2021年9月29日に“OKAMOTO'S”が9枚目のオリジナル・アルバム『KNO WHERE』をリリースしました。アニメ『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』ED曲「Welcome My Friend」やドラマ『直ちゃんは小学三年生』OP曲「Young Japanese」、ドラマ『東京怪奇酒』ED曲「Complication」といった楽曲。そして待望の新曲10曲を加えた全17曲が収録されております。
さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“OKAMOTO'S”のオカモトショウによる歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、彼がバンド・村八分に歌詞の影響を受けたときの衝撃と、日本語詞の世界に対して扉を開けた理由。そして今作のラストを飾る収録曲「For You」に通ずる想いです。是非、歌詞と併せてエッセイを受け取ってください。
~歌詞エッセイ:俺とあなたと永遠~
ふとんの中で考える
何か いい事ないかな
明日は何をしようかな
ああ おれはだめだなぁ
村八分というバンドの「どうしようかな」という歌の一節である。俺はその当時、中学の同級生とロックバンドを始めていて、ラモーンズから影響されOKAMOTO'Sという名前で全員苗字を統一でオカモトにして、洋楽ばかりカバーしていた。理由は今思えば、その当時の邦楽の新曲達があまりによくできていて、ピカピカで、なんか造りが良すぎて自分には勿体なく思えたからな気もする。昔の洋楽、所謂クラシックな60'sのロックバンドの音楽はヨレたり曲がったりしながら独特のエネルギーを孕んでいた。うるさすぎるギターも、ズレていくグルーヴも、自分にとっては新鮮で、自分自身を新しく染めてくれているような気持ちにしてくれたのだ。
村八分のこの歌は、そんな捻くれた俺の心に運悪く突き刺さってしまった。なんて酷い歌!まるで小学生の作文のような、なんの内容もないようで直球の真実でしかないその歌詞は、街中で手に入るポップスが歌いたがってる妙に美しい世界とは無縁な、当時の自分にとってあまりにリアルな景色を歌っていたのだ。これでいいのか!いや、これがいいのか!!まさにその瞬間が永遠だった。俺はそこからしばらくの間、村八分のライブ盤に収録されてるMCまで完コピして文化祭で披露するくらいのめり込んだ。
日本語の歌詞を書いてみようと思えたのは、彼らのおかげだ。彼らが現れなかったら、俺はしばらくの間、普段聴く洋楽の中に登場しない日本語の歌詞にリアルを感じることができず、英語で歌詞を書き続けていたかもしれない。改めて実感として、なにかに"感動"することは自分の中の扉を新しく開くこと。日本語詞の世界に対して扉を開けたのは間違いなくあの「どうしようかな」の衝撃があったからだ。
バンドはそこから今日まで止まることなく走って、今や9枚目のアルバムをリリースしようというところまできた。
村八分もいいけど、テイラースウィフトの新譜もいいよね!なんて言えちゃうくらいにはそこから自分の好きと呼べる音楽は拡張され、むしろそのせいで迷子になってしまいそうなほど。
今回、アルバムには17曲収録されていて、バンド史上最長。CD一枚にパンパンに音を詰め込んだ。その最後の最後に作ったのが、「For You」という曲だった。
あなたの人生の1ページに
俺の言葉1つ残せるなら
その為に一生掛けてもいいな
パッと聴いても、まさか村八分に衝撃を受けて日本語詞を書き始めたヤツの書いた歌詞だとは誰も思わないだろう。ただこの歌詞が書けた時、あぁ、俺がやりたかったことって、誰かの心に村八分がくれた永遠を残したかったんだ、それで必死に10年以上も歌詞を書き続けてるのか、と思った。
詰まるところ、何かを作ることに正解もゴールもない。作る本人が敢えてそれを決めて、なんて素晴らしいものが完成したんだろう!と勝手に言うだけだ。俺の場合、お手本にしているというか、1つの正解でありゴールだと設定しているのが、リスナーとして音楽に感動した時のエネルギーや、今回の話で言うと歌詞に感動した時の衝撃の強さなんかである。
すごく抽象的に聞こえるかもしれないけれど、これが1番ブレない。あの時のあの衝撃!ってハッキリ思い出せるもの。それと同等、もしくはそれ以上かどうか。自分の作った歌詞や音楽にそういうハードルを課して作っているのだ。「For You」は、我ながら村八分級にいいセン行ってると思う。
誰かの記憶の中に自分のDNAを残す。生殖本能に近い。社会的な自分の遺伝子を世の中に残したい。そんな欲求が自分にはあるんだ、と気付かされた。
俺の作った歌を誰かが聴く。その人はいつか大人になって、誰かの親になる。その人が、自分の子供に“昔この歌好きだったんだよね”と、その歌を聴かせる。その子供がまた親になった時…と、こうして誰かの心の中に自分が存在してたことを証明し続けたいのである。
これは、俺にとってのあまりにリアルな欲求であり、魚の小骨のように心に引っかかってた気持ちなのに、ずっと上手に言葉にできなかった部分。それでいて、小学生の作文のようなシンプルさ。ダラダラとした説明でオブラートに包んで無い、剥き出しの一言。もうこんなこと言っちゃえるんだ俺、と少し誇らしくなる。
しかし、きっとまだまだやり方があるはず。まだ俺の書ききれてない、心に引っかかった魚の骨は沢山ある気がする。それに村八分だって、まさか何十年の時を経て俺の心に刺さってしまうことなんて予期せず書いた曲だったことだろう。そう思うと、こんな気持ちに気づかず書くものこそ残るような気もしたり…。
何年やっても足りないな。まずは長生きしないと、永遠までの道のりは遠いなあ。
<OKAMOTO'S>
◆紹介曲「For You」
作詞:オカモトショウ
作曲:オカモトショウ・オカモトコウキ
◆オリジナル・アルバム『KNO WHERE』
2021年9月29日発売
初回生産限定盤 BVCL-1174/5 ¥4,840(税込)
通常盤 BVCL-1176 ¥3,630(税込)
<収録曲>
01. Pink Moon
02. Young Japanese
03. You Don't Want It
04. Picasso
05. Blow Your Mind
06. Sprite
07. Star Game
08. Complication
09. Coffee Break
10. Misty(Album Version)
11. When the Music's Over
12. M
13. MC5
14. Band Music
15. Subway
16. Welcome My Friend
17. For You