くしゃみが出るくらい幸せな明日の為に。

 今年結成20周年を迎えた“LACCO TOWER”が、2022年12月7日にオールタイム・ベストアルバム『絶好(ぜっこう)』をリリース!インディーズ~メジャー、全キャリアから発売された楽曲をメンバーがセレクトし、CD4枚(メジャーサイドCD2枚、インディーズサイドCD2枚)計50曲を収録する集大成的な作品となっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放つ“LACCO TOWER”の松川ケイスケによる歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回が最終回。綴っていただいたのは、今作の収録曲「斜陽」に通ずるお話です。当たり前が当たり前ではなかったと気づいた今だからこそ、想うことは…。今、なかなか自信を持てずにいるあなたへ。歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。



私はボーカリスト。歌い手。バンドマンである。2022年11月、私は歌う事が出来なくなった。度重なる疲労か、ストレスか、喉風邪も相まって、高音域の声が出づらくなってしまったのだ。結果、11月中に予定されていたライブは勿論キャンセル・延期となった。様々な方にご迷惑をかけてしまった事を、改めてこの場を借りて謝罪させて頂きたい。
 
歌う事、歌える事は当たり前のことだと思っていた。皆さんが朝起きて歯を磨きご飯を食べるように、これから先も一生続いていくものだと勘違いしていた。結果、23年の4月、我々LACCO TOWERの魂ともいうべき主催ロックフェス「I ROCKS 23」までの約5か月間、休養をさせて頂く運びとなった。このコラムを書かせて頂いている12月現在、少しずつ回復傾向にはあるものの、前述した「当たり前」になるにはまだまだ時間を要する事になりそうだ。
 
私は「おうじさま」だった。周りにあるものが当たり前と勘違いし、自分の所作以外の部分は見えておらず、本当に大事なものを失いそうになった。自分の胸に住むいじわるの蝮は、いよいよ私を何のアイデンティティーも持たない只の野良にさせようとしているのだ。当たり前のものは、そうなるが故の努力があってこそのものなのだ。
 
運命とか天命とかいう言葉が実在するなら、それに抗う時が今なのではないだろうか。小さすぎて見えない「ずれ」に気付いた時、それは未来へと続く階段にも、ただ下るだけの階段にもなりうるのだから。
 
何もわからず只がむしゃらに自分を信じていたあの頃。皆さんはまだ覚えているだろうか。あの頃、間違えていた感覚。それは未来に続く階段であり、確かに今の自分をつなぎとめてくれているに違いない。もし今少し自分に自信がない人がいるのであれば、この「斜陽」という歌を聴いてほしい。
 
いつか自分はくしゃみが出るくらい幸せだと、大手を振って笑えるように。

<LACCO TOWER・松川ケイスケ>


◆紹介曲「斜陽
作詞:松川ケイスケ
作曲:LACCO TOWER
 
◆オールタイム・ベストアルバム
『絶好(ぜっこう)』
2022年12月7日発売
COCP-41841/4 ¥6,050(税込)
 
<収録曲>
 
<Disc.1>
1.薄紅(うすべに)
2.化物(ばけもの)
3.雨後晴(あめのちはれ)
4.魔法(まほう/新曲)
5.嘘(うそ)
6.桜桃(さくらんぼ)
7.怪人一面相(かいじんいちめんそう)
8.傷年傷女(しょうねんしょうじょ)
9.若者(わかもの)
10.喝采(かっさい)
11.星空(ほしぞら)
12.地獄且天国(じごくかつてんごく)
13.雪(ゆき)
 
<Disc.2>
1.棘(とげ/新曲)
2.未来前夜(みらいぜんや)
3.遥(はるか)
4.葡萄(ぶどう)
5.非公認(ひこうにん/新曲)
6.青春(せいしゅん)
7.歩調(ほちょう)
8.非幸福論(ひこうふくろん)
9.狂喜乱舞(きょうきらんぶ)
10.火花(ひばな)
11.蛍(ほたる)
12.秘密(ひみつ)
13.花束(はなたば)
 
<Disc.3>
1.藍染(あいぞめ/Re-Recording)
2.杏子(あんず)
3.苺(いちご)
4.恋人(こいびと)
5.斜陽(しゃよう/Re-Recording)
6.栞(しおり)
7.雨(あめ)
8.模細工(もざいく)
9.奇妙奇天烈摩訶不思議
(きみょうきてれつまかふしぎ)
10.蛹(さなぎ)
11.組絵(ぱずる)
12.告白(こくはく)
 
<Disc.4>
1.林檎(りんご)
2.柘榴(ざくろ)
3.蕾(つぼみ)
4.花弁(はなびら)
5.後夜(こうや/Re-Recording)
6.未来(みらい/Re-Recording)
7.弥生(やよい)
8.鼓動(こどう)
9.紫陽花(あじさい)
10.錻(ぶりき)
11.懐炉(かいろ)
12.一夜(いちや)