愛することは信じること。布袋さんはそう伝えてくださった。

 メジャーデビュー10周年を迎え、来年3月27日(日)に初の日本武道館単独公演開催を発表した“Ms.OOJA”が、7ヶ月連続でデジタルシングルを配信リリース!2021年9月16日に最後を飾る楽曲「鐘が鳴る」をリリースしました。同曲は、布袋寅泰の楽曲提供・プロデュースによるミッドバラード。Ms.OOJAが布袋のライブに足を運んだことがきっかけで親交が深まり、Ms.OOJAからの熱烈なオファーで制作が実現!聴く人の心にあたたかな光を灯すような楽曲に仕上がりました。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“Ms.OOJA”による歌詞エッセイをお届け。今回はその最終回。綴っていただいたのは、新曲「鐘が鳴る」にまつわるお話です。布袋寅泰に曲を依頼するまでの気持ち、コロナ禍で立ち止まって見えてきたもの、今の彼女が歌いたかった想い…。是非、歌詞と併せてエッセイを受け取ってください…!

~歌詞エッセイ最終回:「鐘が鳴る」~

Ms.OOJAメジャーデビュー10周年記念企画7ヶ月連続配信の締めくくりは、あの布袋寅泰さんに書き下ろしていただいた「鐘が鳴る」という曲だ。布袋さんといえば、誰しもが知るビッグアーティストであり、数々の伝説や名曲で音楽の歴史を作り上げてきた人だ。そしてデビュー40周年を迎える今もその勢いは留まるところを知らない、永遠のカリスマだ。

2017年12月25日横浜アリーナに初めてライブに伺った、その圧巻のステージはもちろんのこと、ファンのみなさんの一体感に圧倒されたのを覚えている。終盤のバンド紹介の際に、布袋さんに憧れギターを始め、憧れ続けて今や布袋さんの右腕とまで呼ばれるようになったOOJAバンドでもおなじみのギタリスト、アッキーこと黒田晃年氏の紹介をする時に、アッキーを褒め称えたあとで、それでも自分はまだまだ超えられない壁で居続けるから全力で挑んでこい!というようなことをおっしゃっていて、かっこよすぎて体の芯まで痺れたのを覚えている。第一線を走り続け、時代を築き、今なお他の追随を許さない。そんな姿に憧れを抱き追いかけたくなる、男の中の男!そんなふうに思った。

布袋さんに曲を書いてほしい!と思うようになったのは、その翌年の2018年に今井美樹さんのライブを観たのがきっかけだった。美樹さんの伸びやかで包み込むようなボーカルに酔いしれながら聴いた数々の名曲達。その中で「あなたはあなたのままでいい」という新曲を歌われていて、そのメロディーと歌詞のまっすぐな強さと潔さ、今の美樹さんが歌う意味が込められているような気がして本当に感動した。女性の凛とした美しさを引き出す楽曲を作るのは、これぞ男の中の男だと感じた布袋寅泰さんだった。布袋さんのプロデュース能力の凄まじさをひしひしと感じた瞬間だった。


2020年新型コロナウィルスの蔓延により、世界中がストップした。当たり前のように流れていた時間が止まった。自分だけではない、日本だけではない、世界中が同じ事態に見舞われたのだ。かつてない経験に私自身ももちろん多いに戸惑った。でも戸惑いながらも立ち止まることで見えてきたものがあった人は、少なくないのではないだろうか。

今まで何かに急かされるように働き、競うように何かを生み出し、競うようにそれを消費し。それはいつのまにか自分自身すらも消費し、すり減らし続けていたことに気づいた。一体何が大切で何が要らないものなのか、そんな心の整理も出来ないまま、ひたすら走り続けてきた。自分の頭で考えるより流れに身を任せる方が楽だったのかもしれない。

突如として訪れたストップモーションのような時間。別の時空に入り込んだような不思議な感覚だった。1日中自宅で待機する、たまに昼間に散歩をする、軒先でテイクアウトのご飯や野菜を売っている店がある、夜になれば早々に店が閉まり街から明かりが消える、逆に各々の家に明かりが灯る、映画で観た『ALWAYS 三丁目の夕日』のようだった。みんなが同じように不便で、ある意味で平等な社会だった。でもそこには人と会えないという不思議な隔たりがあった。

人と会えないということが、いかに人と会うことが大切だったかを教えてくれた。配信ライブをやったり、観たりして、そこでの満足感はもちろんあるけれど、100回配信しても1回の会うには敵わないということを知った。

医療従事者の方々にとっては怒涛の凄惨な世界だろう、命がけで従事してくれているみなさんには感謝の気持ちしか無い。感染してしまうのは悪いことではないけれど、出来るだけ感染はしたくない。そしていつ感染してしまうかと怯えながら暮らす日々にも疲れていく。身動きの取れない状態で、「あの頃にはきっと」と信じた未来がなんの変化もない今になり、そして過去になる。状況が長引けば長引くほど不安が心を支配していった。

そんな時、布袋さんに曲を書いていただけることになり、リモートでロンドンと繋いでお話をさせていただいた。あんな曲やこんな曲、ずっと妄想してきたことがついに実現する。「どんな曲が良いですか?」との布袋さんからの問いに、緊張の中すぐに出たのは「愛を歌いたいです。」という言葉だった。

数日後、布袋さんから送られてきたデモには、メロディーとサビにだけ仮の歌詞が添えられていた。シンプルだけどとても強いメロディーとサビのメッセージ。聴いた瞬間に心を掴まれた。

すぐに自宅で仮歌を録ってお戻しした。私の声で聴くそのメロディーはすでに強さを増していた。それからメールでのやりとりをして曲が完成していく度に、見たこともない素直な私がキラキラと輝いているように歌が響いた。オートクチュールとはその人にぴったりとサイズを合わせて作るだけではなく、その本人すらも知らない本質的な魅力を引き出すためにあるものなのだと知った。

レコーディングを経て、最終調整のトラックダウンの作業で布袋さんに再会した。スタジオで完成した曲を聴いた時、思わず涙がこぼれた。確認のためにもう1度聴いた、もう1度涙がこぼれた。自分の歌で涙することなんて一生に何度もあることじゃない。

今、私が1番ほしくて1番届けたい言葉とメロディーがそこにはあった。愛することは信じること。布袋さんはそう伝えてくださった。とても難しいからこそ大切なこと。シンプルだからこそ強い。そして私が歌うから意味がある。そんな大名曲をいただいた。

大切なことはなにか、愛とはなにか、立ち止まるこの世界に希望の鐘のように、この歌が響き渡り、愛する人達を守る光になると信じている。

<Ms.OOJA>

◆紹介曲「鐘が鳴る
作詞:Tomoyasu Hotei
作曲:Tomoyasu Hotei