私だけ剥がれたままのマニキュア。
Lilubay
私だけ剥がれたままのマニキュア。
2023年3月1日に“Lilubay”が2nd EP『Home away from home』をリリースしました。本作品は旧バンド名addからLilubayに改名してバンドとして新たな一歩を踏み出し、その方向性を示した全5曲が収録。作詞はVoタグチハナ、作曲は西村コン、タグチハナが担当し、全曲セルフプロデュースでの制作となっております。 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Lilubay”のタグチハナによる歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 mani・cure 」にまつわるお話。容姿にこそ表れる心模様。あなたの爪は今、どんな状態ですか…? 今回も音声版がございます。ぜひ本人による朗読でもエッセイをお楽しみください。 ギターを弾くと、右手の人差し指と親指だけどんどん剥がれていくマニキュア(かといって定期的に通う自信がないのでできないジェルネイル)。 最近はもう、ちょっとくらい剥がれていても気にならなくなってきてしまった。 思わぬタイミングで他人様の目の前に手を伸ばさなければいけなくなった時初めて、あぁなんでこんな…!ちゃんとしておけばよかった…!と、深い後悔と苛立ち。 私の怠惰によって勝手に失望されている可哀想な爪。 恋をするとうってかわって、細かい全てが気になったりもする。髪の毛もメイクもネイルも、恋の重量に比例して気合が入る。いつどこでばったりと会ってもいいようにと一縷の望みのためにも全力をだす。そんな時期もある。 そういう細かいところに、内側の波って現れる。 失恋して、何かを変えたい、進みたいと思っていても、後ろ髪を引かれて動けない…そんな経験をしたことがある人も少なくないはず。 進んだら本当にこの恋が終わってしまうのだ、と怖くなるあの気持ち。 心のどこかで、まだ、もしかしたら、とうじうじやってる時間って本当にダサいなぁって、わかっちゃいるけれどやめられない。 携帯をひらけばすぐ見えちゃう時代になっても、他人の気持ちはわからない。 誰にも気付かれないように抗いたい。 変わっていく街と離れていく心、 私だけ剥がれたままのマニキュア。 もうちょっとだけ、このままで。 <Lilubay・タグチハナ> ◆紹介曲「 mani・cure 」 作詞:タグチハナ 作曲:西村コン・タグチハナ ◆2nd EP『Home away from home』 2023年3月1日発売 <収録曲> 1. mani・cure 2. Home away from home 3. わがままな私と、子どもみたいな君 4. Knock 5. rainy day