そうだ、私はずっとこんな曲が書きたかったんだ。

 2024年9月4日に“坂口有望”が新曲「アンババババランス」を配信リリースしました。世界平和をテーマに、時代と共に変わりゆくもの/変わらないものの対比をポップに表現。一度聴いたら頭から離れない、気が付いたら口ずさんでしまう中毒性のある作品が完成。坂口の楽曲をいくつもプロデュースした柿澤秀吉(秀吉)が編曲を担当し、思わず踊りだしたくなる、民族楽器で彩るアップテンポでキャッチーな楽曲となっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“坂口有望”による歌詞エッセイをお届け! 綴っていただいたのは、新曲「アンババババランス」にまつわるお話です。自分は平和を歌うだけの器を持ち合わせていないと考えていた自身が、この歌を完成させるまでの軌跡とは。そして込めた想いは…。ぜひ、歌詞とあわせて、エッセイを受け取ってください。



実に、この一行目を綴るのは3回目で、ある程度書いては白紙に戻すを繰り返している。こんなにセルフライナーノーツに苦戦するとは、自分でもびっくり。やはりこの新曲、爆発的に生まれただけに、「こういう歌なんですよ!」と説明するのが難しい。広くは世界平和の曲とカテゴライズされているけれど、私が思う理想の社会を語るのもなんか違って、拙い言葉でも素直に、自分はどうこの曲を解釈しているかを記していくことにする。
 
上京して4年が経った頃、私は意図的にテレビを見なくなった。悲しいニュースを目にすると、胸がざわざわして、映像が頭から離れず、本当に寝れなくなったりする。思えば、昔からそういう体質だった。小学校の授業で、地球温暖化の影響でツバルという国が沈みかけていると習った時は、毎日毎日ツバルの家族や恋人たちを想像して、布団の中で泣いた。
 
最近では、それが心から人に共鳴できるという長所だと肯定するようにしているが、まあ厄介なもので、SNSでも絶えず、ショッキングな情報を避けて利用しなければならない。今でこそ「繊細さん」というわかりやすい言葉で括られるそうだが、小さい頃は、自分はもうただの憂鬱人間なのだと落胆していた。
 
もちろん、争いごとは大の苦手で、心の平穏を保持するために一人でいることも多い。それくらい、私の人生は、平和を渇望していたし、いつ曲のテーマになってもおかしくはなかった。しかし、心のどこかで、自分には平和を歌うだけの器を持ち合わせていないと考えていた。マザー・テレサのような人格者じゃない限り、また、その分野に精通した人ではない限り、通用しないのかなときっと不安だったのだ。
 
5月のこと。突如<アンババババランス アンバランス>という陽気なフレーズを思いついて、そこからはまるで歌詞にされる機会を待ち焦がれていたように、言葉が次々と紡ぎ出された。そうだ、私はずっとこんな曲が書きたかったんだと思った。平和を願うのに資格は要らない。それどころか、このアンバランスな私のままで表現できることが嬉しかった。そして、弾き語りの状態でスタッフチームに聴かせたところ、最短スパンでこの曲を発信しようと動いてくれた。
 
アレンジを担ってくれた秀吉さんとは、何度もやり取りをしてサウンド面でも、メッセージを込めて仕上げた。ここだけの話、モチーフになった某国の民謡、使われている楽器。現代社会ではありえないコラボだけど、この音楽の中でだけは融合させている。本当の意味でのハーモニー。私はそれらの上で舞いながら、歌うことができた。改めて、この作品に携わってくれた全ての人に感謝を伝えたい。
 
世界の平和を一緒に祈ろうなんて大それたことを言うつもりはなくて。ただ、この曲を聴いて、「自分が幸せになりたいのと同じように、みんなにも幸せであってほしい」という、優しい気持ちになればなぁと思う。ふざけたタイトルで申し訳ない。でも、いい曲だから聴いてほしい。荒れたグラウンドに光を。
 
<坂口有望>



◆紹介曲「アンババババランス
作詞:坂口有望
作曲:坂口有望