自分の人生の航海士は自分自身である

Tani Yuuki
自分の人生の航海士は自分自身である
2025年6月18日に“Tani Yuuki”が3rdアルバム『航海士』をリリースしました。今作には、「械物」「最後の魔法」「kotodama」「アンタレス」といったシングル曲に加え、「Dear drops」「最終想者(アンカー)」、「自分革命」や「everyday」といった学生時代にTani Yuukiが制作した楽曲たちを含む全12曲を収録。今までの音楽人生を振り返りながらも、新たな航海へと突き進むために制作された1枚となっております。 さて、今日のうたではそんな“Tani Yuuki”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、収録曲「 後悔史 」にまつわるお話です。自身の様々な後悔を振り返り、それと向き合い、気づいたことは…。あなたの人生にはどんな後悔がありますか? ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 あなたは後悔したことがあるだろうか? おっと、スタートからネガティブなことを聞いて申し訳ない。 私がしたいのはそんな暗い話ではない。 その後悔がなければ今の自分は、あなたはいないかもしれない。 私がしたいのはそういう話だ。 もちろん私も後悔をしたことがある。 学業、仕事、恋愛、家族、それに付随する人間関係。 あの時こうしていれば、もしくはしなければ。 後悔のない人なんておそらくいないだろう。 私は中学2年の時、初めてギターを握った。 病気であまり学校に行けておらず、発散や1つの逃げ道として、 感情の捌け口として第2の言語のような存在だった。 当時はとても辛かったし、1度しかない中学時代の思い出も少ない。 でも、これがなければ音楽を始めることは無かっただろう。 音楽の専門学生の時、色々なオーディションを受けてきた。 在学した2年間、芽吹くことはなかったが、卒業間近に申し込んだVRアーティストのオーディションに受かった。 慣れないモーションキャプチャー、楽曲やミュージックビデオを制作し、 残すはメジャーデビュー……、を目前にプロジェクトが白紙になり振り出しに戻った。 また一からオーディションを受ける気にもなれず、全て自分で出来てしまえばいいと、MacBookを買い、DTMや動画編集をはじめた。 順調に成功してしまっていたら今のスタイルになるどころか、顔も出さずに活動していたかもしれない。 と、まぁかなり端折ったがそんな出来事がなければ今のTani Yuukiはきっとなかっただろう。 振り返れば失敗や後悔から学べることは多かった。糧になるものが多かったのだ。 学生時代で思い出したが、仲良くつるんでいたグループがちょっとしたいざこざをきっかけに仲違い。 崩壊してしまったという経験はないだろうか? あれは幼さからくる人の悩みだと思っていた。 しかし面白いもので大人になった今、相変わらず悩みの大半は人だったりする。 吐いた言葉が想像とは違う伝わり方をしてしまったり。 正義と正義がぶつかり合い望んでいない結果を産んでしまったり。 私は今年で音楽を始めて10年、本格的に活動を始めて5年なのだが なんせ26年生きてきてこんなにも続いたものはなかった。 ということは1つのジャンルにおいてこんなにも長く人と接することがなかったのだ。 今まで触れてこなかった他人の深い部分に差し掛かっているのだと思う。 ただ本当に自分を含め人は幾つになっても変わらないんだなと。 おそらくこの悩みは一生続くのだろう。 まぁそこが面白いのだけれど。 この26年間、自分が繰り返した選択の結果が今である。 そこに悔いはないがはたして今、私は自分の人生の舵を握れているだろうか? そう疑問に思う時がある。 というのも、クリエイティブにおいて好きなことを好き勝手にできるのは最初のうち、1人の時だけだと私は思う。 チェーン展開しない料理屋のように、量産できないハンドメイド品のように、できることは限られるが満足いくまで独断で煮詰めることができるからだ。 こだわりともわがままとも呼べる“それ”を切り売りしながら可能性を手に入れる。 ゲームのマップが広がると行ける場所が増えるように、可能性が広がると選択肢が増えていく。 人が増え、考えが増え、動きが大きくなっていく。 1つではない意思の集合体になっていく。 すると 境界が曖昧になっていく。 踏み込んでいい場所、踏み込んではいけない場所。 1人の頭ではない以上、自分を含め100%全員を満足させることは難しいが なるべく汲み取って、読み取って、バランスを保って共に歩いていく。 誰しも 近くにいるとその有り難みに気づかなかったり。 初心を忘れそうになったり。 自分可愛いさに他人のせいにしたかったり。 光があれば影も存在するが、その反発が和らぐと急に歯車が回り始めたりする。 そして 1人では思いつかなかったものが生まれてくる。 1人ではできなかったことができるようになる。 これはとても面白い。 1人では動けない、1人ではもう回らないのだ。 詰まるところ、 「はたして今、私は自分の人生の舵を握れているだろうか?」 この疑問の答えはYesでありNoだ。 なんだそれはと思うかもしれないが 自分1人の舵では無くなっただけで、自分も舵の1つなのだ。 1つの集落が出来上がっていくような 人は1人では生きていけない、の生い立ちを見ることができた気がしている。 話がとっ散らかったが、それも含めて歴史なのである。 今これを打っている私も完全無欠ではない、聖人なんていない 全てできているわけではない。 ただそうありたいと願っている。 人は鏡だ、物事は時に裏返しだ。 良かれと思ってしたことがどこかで誰かを苦しめる、何かを拗らせる、亀裂を生む。 もしかすると人が分かり合えることはないのかもしれない。 でも分かち合えることはきっとある。 そう信じている。 私がこの曲に込めたのはネガティブではなくその先にあるポジティブ。 最後の答えはいつだって出せる、なら今じゃなくたっていい。 誰だって後悔などしたくない。 だが“それ”がなければ今が無い。 誰しも必ず何かしらを背負っている。 後悔の海に沈む日がある。 それでいい。 それでも航海は続いていく。 後悔の歴史を元に未来を切り開いていくのである。 大事なものは忘れること勿れ。 いつか あなたを救うその日まで。 答えを出すその日まで。 <Tani Yuuki> ◆紹介曲「 後悔史 」 作詞:Tani Yuuki 作曲:Tani Yuuki ◆3rdアルバム『航海士』 2025年6月18日発売 <収録曲> M-1 everyday M-2 後悔史 M-3 kotodama M-4 他人り事 M-5 Dear drops M-6 アンタレス M-7 械物 M-8 Survivor M-9 吾輩は人である M-10 最後の魔法 M-11 自分革命 M-12 最終想者(アンカー)