サイダーとソーダ。普段は気に留めることもないこの二つの飲み物…。

 2019年8月21日に“LACCO TOWER”のメジャー5thフルアルバム『変現自在』がリリースされました。全10曲が収録されている今作。ボーカルの松川ケイスケは、コメント内に「現実の先にある未来、未来のように見える現実なんて、我々はいくらでも変えていける」「大人のロックバンドがひねり出した傑作を、是非ご賞味下さい」と綴っております。

 さて、今日のうたコラムではそんな想いが込められた“変現自在”な最新作をリリースしたLACCO TOWERの松川ケイスケが、ご本人歌詞エッセイを執筆してくださいました!3週連続でスペシャルな記事をお届けいたします。その第1弾に綴られているのは、6曲目に収録されている「炭酸水」についての想い。是非、歌詞と併せてご堪能あれ…!

~M-6「炭酸水」歌詞エッセイ~

サイダーとソーダ。
普段は気に留めることもないこの二つの飲み物。
みなさん違いはご存知でしょうか?

サイダーは、炭酸水に香料・砂糖などを加えた清涼飲料の事を指し、ソーダは水に無機塩類と炭酸ガスを混和させた飲み物の事を指します。平たくいえば、サイダーには甘みがあり、ソーダには甘みがないと言う事。今回、私が作詞した「炭酸水」。敢えて「サイダー」と言う風に読ませています。

この歌詞を作るきっかけとなった出来事がありました。私の古い友人とお茶をしていた際、彼女はおもむろにこういったんです。

「まぁ、私のこの未来(さき)なんてたかが知れてるしさ。」

彼女はもともと東京で飲食店をオープンさせたいという夢を持っていました。高校卒業後に上京し、しばらくは修行も兼ねて飲食店で勤務をしていましたが、うまい話になかなか恵まれなかったり年齢のこともあったりで、夜の世界で働くようになったそうです。ここからは私の想像ですが、座席でお酒の相手をするたび、お酒にソーダを注ぐたび、しゅわしゅわと音を立てて消えていくその泡がまるで自分の夢が一つ一つ消えていくように思って、、、

そんな勝手な想像も相まって、この一言はなぜか私の心の中にいつまでも留まるものとなりました。昔はまるで、湧き出る石油のようにどんどん溢れ出てきた未来への希望。時が経ち、年齢を重ねると、いつの間にか自分自身にバイアスがかかり、なぜか「用意されている」ような地点を「夢」「目標」と言うようになる。選択肢を排除した結果、残ったものなら夢でしょう。でも選ばざるを得ない選択肢から選ぶものは、本当の選択肢なんでしょうか。

出来ない理由は沢山あるけれども、それが原因となってそもそも目指していたもの全てから目を背けるようになっていないでしょうか。残念ながら、皆様に夢を与えるべき存在の「バンド」と言うものもその一つです。色々なしがらみから抜け出せず、諦めという名に蓋をして整えた結果を提示します。勿論それを悪いなんて一つも思いません。ただ、本当にそれが全てを諦めることになっていないか。本当に後悔はないのか。そんな事が心に残ったのです。

彼女は珈琲を飲み干すと、仕事に向かいました。冷えて苦味が残った珈琲を飲みながら、私はなんともいえない気分になったのです。今はいいの、考えたくない。それが彼女の本音だったのかも知れません。正しい事を正しくいうだけで全てがまかり通るなら、こんなに楽なことはないのです。

ただ、それでも、私は音を鳴らす以上、そこに立ち向かわないといけないのではないか。そうすることが、クリエイターであり、表現者である唯一の手段ではないのか。そんなややこしい事を考えながら帰路につき、この曲を書き上げました。

サイダーとソーダ。
普段は気に留めることもないこの二つの飲み物。
みなさん違いはご存知でしょうか?

思い描く未来に対しての自分。それは「甘い」のか「甘くない」のか。今見える「落ち着く場所」って、どちらなんだろう。忘れた夢をお持ちの皆様。ぜひこの「炭酸水(サイダー)」をご賞味ください。

<LACCO TOWER・松川ケイスケ>

【第2弾に続く!】


◆紹介曲「炭酸水
作詞:松川ケイスケ
作曲:LACCO TOWER

◆メジャー5thフルアルバム『変現自在』
2019年8月21日発売
COCP-40914 ¥3,000+税

<収録曲>
1 若者
2 必殺技
3 線香花火
4 泥棒猫
5 地獄且天国
6 炭酸水
7 六等星
8 不機嫌ノ果実
9 永遠
10 夜明前