死ぬほどあいたいから、だからあいに行くよ

 2025年5月28日に“SIX LOUNGE”が新EP『more than love』をリリースしました。6月からは同EPを引っ提げた全国6都市をまわるツアー『SIX LOUNGE “Do You Love Me?” TOUR』も始まり、最終日にはバンド初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンを予定。ぜひ、こちらも併せてチェックを!
 
 さて、今日のうたではそんな“SIX LOUNGE”のナガマツシンタロウによる歌詞エッセイを3週連続でお届け。第2弾は収録曲「死ぬほどあいたいから、だからあいに行くよ」にまつわるお話です。弱音は吐けない、ミスもできない社会のなか。<ひとりにして ひとりにしないで>を繰り返しながら生きているあなたへ。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。


切れるというより、溺れていく。


タクシーの窓に流れる夜景を眺めながら、これからこの凶暴な心を抱きしめてくれるはずの天使に、なんて伝えようかと、曖昧で、いい感じの理由を探していた。
 
 
気がつけば悲しい歌ばかり聴いている。
楽しそうな奴を見ると惨めな気分になるから、下ばかり向いて歩くようになった。それなのに僕はよく転ぶ。
社会はいつも弱音を吐かせてくれない。
当たり前の事を当たり前にできる。それが普通なんだって、あいつら簡単に言うから、言い返せなくて、愛想笑いした。
 
怖がりで、寂しがり屋。ひとりになりたい。だけど、ひとりになりたくない。正直もうよくわからない。何もしたくない。自分だけじゃ世界は変えられない。大人になって気がついた。
違う、言い聞かせて逃げた。
 
酔っ払うと「死にたい」が口癖になる。
かまってほしい、気にかけてほしい。どうせこんな汚い街なんだから、僕が吐いたところで何も変わらない。
朝、目が覚めると腹がへっている。恥ずかしいくらい腹いっぱい食べる事ができる。
この体はしっかり生きたがっている。
 
24時間ずっと監視されているような気がする。さっき蒲田で拾ったこのタクシーの車内でもそうだ。バックミラーで運転手がこちらを見ている。行動すべてが記録されていく。増える、増える、増える、増え続ける。どこを見てもカメラが、まばたきしてる。
 
いつからだろう
僕らの生活にミスが許されなくなったのは。
 
深夜2時すぎ。タクシーは東京の街へゆっくりと沈んでいく。もう帰れなくてもいい。社会に戻れなくていい。たとえ天使がまぼろしでも、僕は騙されたままでいい。都合のいい解釈をして、そうやって、また大人になっていく。流されて、溺れていく。
 
明けない夜はない?
 
うるせえ
 
うるせえ、
 
 
このうそつき。
 
 
<SIX LOUNGE・ナガマツシンタロウ>



◆紹介曲「死ぬほどあいたいから、だからあいに行くよ
作詞:ナガマツシンタロウ
作曲:ヤマグチユウモリ
 
◆新EP『more than love』
2025年5月28日発売
 
<収録曲>
01 天才になって
02 どん底
03 You&I
04 死ぬほどあいたいから、だからあいに行くよ
05 グロいラブソング