例えば、“何度でも頑張ろう!” という言葉も、10代の女性グループが歌う場合と、40代の男性シンガーが歌う場合と全く違うストーリーになります。
前者の場合は、オーディションやライブ活動の中で苦悩しながら夢に向かってキラキラしている絵が見えますし、後者の場合は、一度完全に打ちのめされた社会人の方などへの応援歌になります。 同じ言葉でも、歌う人によってストーリーが広がるのが作詞家としてとても楽しいです。
提供するアーティストの人生や、キャラクター、歩んできたストーリーなどを考えながら曲を作ることにこだわっています。
技術的なことでいうと、紙にいい言葉、ストーリー書き出しただけでは“詩”になってしまうので、“歌詞”である以上、メロディや楽器との絡み方も重要視しています。
言葉の語感とメロディの気持ちいいはまり方はもちろんですが、メロディを長めのスパン(8小節くらい)で考え、その流れの中でいい言葉をいいタイミングで来るように考えて作ります。
例えば曲の中盤あたりで、楽器がおとなしくなるパートにあわせてしっとりとした歌詞を入れたり、逆にあえて激情な雰囲気を入れたりするときもあります。伴奏との対比によってぐっと聞き手の感情に訴えかける技など、作曲家、編曲家的な視点での歌詞作りをこだわっています。
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Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。
学生時代からバンドでオリジナル曲を作っていたため、自然と歌詞も作るようになりました。そもそもギタリストですので自分が歌うわけではありませんが、歌い手のことを想像して作っていく作業がとても楽しいです。
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Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?
仲間と飲んだり、普段の会話からのインスピレーションが多いです。基本は自分の周りで起きた現実がスタートですね。
BiSHの「NON TiE-UP」という曲は、グループの人気が徐々に出てきて、タイアップが増えてきて嬉しい一方で、BiSHの持っている尖った部分やアイデンティティを忘れないようにという思いで歌詞を作りました。少々過激な歌詞なので、できれば読まないでください(笑)。 -
Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?
基本的にタイトルから考えます。タイトルが決まるとストーリーが広がっていきます。
逆にいうとストーリーが広がらないタイトルだと歌詞が進んでいきませんので 一言でいいタイトルが思いついた場合はスラスラとかけることが多いです。 -
Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。
若い頃は多摩川の河川敷や、マンションの屋上に寝転がって作っていました。 今はスタジオの机に向かって粛々と書いてます。
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Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?
自身のバンドBuzz72+の「屋上の空」という曲は、当時無名だった僕らを応援してくれてた一人の女の子をモチーフに作りました。
その子は難病と闘っていたようで、結局一度も僕らのライブを見に来ることができずに亡くなってしまったのですが、病室でいつも僕らの曲を聞いてくれてたようです。
ちっぽけな僕なんかの曲でも、誰かの勇気になれるんだなと思って作った楽曲です。 -
Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?
元気や勇気が出る歌詞が好きです。受け取った人がそう思えば全部“良い歌詞”
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Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。
はっぱ隊「YATTA!」
TVのコントで生まれた楽曲ですが、これ以上ない完璧な楽曲。
元気がない時にポジティブにしてくれる楽曲。何度聞いても涙が溢れます。日本を代表する名曲。 -
Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
または、使わないように意識している言葉はありますか?メロディの重要なところの母音を意識しています。ロングトーンなどに“あ”や“え”の段の発音を使うと効果的、逆に“う”とか“い”を使うと楽曲と絡みが悪いことが多いです。
ただし、共作詞の場合や“どうしてもいいたい言葉”がある場合は発音より意味を優先する時もあります。 -
Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?
世の中が便利でシンプルになり、なんでもすぐに手に入る一方で、行動が自宅で完結してしまっています。
人間関係もSNS中心になり、実際の言葉で会話をする機会が激減している時代だからこそ、新しいものを試してみる、行ったことない場所に行ってみる、めんどうくさいことに挑戦してみるなど、経験を広げていくことが必要かと思います。 -
Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。
外に出れば必ず会話が生まれ、ストーリーが生まれる。その体験を自分の言葉などでまとめ、表現することがエンターテイメントの基本だと思っています。物事に貪欲で、ピュアでいることが重要です。
音楽プロデューサー/音楽制作集団"SCRAMBLES"代表
福岡で結成したロックバンド"Buzz72+"のギタリストとして2005年に上京。
その後作曲家として"BiS""BiSH"の立ち上げから携わり、2019年に拠点を福岡に戻す。
帰福後は活動の幅を広げ、"香取慎吾""豆柴の大群"など数々のアーティストの楽曲プロデュースを手掛けるかたわら、インディレーベル"BAD KNee"を立ち上げ地元アーティストの発掘/育成にも力を入れている。
2022年公開の"仮面ライダーBLACK SUN"の音楽に抜擢されるなど、音楽界注目のアーティストである。
2023年2月15日発売
PCCA-06180 ¥3,300(税込)
アルバム収録曲 ※2022年10月28日にデジタルシングルとしてリリース
「Did you see the sunrise?」
(仮面ライダーBLACK SUN主題歌)
作曲、作詞