2023年10月18日に“KALMA”がミニアルバム『ムソウ』をリリースしました。今作には、リリース済みの楽曲に加えて未発表の「モーニングラブ」「アイス」「意味のないラブソング」「ムソウ」を含む全8曲が収録。さらにミニアルバム発売を記念したリリースツアー“KALMA one man tour 2023~2024「ムソウニナラス」”も開催が決定!
さて、今日のうたコラムではそんな“KALMA”の畑山悠月による歌詞エッセイをお届け! 綴っていただいたのは、今作『ムソウ』全収録曲それぞれの歌詞にまつわるお話です。ぜひ、歌詞と併せてエッセイをお楽しみください。
1.「ABCDガール」
学校イチのマドンナ。
話したい。声をかけたい。交わりたい。
声をかける勇気が無いわけではない。
「バンドやってて~…」なんて言って近づこうとしたって、多分振り向いてくれない。そんなことはわかってる。
僕がやってるバンドのことなんて絶対知らない。
“あの子”と僕とじゃ生きてる世界が違うんだろうなって思ってた。
どーせ、醜い“アイツ”とくっつくんだろうって思ってた。
けど、現実では話せなくたって、
夢の中で逢えたら嬉しいな とか、
よくある歌詞みたいなことを思ったりした。
ただ、夢は掴めるものだけど、操れるものではない。
だから、ほんとに奇跡みたいな可能性にかけて
もし夢で逢えたらその時は
好き勝手させてください。
飲めないビールを20杯いけちゃうくらいの深いやつ
2.「モーニングラブ」
楽しい時も、悲しい時も
「全部夢だったらいいのに」
なんて考える時間がある。
朝起きて夢から醒めたとき
この腕の中で
幸せそうな顔してスヤスヤ寝てるあなたがいる。
確かにこの目で見えている。
確かにこの耳であなたの寝息が聞こえている。
確かにこの手でかわいいあなたの顔を触っている。
確かにこの指であなたの綺麗な髪の毛をいじっている。
なのに、これも全部夢なのかもしれない って
そんなこと考えたらキリがないけどさ、
ほんとにそうかもしれないとかさ、
思っちゃったりするくらい
理解が追いつかないくらい
ただただあなたが好き
3.「デート!」
私のどこが好き?という質問に対して
彼女を納得させられるような
上手な返しを言えたためしが無い。
「だってまじで全部好きだから~」
って言っちゃうような男だけど、
それは本当にそう思ってるからだよ。
それなりの収入を得て
良さげな雰囲気のレストランに
ちょっとは君を連れていけるようにもなった。
ただ、
脂乗りが最高のぶりぶりでぷりぷりな新鮮なお寿司を食べて得る幸せよりも
でっかい皿に盛り付けられたなんの腹の足しにもならないような、高級フレンチの一口サイズのパスタを食べて得る幸せよりも
君と食べるラーメンで得る幸せの方が
ぼくにとっては
“明日も生きるため”の生きがいになる
ラーメンが安いから、ラーメン屋に行くんじゃない。
君と食べるラーメンが美味いから、ラーメンを食べる。
そりゃあ、3万円のお寿司を食べたら
そりゃあ、幸せな気持ちになる
ただ、500円のラーメンを食べても
とっても幸せな気持ちになる
てことは実質、ラーメンも3万円である。
それを500円で食べさせてもらってる。
そしたら結果的に29500円が浮く。
奇跡みたいな話なんです。
まあそんな話はどうでも良くて
結局なにが言いたいのかって
ラーメンは美味しい
4.「アイス」
大事にしたいものを「愛」と呼ぶ
その「愛」を吸い込んで、僕は今日も生きてる。
夏の魔法なんて信じない。
ただ不思議なことに
毎年、夏は一年の中で一番
「愛」が溶けやすい季節だ。
いつか終わってしまうってわかってるからこそ
僕は今を抱きしめる。
5.「夢見るコトダマ」
こんなことを自分で言うのは変かもしれないけど
昔から、目指してた目標とか夢とか結果を
有言実行してきた人生だった。
高校生の頃、お昼ご飯を食べる時間に友達に
「おれ絶対メジャーデビューするわ」
なんてことを本気で言ってた
もちろん友達は冗談半分で聞いてた(多分)
メジャーデビューなんて、一握りの人間しかできないことはわかっていた。
ただ、運もあって、本当にメジャーデビューできた。
ただ、そんな僕だけど
未だに叶えられてない夢が一つある。
それは、「あの人みたいになりたい」という夢だ。
“あの人”は“あの人”だ。
高一で友達と組んだ3文字のバンド
気付けば少しずつだけど段階を踏んで
メジャーデビューしたり
大きいステージ立ったり
憧れのフェスに出たり
会いたかった人に会えたり
欲しかったギターも買えた
