5年ほど前の夏、豪雨の夜に新宿歌舞伎町で見た光景

 元yonawoのボーカル“荒谷翔大”が2024年8月23日に新曲「雨」を配信リリースしました。アレンジャーにknoakを迎え、ブラスやピアノがフィーチャーされたジャジーなアレンジに、刺激的な歌詞が鮮烈な印象を残す挑戦的な1曲。ソロ・アーティストとして改めてメジャーデビューを果たす彼の今後の音楽性の広がりがより楽しみになる楽曲に仕上がっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“荒谷翔大”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「」にまつわるお話です。自身の心の奥にずっと引っかかっていた光景。それを歌にしたいと思ったきっかけは…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。


5年ほど前の夏、豪雨の夜に新宿歌舞伎町で見た光景からこの曲ができました。
 
煌びやかな電飾に酔いどれの人々、早足で耳にイヤフォンをしてスカウトを振り切ろうとする女性、家路を急ぐしかめっ面のサラリーマン、馬鹿騒ぎをして一夜を楽しむ若者たち、帰る場所をなくした少年少女、堂々と胸を張りギラギラ輝く無料案内所、そんな大量の情報やたくさんの人生が一気に雪崩れ込んできて、ぼくは何を考えて、何を想えばいいのかわからなくなって、そのキラキラで何だか目を背けたくなる光景がずっと心の奥に引っかかっていました。
 
そして1年ほど前、東京の歓楽街を舞台にした村上龍さんの小説『イン・ザ・ミソスープ』を読んだときに、あの日ぼくが見た光景や、今も心の奥に引っかかっている“ナニカ”を歌に収めたいという気持ちが湧いてきて、サビの歌詞を書きました。
 
そんなサビでは、僕は無宗教ですが、この歌に祈りを込めたくて、「ああ」と歌っている部分を歌詞では<アーメン>と表記しました。
 
そして<おれを流して>というフレーズには、遠い昔も、今も、そしてこれから先もこの街で、この国で、この星で響めく、すべての命や人生、哀しみや憎しみ、喜びや言葉にならない感情が渦となり雨を降らせ、「この身」を「おれ」という意識や存在自体を、キレイさっぱり流してくれ!という願いを込めました。
 
この街で幸せを、愛を、自分の内や外に探し求めて、ひとりきりで意味もなく彷徨い続ける「おれ」にこの歌が届いてくれたら嬉しいです。
 
<荒谷翔大>



◆紹介曲「
作詞:荒谷翔大
作曲:荒谷翔大