若さがいつか消える事解ってる、言われなくとも私たち馬鹿じゃない。

 4月12日に“GLIM SPANKY”がミニアルバム『I STAND ALONE』をリリースします。ボーカルの松尾レミは今作について「音楽やカルチャーに対しての「好き」がたくさん詰まったミニ・アルバムです。大好きなサイケデリック感や文学やアートの断片を、今までより少し深い所から顔を出させました。心から自分達らしい作品になったと思います」とコメント!今日のうたコラムではそんな“好き”が詰まったアルバムから、歌詞の先行公開がスタートしているリード曲「美しい棘(いばら)」をご紹介いたします。

十字架の見える窓で風が遊ぶ度プリーツを揺らすよ
誰も邪魔をしないで わたし今が全てだから
儚く綺麗な時 大人には解んないでしょう

棘に刺さりながら 少女は今
深い傷を増やして喜びを知っていく
今までとなりに居たあなたから手を離せば最後
もう知らぬ人
「美しい棘」/GLIM SPANKY

 GLIM SPANKYというユニット名は“GLIM(=灯火、かすかな光り)”という幻想的なイメージと“SPANKY(=平手打ち)”という攻撃的なイメージのどちらも兼ね備えた音楽性を表した造語。新曲「美しい棘」の場合は、“GLIM”サイドの世界が見える歌詞ですね。きっと<十字架の見える窓で風が遊ぶ度プリーツを揺らす>ような、儚く綺麗な一瞬はすべて、大人になる前の少女にとって宝物なのでしょう。しかし<棘に刺さりながら 少女は今 深い傷を増やして喜びを知っていく>とはどういう意味なのでしょうか。その答えは歌が進むにつれ、見えてきます。

教室を抜け出して見上げた空はどんな青よりも鮮やかで
何にも知らずに笑える二人 春の夢のようね
あなたと一緒だからわたしも生きてゆける

季節を駆け抜けゆく 少女はただ
香る草の匂いも忘れたくはなかった
いつかはこんな事を思い出す時が来るのかなって語りあっている

若さがいつか消える事解ってる
言われなくとも私たち馬鹿じゃない
だけど血を流しても噛み締められないのは
ああ憎いもんだわ 本当知りたいだけなのに
「美しい棘」/GLIM SPANKY

 まず彼女は、大人になって失う何かがあることをちゃんと知っているんです。<若さがいつか消える事>=“少女時代の終わり”を意識しているからこそ、誰にも邪魔をされたくないくらい<今が全て>なのです。<何にも知らずに笑える>無邪気な時間も、<あなたと一緒だからわたしも生きてゆける>真っ直ぐな気持ちも、すべて春の夢と同じ。手を離せば最後で、いつか醒めてしまうもの。その時が来れば“わたし”も“あなた”も今までとは<もう知らぬ人>のように大人になってしまう。それでも、この時間の何もかもを“忘れたくない”…という切々とした想いが込められているように感じます。

痛みを隠しながら 少女は今
傷を治せる愛を少しずつ知っていく

じゃあまた明日ねって言えること
それだけでほら全部 暖かいこと

棘に刺さりながら 少女は今
深い傷を増やして喜びを知っていく
今までとなりに居たあなたから手を離せば最後
そう魔法の様で
ふと気付けば最後 もう知らぬ人
「美しい棘」/GLIM SPANKY

 しかし、彼女は大人になることを拒んでいるわけではなく、むしろ大人になっても携えてゆくべき“大切”を知るために今を生きているのでしょう。そしてその“大切”こそが、<傷を治せる愛>の存在。つまり<棘に刺さりながら 少女は今 深い傷を増やして喜びを知っていく>というフレーズは、どれだけ棘に刺さって血を流しても同時に、深い傷の数の分、それを治せる“愛”を知ることができる喜びがあるのだという意味なんですね。少女がいつか大人になっても、その<傷を治せる愛>の存在は必ず、彼女を支え続ける、忘れられない“大切”になるのではないでしょうか。
 
 ずっと子どもでいたいと思っている方にも、早く大人になりたいという方にも、すでに少年少女時代のことは遠い昔だという方にも、何か伝わるものがある「美しい棘」。MVもすでに公開されておりますので、是非、アルバムに先がけて歌詞と共にその世界観を味わってみてください。

◆ミニ・アルバム『I STAND ALONE』
2017年4月12日発売
初回限定盤 TYCT-69115 ¥2,700+tax
通常盤 TYCT-60098 ¥1,800(+tax)

<収録曲>
1.アイスタンドアローン
2.E.V.I
3.Freeder
4.美しい棘
5.お月様の歌