この文章を読んでいるあなたが何歳だとしても

 2019年8月21日に“LACCO TOWER”のメジャー5thフルアルバム『変現自在』がリリースされました。全10曲が収録されている今作。ボーカルの松川ケイスケは、コメント内に「現実の先にある未来、未来のように見える現実なんて、我々はいくらでも変えていける」「大人のロックバンドがひねり出した傑作を、是非ご賞味下さい」と綴っております。

 さて、今日のうたコラムではそんな想いが込められた“変現自在”な最新作をリリースしたLACCO TOWERの松川ケイスケが、ご本人歌詞エッセイを執筆!3週連続でスペシャルな記事をお届けしております。今回は第1弾エッセイ第2弾エッセイに続く最終回です。歌詞と併せてご堪能あれ…!

~M-1「若者」歌詞エッセイ~

あなたの好きなものを頭に思い描いてください。そしてその事だけを考えている時間を思い描いてください。その事以外何も考えなくていい、何も思わなくていい、そんな時間を。もしそんな事ができるとしたら、これほどかけがえのない時間はないでしょう。この文章を読んでいるあなたが何歳だとしても。

小学生の頃、何になりたかったですか? 中学生の頃、何になりたかったですか? 高校生の頃、大学生、専門学生の頃、二十歳になった瞬間。何を思い描いてましたか? 僕がミュージシャンになりたいと思ったのは高校生の頃。当時バスケットボール部だった僕は、先輩に「文化祭でバンドをやらない?」と誘われました。もちろんオリジナルの曲なんてできるわけもなく、楽器すら触ったことない僕はボーカルとして出演することになりました。

ワラワラと相談を重ねていくうち、L'Arc-en-Cielさんのカバーをすることに決定。僕を含めた四人のバンドメンバーは、学校が終わるとすぐにカラオケやスタジオに通い詰め、何度も何度も練習しました。それはもうHydeさんになりきるくらいの勢いで。バスケットをやることも、勉強することも忘れ、ただただバンドで音を鳴らすのがすごく嬉しくて、自分たちが無敵になったような気がして。もう何度も何度も練習をしていました。

文化祭当日、小さな体育館の前半分くらいが埋まったステージで全部で2曲歌いました。今考えれば、全部で200人程度の観客だったように思います。でも当時の僕には、それは2万人にも3万人にも見えていました。まるで自分がロックスターになったかのように。その時、これをずっとできたら幸せだろうなと。

大人から見ればバカな話です。父親にも、母親にも、もちろん反対されました。男兄弟二人の家庭においては、音楽というものとは程遠く、習い事といえばプールや野球だったこともあったのでしょう。信じられないといった様子で僕の決断に反応していた事を覚えています。半ば勘当にも似たような出立で、僕は東京へと向かいました。

あれから20年ほど経って、僕は今このエッセイを書いています。大阪のホール公演の前日に。LACCO TOWERは16年目を迎え、今も戦い続けています。うまくいく事より、うまくいかない事の方が多いです。それでも今、あの頃と変わらずステージの上で歌っています。ただただバンドで音を鳴らすのがすごく嬉しくて、自分たちが無敵になったような気がして。

あなたの好きなものを頭に思い描いてください。そしてその事だけを考えている時間を思い描いてください。その事以外何も考えなくていい、何も思わなくていい、そんな時間を。もしそんな事ができるとしたら、いや、出来るんです。

色んなしがらみや、毎日の生活の中での「不可能」はあるでしょう。家庭環境、社会環境、やりたい事、好きな事を再びやり続けるのは簡単ではないです。ただ、僕は思います。自分の中の若い感情が死んでいないのであれば、そしてそれを考える時間が幸せなのであれば、絶対に続けるべきだと。その感覚、粒度なんてなんだって構わない。「こうじゃなきゃだめ」なんてあってないような時代です。

あなたはあなたの好きなように。あなたの思うがままに。そう出来るなら、これほどかけがえのない時間はないでしょう。この文章を読んでいるあなたが何歳だとしても。あなたが誰だとしても。

3回に渡ってお届けしたエッセイ。乱文駄文失礼いたしました。夢ならば覚めないでと思えるような人生が、あなたに降り注ぎますように。

<LACCO TOWER・松川ケイスケ>


◆紹介曲「若者
作詞:松川ケイスケ
作曲:LACCO TOWER

◆メジャー5thフルアルバム『変現自在』
2019年8月21日発売
COCP-40914 ¥3,000+税

<収録曲>
1 若者
2 必殺技
3 線香花火
4 泥棒猫
5 地獄且天国
6 炭酸水
7 六等星
8 不機嫌ノ果実
9 永遠
10 夜明前