前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は、最新曲限定ランキングを分析してみた。ここでいう"最新曲"とは、各アーティストの最新曲という意味ではなく、リリースから間もない、具体的にはCD発売が4月20日以降の新しい楽曲を指しているのでご注意いただきたい。
 第2回の「旧作ランキング」でも触れたように、歌詞検索ではCD発売がかなり前のものでも、何らかのキッカケがあれば上位入りしやすく、またGReeeeN「キセキ」(今月4位)やいきものがかり「ありがとう」(今月23位)のようにスタンダードとして定着すると、ずっと上位入りするという現象もしばしば見られる。それでは、その逆に新しい楽曲ではどんなものが歌詞検索の上位となっているのだろうか。
第22回:最新曲限定ランキングTOP15 (2011年5月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル アーティスト タイアップ 発売日
1位
3
100.0 かぞえうた Mr.Children 配信限定
2位
6
44.9 ラブレター。〜いつだって逢いたくて〜 ソナーポケット NTV系音楽番組
『Happy Music』など
2011.4.27
3位
8
39.5 Esperanza 西野カナ 2011.5.18
4位
20
31.0 CORE PRIDE UVERworld MBS・TBS系アニメ
『青の祓魔師』
2011.5.11
5位
24
27.2 Brave ナオト・インティライミ 2011.4.20
6位
37
22.9 Dear 中島美嘉 松竹系映画『八日目の蝉』 2011.4.27
7位
48
19.4 舞い桜 シクラメン 2011.4.20
8位
60
17.3 T.W.L 関ジャニ∞ ANB系アニメ『クレヨンしんちゃん』 2011.4.20
9位
75
15.2 ひとりさみしく ShaNa TX系アニメ『FAIRY TAIL』 2011.6.8
10位
81
14.9 MR.TAXI 少女時代 2011.4.27
11位
96
13.8 ハルカ SCANDAL ワーナー・ブラザーズアニメ映画『豆腐小僧』 2011.4.20
12位
136
11.2 イエローパンジーストリート 関ジャニ∞ 東映系アニメ映画
『クレヨンしんちゃん』
2011.4.20
13位
146
10.7 君の笑顔 奥華子 2011.6.22
14位
149
10.6 フレンズ Happiness 2011.4.27
15位
154
10.5 I loved you feat. HIROKO WISE 2011.4.27
次点
168
10.1 いとしき日々よ 平井堅 TBS系ドラマ『仁-JIN』 2011.5.4
次々点
169
10.0 それでも信じてる FUNKY MONKEY BABYS ANB系ドラマ『アスコーマーチ』 2011.6.8
※CD発売が4月20日以降のものの中から歌詞検索上位曲をピックアップした。

 1位は、現在のところCD発売が未定のMr.Children「かぞえうた」。本作は、東日本大震災支援のチャリティーソングとして4月4日に急遽配信限定でリリースされた楽曲で、"曲を作って人を感動させるという行為も、この災害を前に不純に思えてしかたなくて、どうしたらいいのか何日か悩んでいた"という公式のコメントにも大きな共感を得た。ap bankなどこれまでの地道な支援活動を知っていれば、"不純"に思えないものだが、ここまで説明しないと心なき誹謗中傷が起こってしまう、というのも現代の哀しい一面も垣間見える。それにしても、Mr.ChildrenのCDシングルは08年9月の「HANABI」から止まっており、以降のシングルはいずれも配信限定となっている。90年代からパッケージの魅力を牽引してきた彼らだけに、その動きは業界全体にも影響を与えそうだ。

 2位はソナーポケットの新曲で、第20回「数字うたTOP15」でランクインした2曲でそのシンプルでハートフルな歌詞が浸透し、上位常連となったようだ。彼らがORANGE RANGEやAqua Timezが築いてきた男の泣け歌路線を継承していくのか注目したい。ちなみに、アルバムではORANGE RANGEやAqua Timezと同様に、よりテクニカルでファンキーな楽曲も披露している。そういえば数字うたではRakeの「100万回の「I love you」」もヒット中。そろそろどこかの番組が"今年は数字うたに注目!"という特集をしてくれないか期待している(そうすれば、当コーナーの読者の皆さんが、最もトレンディになるので(微笑))

