前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は、タイトルの文字数をランキングしてみた。
最近、アーティスト名やタイトル、バージョン名の長いものが多くなっている気がする。バージョン名で例を挙げてみると、あるアーティストは、盛り上がる部分をただ"サビ"と呼ぶのではなく、"感動の大サビ"や"壮大ラストサビ"など、より心理的効果を狙ったものが増えているのだ。これは、溢れる情報の中で、限られた1つの枠にどれだけ多くの情報を発信するかが重要視されているからだろう。(勿論、その路線以外でも十分に実力を発揮するアーティストもいる訳で、必ずしもこれがヒットの絶対条件ではない。)

第34回:人気歌詞のタイトル文字数ランキングTOP15 (2012年5月:2012年4月のデータより分析)
テーマ
順位
文字列バイト数 歌詞
順位
アクセス
指数
楽曲名 アーティスト CD発売日
1位 40 65 21.7 ワイはワイワイでいいワイ〜おまえワィ?〜 GReeeeN 2012.4.25
2位 36 21 38.9 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」 ももいろクローバーZ 2012.3.7
2位 36 34 32.3 ラブレター。〜いつだって逢いたくて〜 ソナーポケット 2011.4.27
2位 36 57 23.4 ベイビー・アイラブユー(English Ver.) シェネル 2011.7.20
5位 33 24 38.1 ヒミツ 〜キミのそばに居るために〜 Juliet 2012.5.16
6位 30 1 100 月火水木金土日。〜君に贈る歌〜 ソナーポケット 2012.4.25
6位 30 11 54 ミセナイナミダハ、きっといつか GReeeeN 2012.2.29
6位 30 66 21.1 バーベル〜皇帝の新しい服ver.〜 UVERworld 2012.3.28
9位 28 58 23.4 ズルしないでちゃんと愛してよ 果山サキ 2012.5.9
9位 28 54 24.8 「でも…。でも…。でも…。」 ソナーポケット 2012.1.25
9位 28 78 19.3 ピンク帽子の“ドレミファソ” MINMI 2011.8.24
12位 27 36 31.8 ボクでいいよね 〜愛のうた〜 LGYankees 2012.2.15
12位 27 97 17.2 HaruHaru -Japanese Version- BIGBANG 2011.12.14
14位 25 10 58.1 好きだよ。〜100回の後悔〜 ソナーポケット 2011.1.26
15位 24 28 34.8 世界で一番ステキな君へ。 ソナーポケット 2012.1.25
15位 24 90 17.9 恋ノ歌〜キミに出逢えて〜 三浦サリー 2012.4.11
※歌詞検索の上位100曲の中から、タイトル文字のバイト数順に並べてみた。
 但し、タイトル内のフィーチャリング・アーティストを除いてカウントした。

 さて、人気曲中の文字バイト数1位はGReeeeNの「ワイはワイワイでいいワイ〜おまえワィ?〜」の40バイト。6位にもヒット作「ミセナイナミダハ、きっといつか」がランクインしている彼らは、6月27日にアルバム『歌うたいが歌うたいに来て 歌うたえと言うが 歌うたいが歌うたうだけうたい切れば 歌うたうけれども 歌うたいだけ 歌うたい切れないから 歌うたわぬ!?』をリリースするので、今年は長文タイトルのアーティストとして話題になりそう。これまで「愛唄」「キセキ」「遥か」と短文タイトルのヒット曲が多い彼らだけに、新生GReeeeNとして新たなファンを取り込むかも。(但し、GReeeeNがトラック型パッケージで出した3枚組LIVE風CD、各地方でデカデカと余っているので、あれを回収するなりしなければ、イメージを払拭できない気もする。。。)

 長文タイトルの上位16曲のうち、約1/3にあたる5曲がソナーポケットというのも面白い。サブタイトル(サブタイトル・ソングTOP10)や、句読点のフックが多い分、文字数も多くなるのだが、彼らの場合は、"いつだって逢いたくて"や"君に贈る歌"などその増やした文字に、女子の胸キュン要素を的確に高めているのが大きなポイント。また、それらがほぼ日本語というのも、彼らの真っ直ぐなメッセージ性をよりダイレクトに伝えている。

 全体を見ると、他にもシェネル、Juliet、果山サキ、LGYankeesなど、シングルCDよりもダウンロードヒットが多いアーティストが目立つ。これも、胸キュン・メッセージが重要なダウンロード系ならではの傾向だろう。そんな中でももいろクローバーZが2位にランクイン。アイドル勢では伸び悩みがちな歌詞人気でも総合21位と、上位入りを果たすようになった。女性アイドルでは、キュートで爽やかなアイドルらしいタイトルが多いなか、彼女たちの場合は、その異質ぶりを示すのにこの長文タイトルが奏功しているようだ。ちなみに、CDショップ大賞受賞以降は、シングル、アルバム共に旧作がこぞって再浮上。また、ダウンロードでも、従来の急落型からロングセラー型に変わってきたので、これは次回作で大化けする可能性がある。07年〜08年頃のPerfumeのパターンとなるか、今から楽しみだ。

