前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、今年のNHK紅白歌合戦にも日本レコード大賞にも呼ばれなかった楽曲を分析してみた。

  ちなみに、ちょうど1年前にも同様のテーマの紅白限定で非出場アーティスト人気曲を分析しているのでご参考いただきたい。実は、業界内でも珍しく(?)この時の分析が面白かったと多数言われたことで調子に乗ってみた(笑)のもあるし、さらに今回はレコード大賞もからめて、より行政的な枠組みを取っ払った人気曲を見つけたいと思い、再度分析したいと思ったのだ。
第65回:「紅白&レコ大」非出場アーティスト人気曲TOP15
(2014年12月:2014年11月のデータより分析)
テーマ
順位
今月
順位
アクセス指数
タイトル
アーティスト
発売日
1位 1 100.0 Happiness シェネル 2014.11.19
2位 2 37.9 Silly 家入レオ 2014.11.19
3位 4 24.0 花束 back number 2011.6.22
4位 7 17.0 Let It Go イディナ・メンゼル 2014.5.3
5位 11 13.9 あなたへ贈る歌 erica 2014.5.21
6位 16 11.2 Enigmatic Feeling 凛として時雨 2014.11.5
7位 17 11.2 #ヤッチャイタイ MINMI 2014.7.23
8位 19 9.6 SAYONARAベイベー 加藤ミリヤ 2008.9.24
9位 20 9.5 高嶺の花子さん back number 2013.6.26
10位 21 9.3 奏(かなで) スキマスイッチ 2004.3.10
11位 26 8.9 それぞれ歩き出そう 阿部真央 2014.10.22
12位 30 8.3 ひまわりの約束 秦基博 2014.8.6
13位 32 7.9 BRIGHTER DAY 安室奈美恵 2014.11.12
14位 35 7.8 私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない〜We Are Never Ever Getting Back Together(Japanese Ver.) MACO 2014.7.23
15位 40 7.1 キセキ GReeeeN 2008.5.28
次点 42 7.0 網走番外地 高倉健 2013.4.17
※2014年の『NHK紅白歌合戦』出場者および『輝く!日本レコード大賞』の金賞受賞および新人賞受賞のアーティスト以外から人気曲を抽出した。
(日本レコード大賞の企画賞や功労賞などメイン以外の受賞者は含むこととする。)

 1位はシェネルのフジ木10ドラマ『ディア・シスター』主題歌。ドラマ自体はあまり話題にはなっていないが、それでもシェネルのこの楽曲は、歌声からも歌詞からも幸せを願う気持ちがビンビンに伝わってくる。ダウンロードでも、ここ数週間TOP級を維持しているが、クリスマス時期までキープするはず。

 2位は、家入レオの8thシングルで、こちらはTBS金10ドラマ『Nのために』主題歌。シェネルとは対照的に、歌詞も歌声もヒリヒリするロッカ・バラード。しかし、ドラマの内容とマッチしていることもあって、ダウンロードでは自身初の週間1位を獲得し絶好調だ。デビュー年の大きな期待を背負っていた分、活動3年目ちょっと地味に映るかもしれないし、実際アイドル勢に押されてデビュー以来継続していたオリコンTOP10入りを逃してはいるが、本楽曲自体は歌詞検索でもダウンロードでも大いに支持されており、「こういうヒット感がもっと他のメディアにも伝播すればいいのに・・・」と、いつもながら思う。(知らない人がこの曲の魅力を知らないままでいるのが、あまりに勿体ない!)

 その他、TOP15中9曲が女性ソロを占めており、女性アイドルグループのみならず、女性ソロの楽曲でも魅力的なものが沢山あることが分かる。また、男性ソロの秦基博「ひまわりの約束」はダウンロードでは4か月以上TOP10前後をキープ、カラオケでは今や週間3位に上りつめる国民的ヒットながら、紅白からもレコ大からも放置されているのが不思議。紅白は“口パク合戦”ではなく“歌合戦”なのだから、ここに挙がった女性ソロや秦基博、さらに常連化していたのに今年落選させたaikoやドリカム、コブクロ、ゆずなど歌声で魅了できる数々のアーティストの出場も、もう少し考慮して良かったのではと思う。勿論、そんな中で今年働きまくったMay J.を正当に評価したことや、ベテランの長渕剛や中島みゆきを呼び寄せた点は凄いことだと素直に思う。

 昨年は、“SEKAI NO OWARI「RPG」が歌詞検索では既に大人気なのに、紅白出場していないとはあまりに不自然”とボヤいていたが、今年は見事に紅白にもレコ大にも出場。そうして、その役まわりは、今年back numberとなっているようだ。セカオワ、ワンオク、RADWIMPSと、これまでも、歌詞検索でのフィーバーぶりの1〜2年後、CDやダウンロードで本格ブレイクするバンドが何組も出ているので、back numberもそれに続く可能性が高い。しかも、彼らの場合、ロックフェスもホールLIVEも似合うバンドなので、例えば長年人気である「花束」を紅白で歌ったりすれば、きっと幅広い年代に支持されるスタンダードに化けるはずなのだ。(これは確信を持っています!)

