手紙は言葉よりも言葉なのかもしれない。

 2024年7月5日に“moon drop”が新曲「風のお便り」をリリースしました。同曲はドラマ『焼いてるふたり ~交際0日 結婚から恋をはじめよう~』エンディング主題歌。自身初のドラマタイアップとして書き下ろした楽曲は、“遠く離れた場所にいたとしても、大切な貴方を想う気持ちは風に乗ってお互いの元へ届く。”劇中の2人の歯痒さやもどかしさにそっと寄り添う。全世代共感のラブソングとなっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“moon drop”の浜口飛雄也による歌詞エッセイを2週連続でお届け。第2弾は、新曲「風のお便り」にまつわるお話です。ひとが書く文字から感じる、不思議な力。みなさんもぜひ大切なひとに、今の自分の温度で、言葉を綴って届けてみてください…!



いつからだろう、こんなにも簡単に言葉が届くようになったのは
いつからだろう、こんなスピードで文字を打つようになったのは
僕たちはいつからこの暖かくて素敵な当たり前に慣れてしまったのだろう
 
 
遠い街、違う日々の中で僕たちは今生きている
近くに居た頃は何も感じなかったはずの赤くまん丸な夕焼けも、見つければいつでも貴方に教えたくなる
駅前のパン屋さんが改装を始めていたこと、育てていた植物の新しい芽が出たこと、枯れてしまった葉があること、目玉焼きが上手に焼けたこと、
そんな些細なことをすぐに教えたくなる
 
 
 
夏の暑さにうなだれているとポストに一通の手紙が
少し貴方の香りのする便箋を優しい目で、丁寧な呼吸で、やわらかな指でめくっては読み進めていく
 
人が書く文字には不思議な力があると思う
その人の想いが文字になってその時の温度で真っ直ぐ届く
もしかすると、手紙は言葉よりも言葉なのかもしれない
 
 
読み終えて一息つく
徐にペンを持って机に座る
今度はこっちから想いを飛ばす
こうやって文字を書いていると、その時の言葉に今自分がどれだけの想いを込めたのかが分かる
句読点一つとってもそうだ
想いを書いて「、」を書く
また想いを書いて「。」を書く
自分は今、この点や丸にこれだけの気持ちを込めたんだということに気が付く
そういう、人にしか生み出せないものがきっとあって、人はそれを自分でも知らないところで感じている
 
そういう素敵なものが風に乗って、様々な街を駆け巡って、どの街から入れてもちゃんと貴方の元まで届く魔法のような手紙になる
いつまで経っても書く字は上手くならないけれど
このバランスの悪い文字をみて、貴方が笑えますように
 
 
 
いつでも電波に乗せて送信出来る時代だからこそ、見失ってしまう大切もある
だからこそ今一度、自分の大切な人に今の温度のまま言葉を届けてあげて下さい
 
<moon drop・浜口飛雄也>



◆紹介曲「風のお便り
作詞:浜口飛雄也
作曲:浜口飛雄也・坂知哉