 ランキング中のタイアップを調べてみると、TV関係が4作(次点、次々点を含めて6作)、映画が3作で、やはりCD発売前からお茶の間で楽曲が流れるものは歌詞検索にも繋がりやすいことが分かるが、その一方でノンタイアップ曲が過半数となっていることも興味深い。90年代と比べるとCDランキング上でもヒット曲のタイアップは減っているが、それはジャニーズやAKB関連などアイドルグループの上位入りが顕著となっていて、歌詞検索で人気のノンタイアップ・アーティストとはやや異なっている。歌詞検索上位のノンタイアップ組を具体的に見ると、震災復興への関心と大御所感で上位のMr.Children、同年代女性の憧れである西野カナ、"お祭り男"として認知を高めているナオト・インティライミ、"ポスト・ファンモン"の座を狙えるシクラメン、K-POPのTOPグループにいる少女時代、歌詞での評判が常に高い奥華子、EXILEの妹分となる7人組のHappiness、女性アーティストとのコラボが人気の男性ラッパーWISEなど、ヤング層に人気のアーティストという共通点以外は、ジャンルも経歴もバラバラだ。

 つまり、CDや着うたよりも、よりリベラルな環境で、人気曲をいち早く知ることが出来るというのが歌詞検索ランキングの一つの特徴ではないだろうか。確かに、コアファンに向けてCDの初回盤の種類を増やしたり、イベントの回数を増やしたりすれば露骨なまでにCDランキングは上がるが、歌詞検索ではより幅広いリスナーに関心を持たせることがポイントとなっており、それぞれのヒットの意味は大きく異なっている。ヒットの仕方と作品の優劣は決して比例するものではないが、少なくとも歌詞検索で上位となれば、そこから大衆に広がりうる可能性は十分にあるのだ。以上、歌詞検索で人気の最新曲は、多彩な顔ぶれとなることが分かった。このようなランキングが、CDランキング並みに多くの人に注目されるようになれば、より大衆的なヒット曲が増えるのではないかと期待している。




かぞえうた
Mr.Children

ラブレター。
〜いつだって逢いたくて〜
ソナーポケット

Esperanza
西野カナ

 仙台のヒップホップ・ユニット、LGYankeesの妹分として、6月のアルバムデビューが決まっている女性ボーカリスト。"女性R&B"、"逢えない"、"切ない歌声"、"バラード"、とヒットを狙いまくったような要素がてんこ盛りで、本当にすべて彼女が自らベストなものとして選んだのか、それとも様々な周囲の配慮からこの路線を選んだのか、筆者が知る由もないが、それでも食傷気味になるほど数多い同路線の中で、頭抜けているのはやはりキラリと輝く何かがあるのだろう。実際、他の"泣け歌"女性ボーカルと比べると、声の安定感と透明感が抜群なので、今の時代こそ必要とされる応援ソングを歌ってもらえれば嬉しい。東北を拠点とするレーベルに所属するだけに、真摯なメッセージを届けられるだろうから。


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 
今月はアーティスト別の検索上位で"歌ネット・ルーキー"がいない為、楽曲別の検索でロングヒットしている「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー」を歌うあやまんJAPANに注目した。
 彼女たちは、2009年頃に結成された自称"岡田JAPAN、原JAPANに次ぐエンターテイメント集団"だそうで、TV等では主に女性3人が出演している。股間、お尻、おっぱいネタを中心とした宴会芸で、バラエティー番組等で徐々に人気を上げ、昨年12月にはCDデビュー。CDではオリコン最高位42位とあまり目立たないが、着うたでは特に日本テレビ『ショーバト!』にてオリエンタルラジオ藤森と組んだ合いの手で紹介されることでレコチョクでは週間TOP3入り、フル音源で10万ダウンロードを突破するほどの人気。"ニンニンニン"、"ぽいぽいぽいぽい"、"しゅしゅぽぽ"など耳から離れなくなるフレーズが多く、その点ではEXILE「I Wish For You」やKARA「ミスター」にも匹敵するほどの中毒作用あり。他の追随を許さぬ存在なので、第2弾のヒットが出ることを祈りたい。





つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic。
5月13日にシングル「カルナバル〜禁じられた愛〜」でデビューの男性7人組のDIAMOND☆DOGSの存在が気になっています。"超装飾系"なるキャッチコピーから軟派なアイドルグループかと思いきや、激しさと美を兼ね備えたダンサー5人と、熱唱中心のツイン・ボーカルで、EXILEとCHEMISTRYとGLAYを混ぜてダンスに宝塚風も取り込んだようなグループ。今後、男性グループも拡散していく予感。