夏は幻のように過ぎていく

 2024年7月5日に“moon drop”が新曲「風のお便り」をリリースしました。同曲はドラマ『焼いてるふたり ~交際0日 結婚から恋をはじめよう~』エンディング主題歌。自身初のドラマタイアップとして書き下ろした楽曲は、“遠く離れた場所にいたとしても、大切な貴方を想う気持ちは風に乗ってお互いの元へ届く。”劇中の2人の歯痒さやもどかしさにそっと寄り添う。全世代共感のラブソングとなっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“moon drop”の浜口飛雄也による歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回は第1弾です。綴っていただいたのは、今年6月5日にリリースした新曲「閃光花火」にまつわるお話。みなさんは“夏の魔法”にかかったことがありますか? 宝物のような一瞬を描いた物語、ぜひ歌詞と併せてエッセイをお楽しみください。



学生だった時、ずっと不思議に思っていたことがある
一年を通して色々な長期休暇があったけど
何故か一番長いはずの夏休みだけ一瞬で過ぎ去っていくこと
ただぼんやり過ごしていた訳ではないけど
毎年それには抗えなかったような気がする
 
“夏の魔法”とはよく言ったもので
夏には他の季節には無い何か特別な力が働いているに違いない
その一瞬を見逃さないように
 
 
少し前の話
僕らがまだまだ大人には程遠かった頃、君から一本の連絡が入った
汗でTシャツが張り付いて、あの季節独特の匂いのする夜だった
「星を見にいこう」
珍しい君からの連絡に僕は頷くしかなかった
この時、僕は冷静さとは裏腹に、溢れる気持ちを堪えるのに必死になっていた
 
二人で家から一番近いだだっ広い海へ向かう
慣れない足取りで一歩ずつ一歩ずつ進む
丁度砂浜の真ん中くらいに腰掛けて見た星空を今でも覚えてる
どこか頼りなくて、それでもちゃんとここに居る証明のように光り輝いていた
僕ら二人をそのまま映し出しているように見えた
 
僕らは特にこれといった会話をするでもなく、ただそこに二人並んでいた
その時の僕は、ただそれだけで良かった
この時間がこのまま永遠と続くような気さえしてきたけど、当たり前にそうはいかないことを知っている
 
 
一瞬の出来事だった
君が今日ここに来た理由なのだろうと分かるくらいゆっくり、丁寧に、僕に投げかけた言葉
波の音が重なる
同時に上がった花火の色
 
少し時間が経って隣に君が居ないのは
その言葉に答えられなかったからだろう
 
 
 
夏は幻のように過ぎていく
空は変わることなく綺麗で
また今年も花火が上がるらしい
またどこかで会えることがあるのなら
もう一度 あの場所で
 
<moon drop・浜口飛雄也>



◆紹介曲「閃光花火
作詞:浜口飛雄也
作曲:浜口飛雄也・坂知哉