2024年9月4日に“優河”が4thアルバム『Love Deluxe』をリリースしました。今作には、6月にデジタルリリースした「Sunset」、7月にデジタルリリースした「Don’t Remember Me」など全10曲を収録。2023年8月にリリースした「遠い朝」の2024mixも収録。全篇、岡田拓郎がプロデュースを手がけ、魔法バンド、つまり岡田拓郎(Gt)、千葉広樹(B)、谷口雄(Key)、神谷洵平(Drs)というお馴染みメンバーと共にレコーディング。
さて、今日のうたではそんな“優河”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第1弾です。綴っていただいたのは、収録曲「Love Deluxe」にまつわるお話。この歌詞を書くにあたり、どんな歌にしようか、今の自分が誰に一番愛情を注ぎたいか考えてみたとき、見えてきた答えとは…。ぜひ歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。
私は家族や友人にも恵まれ、何不自由なく暮らしてきた。
幸い日本には戦争がなく、私には安心して眠ることのできる家があり、食べるものがある。周りには私を大切にしてくれる人がいるし、愛情に包まれていると日々感じる。
それにも拘らず私は自分自身を愛することが長年出来ていなかったように思う。というより、自分を愛する方法がわからなかった、と言った方がいいのかもしれない。
今の時代、自分を大切に、とかセルフラブの重要性は、至る所で目に耳に情報として入ってくるけれど、そうは言ったものの、みんなそれぞれの人生で忙しいし、自分や他人を一生懸命愛そうとしていて。ではどのように自分のことを愛するか、というHow Toまで教えてくれる暇はないのだと思う。
私の場合、有難いことにザ・健康優良児!という体で生まれ、物心がつくまで元気玉のようにあっちこっちを全力で走り回り、イタズラしてきた男の子に仕返しをするのに大声で「待ちやがれ~!」と叫びながら、学校でPTAの会議に参加している母に恥をかかせたこともあるほど、とにかくエネルギーの塊だった。
それから子どもから大人へと少しずつ成長して心も身体も変化していくにつれ、同級生や先輩(主に男の子/人)から放たれる、容姿を批判するような一言二言に傷つき始めるようになった。自分を誰かと比較したり自分には魅力がないという気持ちがだんだんと増えて、自分の姿を鏡で見た際に誰かに言われた言葉を自分にまたさらに投げかけてしまうことが癖になっていったように思う。
そこから十数年経っていて、その言葉を放った本人はもうきっとそんなことすっかり忘れているだろうし、私もその子たちを憎んでいるわけではない。自分も無意識のうちに誰かを傷つけてしまったこともなかったとは言えないし。
でもやっぱり思い込みの日々の刷り込みというのは怖くて、それは容易になくせるものではないのだとこの肌を持って痛感した。もう遠い昔の話なのに、思春期にどこかの誰かに言われた一言が頭の中にこびりついて、鏡で自分の姿を見る度、誰かに写真を撮られたりする度に自分を批判する言葉しか出てこないのだ。そういう言葉を自分に言うことが癖になっているから、誰かと楽しく話をしていてもつい自分の容姿を自虐してしまったりそれで笑いに変えた気になっていた。自分の心に傷をつけているのを見て見ぬふりをしながら。
それでも歌を歌うようになって人前に立つようになってから、少しずつ自分のマインドは変わっていって、とにかく日々一生懸命に生きて、周りの人を愛し、嘘をつかずに生きていたら、内面から人は美しくなるだろうという希望を持ち始めることができるようになっていった。外見はとりあえず置いておいて自分の内面にフォーカスし始めた。そういうマインドになってからはだいぶ気持ちが楽だったし、地道に嘘なく生きていくにつれて自分の顔が“良い人間の顔”になっていく感じがした。
今回リリースした「Love Deluxe」という曲の説明に辿り着くまでに大分長くなってしまったけれど、この曲の歌詞を書くにあたって、どんな歌にしようかと思い巡らせていた。誰かのための歌にしようと書き始めたけれど、なかなかハマらない。悩みながらふと目を瞑った。
今この瞬間、この時に、自分は誰に一番愛情を注ぎたいかと自問してみた。そして思いがけず浮かんだのが自分の姿だった。
屈託なく笑うまだピュアな子どもの頃の私の姿。誰かに批判された時に深く傷ついた思春期の私の姿。そして自分の歌を聴いて救われたと誰かに言ってもらった時の私の姿。
思い返すとたくさんの人と出会い、その中で良いこと悪いことを経験しながら積み重ねてきた自分自身の姿に一人胸が熱くなった。
簡単に画面越しに誰かと比較できたり、乱暴な言葉を受け取ってしまったり、自分で自分を蔑むことが容易にできてしまうこの時代に、私は私の言葉でこの曲を書いて世に出すことがとても大事な気がした。
初めから自分を愛することはもしかしたら難しいかもしれない。だけれども自分は自分でしか生きられないし、自分は自分で、自分自身を育てていくことが出来るのだ。
どう生きていくか、ということが本当の自信に繋がっていく。よく頑張って生きてきたねと自分を褒めて抱きしめて、愛することが出来るようになっていく。自分が自分でいて心強くなっていく。
家族や周りにいる友人、仲間に導かれながら、自分の魅力を発見していく。自分のリズムで自分の言葉で、生きていく。それは誰かの放った言葉よりももっとずっと強く、確かなものでそれこそ、自分の中に留めておくべき宝物だと私は思う。
誰かの決めた美しさ、醜さは、その人だけのもの。あなたの美しさは、あなただけのもの。
誰かに奪われるようなものではないと、私は思う。
自分が自分に言ってきた言葉も全部含めて、私は私を許したい。
そこからまた、愛を深めて生きていきたい。
<優河>
◆4thアルバム『Love Deluxe』
2024年9月4日発売
<収録曲>
01. 遠い朝 - 2024 mix
02. Don’t Remember Me
03. Petillant
04. Love Deluxe
05. Lost In Your Love
06. Mother
07. 香り
08. Tokyo Breathing
09. Sunset
10. 泡になっても