僕は今繋いでいるこの手をどうするべきだろうか。

 2022年秋に“reGretGirl”が、3ヶ月連続で新曲を配信リリース! 今回の連続リリースは、3曲を通してひとつの恋の行方が描かれ、歌詞世界のストーリーが繋がっております。そして、9月14日に第1弾の楽曲「ルックバック」がリリースされました。過去の忘れられない恋と今の恋を重ねてしまう心を歌ったアップナンバー。第2弾は10月12日、第3弾は11月2にリリース!
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“reGretGirl”の平部雅洋による歌詞エッセイを3ヶ月連続でお届け!今回は第1弾。新曲「ルックバック」の歌詞世界をさらに掘り下げる内容となっております。とある夏フェス、とあるステージを恋人と手を繋ぎながら観て、涙がこぼれてしまった理由とは…。歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



この度、我々reGretGirlは9~11月にかけて、3ヶ月連続配信リリースをする運びとなり、それに加えて新たな試み、連続映像企画「Music Video&Story“煙の行方”」というものを制作させていただきました。ミュージックビデオとドラマのコラボレーションをお楽しみいただけたらと思います。3ヶ月連続リリースされる楽曲は1つの物語になっていますので、それを存分に味わってもらえる作品になっております。
 
 
そして今回はこのうたコラムにその楽曲たちを、更に掘り下げる文章を掲載させていただきます。是非ご一読ください。
 
 
 
あれは恋人と二人で夏のロックフェスに行き、僕が敬愛するロックバンドのステージを観た時だ。
 
開放的な空間、快晴と音楽に演者も客も我を忘れる程、熱狂していた。灼熱の会場に響き渡る轟音。「夏の匂いがした」と歌われた時、手を繋ぎ二人で涙を流した。ライブ演奏に感動したのは勿論なのだが、他にも心当たりがあった。この楽曲に紐付いて思い出される人。匂い、声色、仕草、全て鮮明に思い出される人。この涙を流した時、己の中に長らく霞がかっていた不明瞭な感情の正体がハッキリと見えてしまった。
 
「嗚呼、やっぱり僕は、まだ前の恋人を愛しているんだ」
 
新たな恋をして、新たな愛を育んでいるつもりでいた。しかし、大きな口を開けて無邪気に笑うところ。助手席ですぐ眠ってしまうところ。不貞腐れても少し優しく接すれば簡単に機嫌を取り戻すところ。共に過ごす日々を細かく摘み取れば、“あの人に似ている”と感じる事が数多くあった。
 
今、僕の前に存在しないだけで、今日も何処かで彼女は彼女の暮らしの中にいる。その事実が頭から離れなくなった。おそらく僕が握っている“幸せ”と名の付いたこの掌は、己を麻痺させ真実から目を背ける自己暗示に過ぎず、同じ涙を流せなかった時点で結末は決まっていて、あの人への執着から始まってしまった恋だったのかもしれない。
 
「いや、認めたくない」
 
粗悪で安価なプライドが邪魔をする。
 
しかし、心の奥底に執念深くこびり付いた“前の恋人”の記憶に、「懐かしくて」泣いたのではなく、まだ「悲しくて」泣いてしまった現実。いつまでも美しく輝き続け、燃え尽きることの無い太陽の様な眩しさに、火傷を負いそうな程に身を焦がす恋心。一度は立ちゆかなかった事実を忘却するかのように甘い記憶が蘇る。本当はもう駄目なのかもしれない。
 
僕は今繋いでいるこの手をどうするべきだろうか。離してしまおうか。いつまでも繋いでいようか。今大切にしたい人と手を繋ぎながら、忘れられない人のために涙を流す。もう答えは出ているのではないか。
 
僕はどうすればよいのだろうか。

<reGretGirl・平部雅洋>



◆紹介曲「ルックバック
作詞:平部雅洋
作曲:平部雅洋