その靴底を認められますように。

 2024年6月19日に“とた”が新曲「日めくり」をリリースしました。アシックスジャパンのWEB CM『三年間じゃない、一生だ。』のタイアップソングとして書き下ろされたこの曲。当たり前に繰り返す毎日が呆気なく終わったような気がしても、ふとした時確かに全てが今につながっている。ゴールテープを切るのが自分でなかったとしても、走った距離の分強くなれると、背中を押してくれる楽曲が完成!

 さて、今日のうたではそんな“とた”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、収録曲「日めくり」にまつわるお話です。ゴールテープを切れなかったとき、喪失感や不安を抱いてしまうとき、痩せた靴底を覗いてみて気づくこととは…。



「日めくり」という曲をリリースしました。目標に向かって走ってもゴールテープを切れなかった時に聴いてほしい曲です。
 
この曲を制作しながら、私は学生時代の部活を思い出していました。大会が近づき日めくりカレンダーが薄くなるほど、楽しみも焦りも大きくなって気持ちは熱くなっていました。結果として人から讃えられる評価を得られなかった時、ついさっきまであった当たり前の練習生活を失った喪失感と、意味はあったのかなんて不安が残りました。
でも日が沈んでも、校舎の戸締りをしても続けていた練習。きっと意味がないなんてことはなくて。意味がないなんて思いたくないのかもしれません。
 
昼のチャイムがなる頃、お弁当箱の中にはいつも栄養と期待が詰まっていました。収まりきらないご飯とかひとりだったら作ることもないうさぎのリンゴ。期待は嬉しい時もあれば、重荷になったり悲しくもなりますね。でもひとりで戦うときを思い出しても、足跡がひとつじゃなかったことは、今になって安心させてくれています。支えられていると感じるのは、いつだって支えられている時を思い返すようになってからですね。
 
結果だけを見ることは簡単ですが、辿ってきた道は、誰かのことでも自分のことでも見るのは難しいように思います。だからこそ靴底を覗いて自分を確かめたいのです。過去を見ては、自分は走ることが出来るのだと未来に期待したいのです。
 
これまで制作してきた曲に比べて、私はより私のことを歌っている曲だと感じています。整ってなんかいないし、期待が悲しいとか矛盾しながらも言えちゃうし、もしかしたらまだ当時のままなのかもしれません。この歌詞は言い聞かせるみたいに書きました。そうしなければ痩せた靴底も、今の自分のことも、覗けないから生まれたと思います。いつのまに、って気づくものにこそ、いつも目を向けて覚えておきたいです。
 
アートワークは垂水佳菜さん。初めてジャケ写に自分の姿を写してもらいました。垂水さんには春フェスに同行してもらって、ミュージックビデオでは泣いたり笑ったりしている私がいます。今まで見せてこなかった私を見せたい、今も変化しながら走っている途中です。
あなたがこの曲を聴く時、ゴールテープが切れていなくてもその靴底を認められますように。私の歌がそんな存在になることを、私は期待したいのです。
 
<とた>



◆紹介曲「日めくり
作詞:とた
作曲:とた



◆とた Live Tour 2024 “bloomin’ page 2”
9月15日(日)大阪・梅田シャングリラ(17時半開場 / 18時開演)
10月4日(金)東京・渋谷WWW X(18時開場 / 19時開演)
チケット受付URL:https://eplus.jp/tota/