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Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。
幼い頃、空想が好きで。もし私が宇宙人だったら…、これから何処か遠くに行けたら…、といつも“ここ”に居ない子だったと思います。そんな風に精神世界を漂う中で浮かんだ事をポエムにしてました。散々な内容でしたけど。笑
自分の気持ちを言葉にすることに抵抗がないのは、この体験があったからだと思います。
私が通っていた学校は中学、高校、大学まであるエスカレーター式の女子校だったんです。みんな多感な時期だし、一度人間関係で失敗したら取り返しがつかない気がして怖くて。そこから友達の視線を意識した自分で生活することが苦しくなり、ノートにだけ本当の気持ちを綴るようになりました。デビュー曲の「サブリナ」も授業中、教科書の下にノートを敷いて隠れるようにして書いてました。 -
Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?
自分の人生に関わったもの全てです。
例えば、映画や本や舞台をフラットに楽しんだ後、自分が主人公だったら、あの人だったらどうしたかを考えるんですよね。だから実際に自分が体験したかしていないかは私の中ではあまり関係なくて。それよりもどれくらい自分がそのインスピレーションに打たれたか、の方が大事になってきます。 なので作詞をしている時期に自分の中に入れるものは結構選びます。
「未完成」の作詞の時は、共作してくださった岡嶋かな多さんと一緒に映画『ジョーカー』を観に行きました。主人公・アーサーの感情が、熟れすぎたトマトにハエがたかってるみたいに放置されていて。常人じゃ理解できないスケールの“何か”は「未完成」の空気感の一部になっているのかもしれません。 -
Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?
自分の中の真実に近づく方法は、普段から模索しているのでその時々で変わります。今は書きたいと思ったテーマのプロットをまず書いています。イメージとしては短編小説が近いと思います。それをスタッフに展開して、どう感じたか素直な意見を聞かせていただきながら、個人的な主張と共感のバランスをチューニングしています。「この歌詞は、共感はされていないけど面白がってもらえているから使おう」「あ、実は皆さんも違和感を抱いていたんだ」「この部分は本当にただ引かれているだけかも? 自分で自分を発見した喜びとして心に留めておこう。笑」とか。どちらにせよメロディの制約もあるのでプロットの言葉全てを歌詞にはできないですし、全体の流れや語呂を大事にしているので、誰かのフィルターを通すことでより良い精査に繋がると思っています。
精査して選び抜いた言葉で作った歌詞は、シンプルな言葉でもプロット分の想いが詰まっているので、歌った時により濃くはっきりとリスナーの方に感情や情景を残すことができると信じていて。何より、歌っている私が1番フラッシュバックを味わっているので、私にはこの制作過程があっているみたいです。 -
Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。
周りのスタッフの皆さんです…。行き詰まると、申し訳ない…と思いながらアポを取って会社に行ったり電話したりして、自分が曲にしたいと思っていることを、既に共有していることでも繰り返し何度も話します。
行き詰まったままパソコンに向かっていると、考えを打ち込む前にもう1人の自分が、「それ、つまんない。使えないよ」って遮ってくるから、思考が渋滞を起こして迷い出す。でも自分の中にある書きたいものを、確認するように言葉にして他者に話すうちに考えがクリアになり、言葉やアイディアがまた出てくるんです。締め切り近くになっても私からなんのリアクションもないと、それを知っているスタッフの方から、「行き詰まってるんですか? 話し聞きましょうか?」とメッセージが届いたりします…本当に有難いです。 -
Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?
「Silly」は1コーラス目の描写がリアルすぎるから書き直した方が良いんじゃないか、という意見があって。だけど絶対この言葉だ、という直感があったので、この歌詞でいきたいですとかけあったのを覚えています。
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Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?
誰もが知っている言葉やシチュエーションを、新しい物に変えてしまう歌詞。
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Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。
玉置浩二さん「マスカット」
人が愛に求めているものは母性であり父性ということが、滑らかに描かれているから。 -
Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
または、使わないように意識している言葉はありますか?今までリリースしてきた曲を振り返ると「愛」というワードは私の曲に何度も登場しますね。「どうして人は生きるのか」「なぜ生まれたのか」など、哲学的だねと他の方に言われる事を「今日の昼何食べよう?」と同じレベルで考えているからだと思います。
ただ1曲の中で、同じ言葉を特別な意味がない限り使いたくない、というこだわりはあります。メロディにも時間にも制約があるので、出来るだけ細かい景色や表情、匂いをリスナーの方に運びたいからです。 -
Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?
自分の生活を持っている、こと…なのかな??
公園を散歩したり、疲れたなーと思いながら洗濯物を干したり、電車の窓から暮れていく街を眺めたり、スーパーで夕飯に何を作るか考えたり。自分自身が平凡でつまらなくても、かけがえのない今日、そして毎日を生きているから、「何か泣けてくる」を人に届けることができるんじゃないかなと思います。普通の生活を普通に続けていくことが、実は1番難しいんじゃないかなぁ。 -
Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。
すごい歌詞を書いてやろう!という気持ちを手放すこと。
これ、自分への戒めでもあります。笑
デビュー10周年を迎えた2022年2月16日には、10周年を記念したベストアルバム『10th Anniversary Best』をリリース。 さらに、10周年記念のスペシャルライブ “家入レオ 10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター” を開催。8月17日には待望の新曲「レモンソーダ」、さらに9月28日には「Pain」をデジタルリリース。また、10月からは全9公演・自身8度目となる全国ツアー“家入レオ 8th Live Tour 2022 ~THE BEST~”の開催が決定している。