアップがあることもよく分かる。また、7位のスキマスイッチ「奏」や、ランク外だが尾崎豊「OH MY LITTLE GIRL」(映画『ホットロード』主題歌)など、楽曲のロングヒット後に映画タイアップによって更に注目されるケースも有り、こういう楽曲の再ヒットもTVドラマが最も賑わっていた90年代の活気を彷彿とさせる。
ただし、全体を見渡してみると、4位、10位、15位(厳密には3DのCG)、そして次点の4作がアニメ映画、そして1位の『ヒロイン失格』をはじめ、7作が漫画を原作とした実写化映画であり、なんと7割近いヒット曲が、アニメと漫画関連の映画から生まれている。(他は、人気小説の実写化が3作、TVシリーズからの延長が1作、そして映画オリジナルの原作が1作。)TVのアニメタイアップはコアなファンに支持されるものが多いのに対し、映画の場合は幅広い層に支持される"ヒット曲"に格上げするという現象も読み取れる。特に、『ヒロイン失格』や『カノジョは嘘を愛しすぎてる』、『君に届け』など恋愛系の多さが目立っているが、これも、少女漫画がヒット→映画化が決定→主人公は今旬の俳優、主題歌は胸キュンソング→若い女性に映画も主題歌も大ヒットといったヒットの図式がまさにトレンディなのだろう。
以上、映画から様々なタイプのヒットが出ていること、またその多くがオリジナル原作ではなく、アニメ・漫画と結びついていることも分かった。今、音楽のみならず映像の定額サービスも多数出ているが、それでも劇場に足を運ぶ人が激減したというニュースはない。それは映像の分野には"タダにできない魅力がある"という確信が人々の中にあるからではないだろうか。音楽でも、そんな"タダで済まされない"楽曲(購入特典ではなく、楽曲)が多数生まれることを今後も期待したい。
第5位:SEKAI NO OWARI「ANTI-HERO」
そんな彼らの新曲は、その予想を良い意味で大きく裏切ったダーティーでダークな作風。しかも、全篇英語歌詞で、80年代のUKポップスを彷彿とさせる。それでも、本作のために数年前から英語を勉強してきたとのことで、発音もスムーズだし、歌詞の日本語訳を見ると「オレは悪でいたいのさ」「お前を守るとき手段なんか選びたくないから」というサビの部分から、どう思われようと大切な人を守ろうという信念が感じられ、まさに『進撃の巨人』らしい内容で、本作がワールドワイドに公開された時に大きな効力は発揮しそうだ。時間をかけて、世界的なヒットになるのか楽しみ。
ちなみにCDの方では、カップリングに「Home」を収録。こちらは、従来通りの作風で、まるで「炎と森のカーニバル」のホームサイズといった感じだろうか。通常盤のジャケットでの4人のドクロなメイクの完成度もビビるし、やっぱり彼らはエンタテナーだと感心します♪
ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
ルーキー部門第6位:Little Glee Monster
今回、歌詞検索数が大幅に上昇したのはTBS系ドラマ『表参道高校合唱部!』の主題歌となっている4thシングル「好きだ。」が発売されたことによるものだが、新しい作品ほど検索数が多いことからも、彼女たちの注目度がずっと伸びている証だろう。所属する事務所、ワタナベエンターテインメントの大元となる渡辺プロダクションは、1960年代〜70年代、ザ・ピーナッツやザ・タイガース/沢田研二、布施明、小柳ルミ子など多数のヒット歌手やヒット曲を生み出してきた所だけに、今後、彼女たちが楽曲ヒットを多数残していくことも大いに期待したい。
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※3rdシングルは両A面扱い
臼井孝の「キラ☆歌発掘隊」
プロフィール:つのはず誠 改め 臼井孝
うすい・たかし。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析が評判となり、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、日経トレンディネット、月刊タレントパワーランキングなどでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic。今月より、15年間使ってきたペンネームの「つのはず誠」から音楽市場分析をしている本名に戻しました。(詳しくはコチラ。)名前は変わっても、切れ味鋭く、愛情たっぷりに執筆していきたいので、どうぞよろしくお願いいたします! 最近は佐藤竹善のベスト盤『3 STEPS&MORE』をよく聴いています。。初回盤は、彼のオリジナルソング集と、コラボソング集、そしてミュージックビデオ集という3本立てなのですが、何といっても聴きどころはクリス・ハートとのデュエット曲「Harmonic」。クリスが出てきたときに、「佐藤竹善のように鼻にかかった美声がいいな〜」と思ったけれど、まさかこの二人がデュエットするとは(笑)。あまりのシンクロ率の高さに、途中でどちらのパートか分からなくなるほど面白いです。良かったら秋の夜長にじっくりとどうぞ♪