 かつて1993年の前半にビーイング系アーティストがB'z「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」、DEEN「このまま君だけを奪い去りたい」、WANDS「愛を語るより口づけをかわそう」、大黒摩季「別れましょう私から消えましょうあなたから」、T-BOLAN「おさえきれないこの気持ち」と、こぞって長文タイトルを付けることで、オリコン・チャート上位の文字密度が一気に上がり、そのブランド力を確固たるものにしたことがあった。ソナーポケットをはじめダウンロード系アーティストが上位になりやすい歌詞検索ランキングではそんなことが見えるかもしれない。業界全体の起爆剤として期待される「ももクロ」も含め、今後の人気歌詞のタイトルの動向に注目しておきたい。




ワイはワイワイでいいワイ
〜おまえワィ?〜 / GReeeeN



猛烈宇宙交響曲・第七楽章
「無限の愛」 / ももいろクローバーZ



ラブレター。〜いつだって逢いたくて〜
/ ソナーポケット
 

 昨年8月に発売されたカバーを中心としたアルバム『THE HEART SONG COLLECTION』のラストに収録されていたオリジナル曲。東日本大震災の前日に、我が子が通う園児たちや先生、ママたちに贈るために作ったということで、歌詞もプライベートな内容となっているが、そのリアリティーが特に子供を持つ女性ファンの間でも話題となっていた。それが、この4月に『金スマ』に出演して歌った後、ダウンロード・シングルと歌詞検索が一気に急上昇し、今回のランキングでも上位入りすることに。もともと、レゲエやソカなど素人が歌うのに難しい難曲を歌いこなすスキルでは定評があったが、ここ数年はスウィートなラブソングを中心に歌詞人気も上昇、さらにこの曲でより穏やかで世代を超えた人類愛の歌まで支持されるようになった。そういった歌詞を発表すると、アーティストの延命化に繋がる、ということが実証された好例だろう。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
 今月は、ルーキー第3位で昨年8月にCDデビューを果たしたKis-My-Ft2に注目。・・・と言っても、既にシングル3枚、アルバム1枚がすべてオリコン1位となっているので、筆者が今さら紹介するまでもないだろう。しかし、アイドルの場合、(AKB48、SMAP、嵐などの)国民的レベルに認知されなければ圧倒的不利になってしまう歌詞検索の世界で伸びてきたということは彼らもまた国民的スターになる兆しが現れてきたということだ。
 彼らの特長としては、初回盤Bにのみ付いている特典CD収録の3曲が人気であること。そんな人気曲を、一部のコアファンしか入手できないというのは何とも勿体ない気もするが、それら3曲はいずれも、初期のKinKi Kidsが得意としてきたような、どこか背徳の香りがする切ないラブソングだ。アルバムの中ではラップ有り、激しいダンス・ナンバー有りと、デビューが遅かった分、その多才さを発揮しているが、ファンからはポストKinKi的な楽曲が望まれている、という現れかもしれない。現在のところ、シングルのカップリングの中には人気曲がないようなので(カップリングに人気曲が多いのも国民的スターの必要条件)、まずはカップリングからでも、その"耽美な王子様"系を模索していくことを期待したい。




順位 占有率 楽曲 初収録CD 発売日
1 17.3% SHE! HER! HER! 3rdシングル 2012.3.21
2 16.1% Everybody Go 1stシングル 2011.8.10
3 5.0% Girl is mine 1stアルバム『Kis-My-1st』 2012.3.28
4 4.9% We never give up! 2ndシングル 2011.12.14
5 4.6% Good-bye, Thank you 1stアルバム『Kis-My-1st』特典CD 2012.3.28
6 4.0% Good night 1stアルバム『Kis-My-1st』 2012.3.28
7 4.0% タビダチノウタ 1stアルバム『Kis-My-1st』 2012.3.28
8 4.0% 祈り 1stアルバム『Kis-My-1st』特典CD 2012.3.28
9 4.0% Smile 1stアルバム『Kis-My-1st』特典CD 2012.3.28
10 3.7% Take Over 1stアルバム『Kis-My-1st』 2012.3.28
         
 


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 これまで、ミドル〜シニア向けのCD企画のお話(今後も続きますが(汗))ばかりしていたので、すっかり"ナツメロの人"と思われがちなのに気付いたので、これからは注目している新人や若手に触れるようにします。今、注目しているのは2011年デビューで4人組バンドのHeavenstamp 。ストレートな女性ボーカルはアクティブなロックとの相性もあってストレートで気持ちいいです。その一方で浮遊感のあるアンビエントな楽曲では、歌詞を考えさせられる深いものも多い。アイドルのように今の時流に乗りにくいかもしれませんが、これからもこういった熱量の多いアーティストを応援していきたいです♪