雨に何かを感じたり悲しめたりする人へ。

 2025年5月7日に“鉄風東京”が配信シングル「さみだれ」をリリースしました。すでにLIVEで披露されている同曲は、Vo.大黒の憂いを帯びた感情を吐露するような歌い出しからドラマチックに展開。そして<あなたとなら壊れてもいいと思えた>というサビのフレーズが印象的なミドルナンバーとなっております。
 
 今日のうたではそんな“鉄風東京”の大黒崚吾による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「さみだれ」にまつわるお話です。雨が降ると気が沈む。この時代のことを考えるともっと沈む。そこで今、自身が必要だと思う音楽は…。



雨が降るといつも気が沈む
服が濡れたり頭が痛くなったり用事がなくなったり
5月になると梅雨に入る、夏が大好きな自分からしたら、「そんなのいいから早く夏来いや!」の部分でしかなかった
 
ネットでは ずっと誰かと誰かが喧嘩しあってそれにみんな“いいね”をつけあってた
全くもって具合の悪い時代になったもんだなぁとおもう
 
大きな声で曲がった正義を歌う人
 
冷笑しながら誰かを馬鹿にしてる人
 
もう飽き飽きしてる、ただでさえ雨が降るこの時期に全くもって気が滅入る
バイトすら受からず生活の足取りも重い
 
こんな時代にどんな音楽があればいいのだろうと考えることが多くなった
自分が学生の頃は、ただただ憧れが輝いてる姿を見て、尊敬して熱狂して自分を重ねていた
 
心はずっとライブハウスのフロアにあって
なりたい自分になんてよくわからないままで
ただ大事な人と酒を組み交わせれば十分だなってままで
 
そう考えると鉄風東京を好きでいてくれてる人たちにもきっと自分と似ているところがあって共感する楽しいことや悲しいことがあるのか、と今になって腑に落ちた
 
僕らの幸せや悲しみは目の前にあって、ネットのいざこざの中には僕らの心の余白に入るべき話などひとっっっつもないのだ
 
ただただ、それだけだと思う
お互いめんどくさい時代に生きたもんだなぁとも思う
どうせどの時代でもそうだと思うんだけど
 
大事なものはずっと目の前にある
誰かの悪意にいらつくよりも雨で気が滅入ってるなんてことのほうがよっぽど人間だなって思い始めた
 
そんなことを考えて「さみだれ」と言う曲を書いた
自分の生活の中に自分の心の起伏は完成されていて、悲しいも嬉しいもすべて自分のものでいいんだって思いながら書いた曲
 
たいして悪くない体調でライブをキャンセルして希少性を上げる奴らより
喋ったこともない人の写真を使って音楽の楽しみ方わかってないとか言う奴らより
 
僕らは目の前の幸せと悲しみで十分なんだ
雨に何かを感じたり悲しめたりする人へ
この音楽を このバンドを
 
<鉄風東京・大黒崚吾>



◆紹介曲「さみだれ
作詞:大黒崚吾
作曲:大黒崚吾