さよなら、血まみれのデイジー
ヒトリエ
さよなら、血まみれのデイジー
2025年1月22日に“ヒトリエ”がニューアルバム『Friend Chord』をリリースしました。今作には、先行シングル「ジャガーノート」、「オン・ザ・フロントライン」、そして、2024年11月27日にリリースし大きな話題を生んだ、wowakaボーカル、作詞・作曲の未発表曲「NOTOK」を今回、Album versionとしてシノダがボーカルを務めた、全10曲が収録。 さて、今日のうたではそんな“ヒトリエ”のシノダによる歌詞エッセイを3週連続でお届け! 今回は第2弾です。綴っていただいたのは、収録曲「 ブルースプリングパンク 」にまつわるお話。エイトビートの速いギターロックを作ることに高いハードルを感じていた自身が、「書けた」と思えたこの歌。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。 とにかくエイトビートの速いギターロックを作るのが苦手である。苦手、というよりもエイトビートの速いギターロックこそが僕にとっての全てで、例えばリンダリンダであるとか赤いタンバリンであるとかダニー・ゴーであるとかシャロンであるとか透明少女であるとか戦場の遠距離恋愛であるとか、そういった弩級の名曲達を聴いて憧れてバンドをやるようになったので、そこに肩を並べられるくらいの名曲を書かなきゃいけないし、聴き手にそれくらいのインパクトや勇気、感動を与えなきゃいけないと特に強く思ってしまう、自分にとってとてもハードルの高い創作になってしまうのである。 なのでかなり勇気を振り絞って、今回のアルバムの最後を飾る「ブルースプリングパンク」を書いた。いやぁ、書けた書けた。果たして上記のような諸々をこの曲でクリア出来たかどうかはわかりませんしそこは聴き手に委ねるしかないのですが、「書けた」と自分で思えることはかなり重要だとは思いませんか皆さん、この場合。ね。 ちなみにこの曲の原型はかなり前から、それこそアルバム『REAMP』を作ってる頃からデモが存在して、それを47都道府県弾き語りツアー「シノ鉄」の、恐らく高知公演でフル尺にして披露したわけですが、レコーディング直前で歌詞を殆ど全て書き直しました。何だかパンチに欠けたので。 そういう年月や工程を何度も経てそれでも残り続けた<さよなら、血まみれのデイジー>という歌詞、意味はさっぱりわかりませんがこれを超えるインパクトを持った言葉は終ぞ出て来ませんでしたし、このワンフレーズが曲中最も炸裂していて大好きです。果たして誰なんでしょうか血まみれのデイジー。きっとかなりピーキーな性格の女の子なんじゃないかと思います。 改めて歌詞を読み直した時にあまりの青さに何だか照れ臭くなってしまい、自嘲の意味も込めて「ブルースプリングパンク」という曲名になりました。僕が高校生だった頃に、メロコアとは違うブルーハーツリバイバルのようなパンクブームが起こり、それらは十把一絡げに青春パンクと呼ばれたりしてたんですが、僕はあんまりそこに傾倒はしませんでした、聴いてて何だか照れ臭かったので。この曲名はその照れ臭さからやって来たものだと思われます。そもそもこの曲パンクじゃないし、青春パンクってこんなたくさん転調しないし。 それはそれとして、これを聴いた人の心の青い部分に引っ掻き傷のひとつでもつけられたら御の字でございます。 <ヒトリエ・シノダ> ◆紹介曲「 ブルースプリングパンク 」 作詞:シノダ 作曲:シノダ ◆ニューアルバム『Friend Chord』 2025年1月22日発売 <収録曲> M1. 耽美歌 M2. ジャガーノート M3. Quadrilateral Vase M4. ネバーアンダースタンド M5. 月をみるたび想い人 M6. Shadowpray M7. NOTOK(Album version) M8. オン・ザ・フロントライン M9. おやすみなさい M10. ブルースプリングパンク