 以上のように、今年もこのランキングは様々なタイプの人気曲が出そろった。「紅白もレコ大も興味なく、J-POPは終わった」と嘆く前に、このランキングからお気に入りの1曲を見つけていただければとても嬉しい。




Happiness / シェネル

Silly / 家入レオ

花束 / back number

 85年山梨県生まれの女性シンガーソングライターが13年1月に当時配信限定で発表したラブ・バラード。ダウンロードや有線リクエストの瞬間的な順位は、正直な話、コアファンなりレコード会社なりが“頑張れば”(笑)なんとでもなるものだが、この楽曲がYouTubeで350万回以上も再生されているというのは、それだけ幅広く気にされているという紛れもない事実だろう。実際に聴いてみると、全体に伸びやかに歌いつつもちょっとあどけなさの残る歌声や、「なんのとりえもない私だけど/あなたに似合う人になりたい」という弱い自分と強くありたいと願う気持ちを併せ持つ歌詞が印象的で、「会いに行けるアイドル」じゃなくても、楽曲だけで十分親近感を持つチカラがある。実際、今年5月に発売された1stアルバム『告うた〜あなたへ贈る歌〜』は、オリコンアルバム最高位85位、累計0.2万枚とメディアへの露出がかなり限られている中で健闘した。言葉のセンスが良いので、今後は、恋愛を離れて日常を応援する楽曲からも代表曲が生まれることを期待したい。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


  今月は、10位の防弾少年団に注目。彼らは、全員17才〜21才と若い韓国の男性グループで、ダンスとボーカル、そしてラップを得意としている7人組。韓国では13年6月にデビューし、日本では今年6月にシングル「NO MORE DREAM -Japanese Ver.-」し、今回11月にリリースした3rdシングル「DANGER〜Japanese Ver.〜」の好調ぶりから全体の歌詞検索が伸びた。ビジュアルの上品でクールな部分や楽曲の切ない部分を前面に押し出す韓国男性グループが多い中で、彼らは他のグループと比べると徹底的にワイルド。ジャケットも笑顔のものがなく、逆に大半がガンを飛ばしている(汗)。それでいて、各シングルには個別握手券などアイドルとしてのサービス精神旺盛で、その楽曲のワイルドな部分と、握手会でのファミリアーな部分のギャップに萌えるファンも多そうだ。

実際、オリコンでの累計枚数は、1st=3.5万枚、2nd=4.4万枚、そして3rd=たった1週で4.9万枚(累計5万枚突破は確実)と、伸び悩む韓国グループが多い中で上り調子。(ちなみに、CDの種類は各シングル3種類で、別段鬼商売化している訳ではない。)アイドル性と音楽性を両立させている若手は、K-POPのみならずJ-POPの範疇でもかなりユニークなので、今後、より広い音楽ファンも巻き込めるかが更なるブレイクのカギとなりそうだ。

順位 アクセス
比率
タイトル 日本版初収録
発売日
1 41.3% DANGER 〜Japanese Ver.〜 3rd Sg 2014.11.19
2 17.4% BOY IN LUV -Japanese Ver.- 2nd Sg 2014.7.16
3 11.7% NO MORE DREAM -Japanese Ver.- 1st Sg 2014.6.4
4 7.6% 進撃の防弾 -Japanese Ver.- 1st Sg c/w 2014.6.4
5 6.4% MISS RIGHT -Japanese Ver.- 3rd Sg c/w 2014.11.19
6 5.5% いいね! 1st Sg c/w 2014.6.4
7 5.5% JUST ONE DAY -Japanese Ver.- 2nd Sg c/w 2014.7.16
8 4.6% N.O -Japanese Ver.- 2nd Sg c/w 2014.7.16
※日本デビュー以降の8曲を対象とした。


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析が評判となり、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 12/3に企画・選曲・解説を手がけたコンピレーション『熱唱!女(オトナ)の恋唄』が発売されます。こちら、収録曲が、「また君に恋してる」「恋におちて」「時の流れに身をまかせ」「会いたい」「難破船 (2007 Ver.)」「百万本のバラ」「夜明けのスキャット」「シルエット・ロマンス」「ノラ」「無言坂」「ラヴ・イズ・オーヴァー」そして水越けいこの「Too far away」といかにも40代・50代の女性方が熱唱なさる楽曲ばかりを演歌・J-POP分け隔てなくオールジャンルで集めております。(実は「激しい愛」や「許されぬ恋」を裏テーマにしております(笑)。)軽くカラオケのレパートリーに加えるもよし、重く今の気持ちを投影するもよし、よかったらご参考ください♪