ただ未だに“あの人”みたいにはなれてない
夢は、口にすることで叶うと思ってた
僕は「きっと」とか「いつか」って言葉が好きだ
突拍子も無い言葉だし
根拠なんて無いけれど
僕は好きな言葉だ
バンドを始めて8年経つ
あの頃は、10年後には誰もが知るバンドになってる
なんて妄想してた
けど、やっぱりこの世界で生きていくのは難しい
でもまだ22歳。
人生はまだまだこれから
今までもめちゃくちゃ充実した人生だったし
今だってめちゃくちゃ充実した人生を送ってると思ってる
ただ、これから来る未来は
もっとすごいことが起こると思ってる
“あの人”みたいになれる日は
いつかきっと来ると思ってる
少し前に
<根拠の無い自信 それだけで大丈夫さ
ワクワクが僕らを待ってる>
って歌詞を書いた
本当にそうだと思う
こんなこと歌詞にする自分
変だけど、かっこいいと思った
だから僕は
夢見るコトダマに乗せて
今日も今を歌う
僕が“あの人”みたいになれた時
僕も誰かにとっての“あの人”になれるんだと思う
6.「アローン」
KALMAというバンドは
“今”を歌うバンドだと思ってる。
だから、過去のことはあまり歌わないようにしてた
特に、過去の恋愛のことは
歌いたくなかった
だけど
そんな今までの自分の中のしょうもないルールを
突き破りたくなるくらいの
忘れられない恋をした
気付いたらギターとペンを持ってた
その時思った。
過去の恋愛を歌うのも
“今”の僕なんだって
「過去」という言葉に囚われすぎていた。
「過去」は「今」だ。
だから、今だから思う過去のことを
歌うと決めた
丁寧に慎重に というよりは
ヤケクソになって書いてた
気付いた時には
「こんな歌詞をほんとにおれが書いたの?」
って思うくらい
自分でも信じられないようなダサい歌詞を書いてた
恋人から
友達でもなく赤の他人でもない
他の誰かさん同士に戻ったあの日の帰り道
雨が降ってた
透明な傘を低い位置に持ってた
帰り道を、透明な傘越しに見ながら歩いてた。
視界がぼやけていたせいか
道路に咲いてた青い花が「?」に見えた
帰って、たくさん考えた。
このモヤモヤしている心の花に
寄り添って、見つめて、水をあげても
ずっと答えは出なかったあの日の唄。
7.「意味のないラブソング」
ここ何年か
ぼくにとって大切な人の大切な人が
「死」を迎える瞬間が、多い気がする。
人はどの時代も、いつか必ず息を引き取る
だから僕があまり気にしていなかっただけで
僕が子供の頃も、僕の周りでは人が亡くなっていたんだと思う。
昔よりも大人になってしまったせいか
「死」というものに対しての感じ方・捉え方が変わった。
こっちの声も届かなくなる。
僕からするとあなたはもういないけど
あなたからしても、僕はもういないんだね
こちらがいくら喚いたって
まるで意味がないんだね
想い続けることしかできないんだね
けど、それが大切なことなんだ。
こちらの勘違いでもいいから
あなたに届いてると、想い続けるんだ。
想い続けたその気持ちがいつか
意味以上のモノになるのかなって思った。
じゃあこんな僕に何をすることができるんだろう
ぼくはまだ幸い、
身近な大切な人の「死」を経験していない。
だけど、さっきまで、昨日まで、
普通に息をして暮らしていた大事な人が
もう永遠に息をしなくなるという出来事は
本当にいつ訪れるかわからない。
もし僕がその出来事に直面した時
僕のことを救ってあげられるものってなんなんだろうって考えた。
自分で自分を救う唄を書いた。
8.「ムソウ」
久しぶりに、これだ!と思う歌詞が書けた。
大きすぎる夢を見たり
東京という街で勘違いしたり
嫌なことが続いて消えたくなったり
喧嘩したり、飯食えなくなったり、
タバコを吸い始めたり、朝から酒飲んだり、
遅刻したり、とびきりの恋したり、
バンドとして考えれば
おれら今一番かっこいいなって
無双できてる気がするし
1人の人間として考えれば
夢があるから夢を想って1日1日を過ごして
夢想してるな~自分 と思うし
もうなにもいらないやって、
もうなにもしたくないやって、
さっきまであんなにかっこいいライブをしてたのに
家に帰って1人、無想にもなる。
きっとこの全ての「ムソウ」は
良くも悪くも死ぬまで続くと思う
僕はそんな人生を
「ムソウ」と呼ぶ
<KALMA・畑山悠月>
◆ミニアルバム『ムソウ』
2023年10月18日発売
<収録曲>
1 ABCDガール
2 モーニングラブ
3 デート!
4 アイス
5 夢見るコトダマ
6 アローン
7 意味のないラブソング
8 ムソウ