2023年4月19日に“琴音”がEP盤『君にEP』をリリースしました。前作ミニアルバム『君は生きてますか』以来約1年7か月ぶりとなるこのEPには、「君に」のほかに未発表の新曲2曲、今年1月に公開されたアニメ映画『金の国 水の国』の劇中歌として話題になった「Brand New World」「優しい予感」「Love Birds」3曲の全6曲が収録されます。
さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“琴音”による歌詞エッセイをお届け。今回は【後編】です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「ライト」にまつわるお話です。EP唯一の自作曲。これまで話してこなかったという、この曲の秘密を明かしてくださいました。さらに今回も音声版がございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
4月19日『君にEP』リリースにつき、第2弾を書かせていただく運びとなりました。
以前、1stアルバム『キョウソウカ』リリースの際は3つ書かせていただいているのですが、先日久しぶりに見返し、ほのかに香るあどけなさと今も変わらぬ前段のくだらない小話にしみじみしました。
ということで、今日も今日とて書いてまいります。
琴音です。
さて、今回の題材となるのはEP唯一の自作曲「ライト」です。
本曲以外の提供曲5曲もそれはそれで大変思い出深いのですが、自作となると制作段階でのドラマは一層沢山うまれるものです。
とはいえ今回も第2弾を書かせていただけるとは思っておらず、この曲の制作話は取材などで洗いざらい話してしまったと頭を抱えておりました。
ですが、実はまだどこにも話していない秘密中の秘密がひとつあったのです。
今回はこの場をお借りし、本曲制作にまつわるパンドラの箱を開けてしまおうと思います。
昨年に全6曲構成に決まり走り出したEP制作。
しかしこの曲自体が完成したのは今年の3月初旬です。
つまり、EPの中では1番最後に完成した出来たてホヤホヤの曲になります。
当時、映画『金の国 水の国』劇中歌の3曲はとうに出来上がり、「君に」や「波と海」も徐々に仕上がっていく中、残り1曲の所在はなかなか決まらずにいました。
そしてやはり最後の曲は自作でやるべきと決まった時には、実質1ヶ月程の日数で0から全てを完成させなくてはならない状態でした。
そもそも何かと工程の多い制作です。
このようなギリギリな状況で本当に完成させられるのか、私自身にも一抹の不安がありました。
現になかなかタイトなスケジュールではありましたが、幾つかデモを作り選定をし、「ライト」プロデューサーの若菜拓馬さんの助言や編曲をいただきと、思いのほか作曲は順調に進んでいました。
ですが、一難去ってまた一難。本当に苦しむことになるのはその先の作詞作業だったのです。
というのも、私の歌詞は内省的な内容が多く、拘るほど時間がかかりがちです。
短期間で納得できる歌詞を書くには今までのやり方ではだめなのだろうと思いつつ、ならばどうすればいいのかと困惑していました。
自作曲完成のための重要な局面、時間も迫る中で折れるわけにもいきません。
とにかく打開策を見出さなくてはと思い悩んでおりました。
そんな折、ふとタイミング良く、とあるブログに出会ったのです。
初めて見た方のものでしたが、作詞方法の一案としてテーマを2つ決めるというやり方が紹介されていました。
例えば恋愛モノの歌詞を書く、という大枠のテーマだけではなくその中にもう1つ、「雨」や「カプチーノ」など具体的なテーマを決めておくと歌詞が書きやすくなるという内容でした。
それを読んだとき、確かに考えてみればそういう曲は多いのかもしれない、と言語化されることで気がつきました。
ここまで書いてみて、そんな大事な時にネットに助けを求めるなよと自分でも呆れますが、出会ってしまったのですから仕方がありません。
実際これを機に、今までの内省に潜っていく作詞方法とは違う新しいやり方も試してみようと思い立っていきます。
当時、作曲から作詞に移っていく際に出ていた「ささやかな幸せ」という大枠テーマのもと、ブログ通りもう一つのテーマを考えてみました。
そこで思いついたのが、本曲の題名にもなっている「ライト」です。
日々を過ごしていく中、灯りという存在は当たり前のように、ひっそりと色々な場面を彩っています。
灯りのなかで生まれる取り留めのない毎日、そんな小さな幸せが続いていく様子を書いてみたいと思いました。
結果、新しい試みをやってみた感想としては、何となく作詞家さんみたいだなと感じました。
確かに明確なテーマが決まっていると関連することは思い出しやすいですし、実体験として経験がなくとも誰かから聞いたり想像でお話を作ってしまったり、他の既成曲からヒントを得たりと色々な策がとれます。
ここだけの話、本当に作詞期間中はあらゆるプレイリストが恋愛曲や家族曲で埋まっていました。
実体験を派生させて書いた部分もあれば、一方で自分では感じたこともないことを書いた部分もあり、言ってみれば自分なのにどこか自分じゃない、でも自分の歌詞という奇妙なものができた感覚です。
自分が思っていないことを書くなんて初めてで新鮮でしたが、それが自分の書きたいことと喧嘩していないというのがなにより驚きでした。
普遍の中に自分のこだわりや工夫を詰め込む感覚。
何とも言い表しにくいですが、ともかく一段成長できた気分です。
今回この話を書く上で、お世話になった例のブログをもう一度読みたいと探したのですが、残念ながら見つけられませんでした。
どこのどなた様かも存じませんが、自分の窮地を助け成長させてくださったこと、大変感謝しております。
正直たまたま見たものに影響されてやってみたなんて、何だか恥ずかしいような情けないようなで無かったことにしたかったのですが、まあ私に嘘は似合わないということで書いてみました。
これからも色々な刺激に出会って成長していきたいなと思うこの頃です。
っはい!!
いかがでしたでしょうか。
今回はこの辺で終わります。
またどこかでお会いしましょう。
ご清覧ありがとうございました!
<琴音>
◆紹介曲「ライト」
作詞:琴音
作曲:琴音・若菜拓馬
◆『君にEP』
2023年4月19日発売
<収録曲>
◆紹介曲「ライト」
作詞:琴音
作曲:琴音・若菜拓馬
◆『君にEP』
2023年4月19日発売
配信サービス一覧:https://jvcmusic.lnk.to/kimini_ep
1. 君に
2. ライト
3. 波と海
4. 優しい予感
5. Brand New World
6. Love Birds