さめざめだからこそ歌えるテーマだと思う。

 2024年11月20日に“さめざめ”がミニアルバム『黄昏ハッピービッチ(下)』をリリースしました。女の子の心情の代弁者として圧倒的存在感を誇るさめざめが結成15周年を記念してミニアルバム『黄昏ハッピービッチ』(上・下)を発売。第一弾は7月3日にリリース。そして第二弾には、唯一無二の新たなさめざめソングが全8曲収録されております。
 
 さて、今日のうたではそんな“さめざめ”の笛田サオリによる歌詞エッセイを3週連続でお届け! 今回は第2弾。綴っていただいたのは、収録曲「アフターピルベイビー」にまつわるお話です。さめざめだからこそ歌えるテーマ。そしてみんなに知っていてほしい、毎日どこかのクリニックで広がっている景色。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。



生まれてきたとき、私たちには環境も名前も選ぶことはできない。
物心ついたときには目の前に広がる生活の中でどう生きていくか決まっている。
 
小さな頃、ピンク色が嫌いだった。
ピンクは女の子の色って決めつけられてたから。
多分、私は「みんなと同じ」が嫌いだった。
大人になってからこんなにピンク色な楽曲や衣装を纏うことになるなんて想像もつかなかった。
 
私たちには性別も選べない。
気づいたら「女の子」で、思春期を経て「女性」になり、その頃には好きな人と手を繋ぐ以上のことになる。
 
今の時代の保健体育ではどういった教えがあるか分からないけど、私が思春期の頃、性に対しての知識をもっと知っておくべきだった。
確かアフターピルの存在もなんとなく知って、どうしたら手に入るのか自分で調べた記憶がある。友達にも恥ずかしくて聞けなかった。
 
72時間以内に服用をすれば8割強の妊娠を阻止できると言われる。 
そのタイムリミットを計算して慌ててクリニックに行ったことがあった。
 
あの時の気持ちはその経験をした人にしか分からない不思議な感覚。
「今日、クリニック行ってアフピルもらってくるね」って、彼に伝えても
相手は「そうなんだぁ」くらいの感覚で、覚悟を持ってしているはずだけどそこにいつも落差を感じた。
 
これでもし服用しなくて、新しい命を宿してしまってもきっとあの人はそれを喜んでくれない。そうなったときもっと傷つくのは自分自身。
だから未来を潰すために服用をするもの。
 
そんな経験をした感覚をどうしても曲にしたかった。
さめざめだからこそ歌えるテーマだと思う。
 
実は10年以上前からこれをテーマにした楽曲を作りたいと思っていて、大体の歌詞はできていた。2014年に出版した本『誰にも言えない恋ばっか』にも「それぞれの景色」というタイトルでこの内容の詩を書いていてる。
 
10年以上の時を経て、やっとリリースすることができた。
この曲に共感できる人も、全く感覚が分からない人も、毎日どこかのクリニックでこのような景色があることだけは知っていてほしい。
 
<さめざめ・笛田サオリ>


◆紹介曲「アフターピルベイビー
作詞:笛田サオリ
作曲:笛田サオリ

◆ミニアルバム『黄昏ハッピービッチ(下)』
2024年11月20日発売
 
<収録曲>
1. だってあたしはさめざめガール
2. 可愛くなぁれ
3. 最優秀ハッピーエンド賞
4. アフターピルベイビー
5. 裏SHIBUYA
6. 白昼夢と悪魔とワンピース
7. テイキュウ少女漫画
8. 生涯一の片想い