2024年9月4日に“reGretGirl”が新曲「ロスタイム」をリリースしました。愛する人を失った絶望を受け入れられずにもがき苦しむ心情を歌い上げた楽曲。“もう居ない相手”にすがり続け、現実を受け入れた時には「この世の終わり」と嘆く感情をリアリティ溢れる言葉で表現しております。また、サウンド面ではSUNNY氏をサウンドプロデューサーに迎えており、疾走感あふれるロックサウンドに。
さて、今日のうたではそんな“reGretGirl”の平部雅洋による歌詞エッセイをお届け! 綴っていただいたのは、新曲「ロスタイム」にまつわるお話です。別れを告げられた日、蘇ってくるふたりで過ごした記憶、そして今の自分が抱く絶望…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。
この度、9月4日にnew digital single 「ロスタイム」をリリースいたしました。今回はreGretGirlが得意とする“切ない歌詞”に“キャッチーなメロディ”を合わせた爽快なナンバーになりました。
今回もこのうたコラムに文章を掲載させていただく事、誠に感謝いたします。
いつもありがとうございます。
部屋に脱ぎ散らかしたままの靴下。流し台に溜まった食器。これらを咎める人はもういない。
ひとりで眠るダブルベッド。よくわからないまま使っている化粧水。空になった歯ブラシ立て。惰性で流れるYouTube。二つずつある食器。飲み終えていない安いワイン。埃の溜まった姿見。半分扉の開いた靴箱。半分になった生活。全てが詰まっていた暮らし。
嗚呼、また涙が出てきた。
あの時、僕は走馬灯を見た。
別れを告げられ、君を目の前にふたりで過ごした記憶がすごい速さで脳内を駆け巡った。今となっては死を感じるほどに、鮮烈で悦に入るはずの甘い記憶。その中のふたりはよく笑っていた。いつこうなってしまったのだろうか。もう取り返す時間はないのだ。「なにか言わなければ」と思えば思うほど、言葉に詰まり、そのうまく言えない言葉はジワジワと涙に変わり目からこぼれ落ちた。
程なく沈黙が続く。ふたりで過ごす間に沈黙を恐ろしいと感じたことは無かったのに、今はこの静寂に戦慄してしまいそうだ。俯いて黙ったままただ時間だけが過ぎてゆく。君がぽつりぽつりと別れる理由を話す言葉は殆ど耳に入らず、どうすればこの場所に留まってくれるのかをずっと考えていた。
まだ息はあがっている。いなくなった事への焦燥感で、あの日々を追いかけても意味はないのに。前に歩み出そうとしている君と、少しでも時間を遡ろうと反対方向に走っている僕とでは、うまく交わらないわけだ。冬を少しずつ運ぶ夜の風が頬に刺さる。きっと季節が移ろうたびにこの日を思い出すのだろう。
コンビニの前。人目を憚らず泣いた。でもそんなことはどうでもよかった。もう君はそばにいないから。