ちちんぷいで変わらない現実の為に。

 今年結成20周年を迎えた“LACCO TOWER”が、2022年12月7日にオールタイム・ベストアルバム『絶好(ぜっこう)』をリリース!インディーズ~メジャー、全キャリアから発売された楽曲をメンバーがセレクトし、CD4枚(メジャーサイドCD2枚、インディーズサイドCD2枚)計50曲を収録する集大成的な作品となっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放つ“LACCO TOWER”の松川ケイスケによる歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾です。綴っていただいたのは、今作に収録される新曲「魔法」に通ずるお話。魔法にかかった最初の日から続いてきた物語の半ば、「あの時こうだったら」「あの日こうしていれば」と、思うことが増えたあなたへ。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。



「あの時こうだったら」「あの日こうしていれば」
 
今まで生きてきて、そんな事が頭をよぎらなかった人はいないんじゃないだろうか。
 
漫画に登場するとんがり帽子を被ったあの人のように、ステッキや指をくるんと回したその瞬間、リセットボタンを押すより早く世界を変えてしまう。そんな魔法を誰もが願ったことがあるのではないだろうか。
 
物語の始まりは、いつだって希望に満ちている。夜が早く終わるのを願い、太陽が昇るのが待ち遠しくてたまらなくなる。希望に満ち満ちた行動は、その熱量に後押しされるように続いていく。きっとこの物語のエンドロールは花弁の舞う中執り行われるのだろうと。誰かと恋をすることなんて、その最たる例だろう。
 
おかえりの笑顔が減った。ご馳走様の言葉が減った。かわいいねと、かっこいいねと、言い合う回数が減り、キスの回数が減った。ため息の数が増えた。口を利かない時間が増えた。
 
あの物語の始まりを基準として、減ったものと増えたものを数えていく。変わってしまったものばかりを計測してしまう。変わってしまったものは数えやすいから。
 
「あの時こうだったら」「あの日こうしていれば」
 
我々は元々願っていた未来がそうでなくなると感じた時、こんなふうに思うのかもしれない。まるで魔法にかけられてしまったようなあの瞬間から、変わったものばかりを数えてしまう。ただ、全てが始まった0の地点。つまり魔法にかかったあの地点でかかった魔法は、決して嘘ではない。何事にも変えることのない事実だ。
 
解けていった魔法は沢山ある。でも、解けなかった魔法があるからこそ、魔法が解けたと感じるのではないだろうか。「ちちんぷい」なんて一言じゃ変わらない現実に打ちのめされないように、今一度自分がなんの魔法にかかったのか確かめてみてほしい。きっと解けなかった魔法も山ほどあるのだから。

<LACCO TOWER・松川ケイスケ>



◆紹介曲「魔法
作詞:松川ケイスケ
作曲:LACCO TOWER

◆オールタイム・ベストアルバム
『絶好(ぜっこう)』
2022年12月7日発売
COCP-41841/4 ¥6,050(税込)
 
<収録曲>
 
<Disc.1>
1.薄紅(うすべに)
2.化物(ばけもの)
3.雨後晴(あめのちはれ)
4.魔法(まほう)
5.嘘(うそ)
6.桜桃(さくらんぼ)
7.怪人一面相(かいじんいちめんそう)
8.傷年傷女(しょうねんしょうじょ)
9.若者(わかもの)
10.喝采(かっさい)
11.星空(ほしぞら)
12.地獄且天国(じごくかつてんごく)
13.雪(ゆき)
 
<Disc.2>
1.棘(とげ)
2.未来前夜(みらいぜんや)
3.遥(はるか)
4.葡萄(ぶどう)
5.非公認(ひこうにん)
6.青春(せいしゅん)
7.歩調(ほちょう)
8.非幸福論(ひこうふくろん)
9.狂喜乱舞(きょうきらんぶ)
10.火花(ひばな)
11.蛍(ほたる)
12.秘密(ひみつ)
13.花束(はなたば)
 
<Disc.3>
1.藍染(あいぞめ/Re-Recording)
2.杏子(あんず)
3.苺(いちご)
4.恋人(こいびと)
5.斜陽(しゃよう/Re-Recording)
6.栞(しおり)
7.雨(あめ)
8.模細工(もざいく)
9.奇妙奇天烈摩訶不思議
(きみょうきてれつまかふしぎ)
10.蛹(さなぎ)
11.組絵(ぱずる)
12.告白(こくはく)
 
<Disc.4>
1.林檎(りんご)
2.柘榴(ざくろ)
3.蕾(つぼみ)
4.花弁(はなびら)
5.後夜(こうや/Re-Recording)
6.未来(みらい/Re-Recording)
7.弥生(やよい)
8.鼓動(こどう)
9.紫陽花(あじさい)
10.錻(ぶりき)
11.懐炉(かいろ)
12.一夜(いちや)