2022年3月23日に“優河”がニューアルバム『言葉のない夜に』をリリース。タイトルには、アルバム制作に費やしたこの2年の想いが込められております。聴くものの心を震わせる唯一無二の歌声と、紡ぎ出す心象と心情の描写で織りなす世界観が高い評価を得る彼女。ドラマ『妻、小学生になる。』主題歌「灯火」も大きな話題に。
さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“優河”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「WATER」のお話。ふと降りてきたワンフレーズ。その一文からどのような気持ちが生まれ、歌詞が広がっていったのでしょうか…。
'Take me to the water and you know'
声が重なることの美しさをやっと知った私は
コーラスからだって曲を書いて良い、という当たり前のようなことが
とても新鮮で嬉しかった、のと同時に
具体的な言葉をつけていくことが出来ずにいた
幾重にも重ねた声の中に
いくつもの言葉が隠れているようで
それは気持ちなのか
景色なのか
香りなのか記憶なのか
考えているうちに、ふとこの言葉が降りてきた
'Take me to the water and you know'
私はなんのことかわからなかったけれど
とにかくこの一文でメロディをつなげていった
言葉の聞き心地も悪くないし歌い回しもとても好きだったけれど
流石にこの一文で歌にする勇気は出ず
気分転換に散歩することにした
いつも歩いている道に水の湧く一角がある
私はそこが大好きで
いつものようにぼうっと目を瞑ると
'Take me to the water and you know'
この言葉がまた心に現れて
水の湧く音に体の中が洗われているような気持ちになった
'Take me to the water and you know'
'私を水辺に連れて行って そしたら分かるわ'
水の湧く音に耳を澄まして
せせらぎに身を委ねる
深呼吸を数回して
私は家に帰ってこの曲の歌詞を書き上げた
曲の持つメロディが
訴える心が 気持ちが
それを受け取る人の体を通して人々に伝わる
私はなんでもないのだ
ただ喉を貸しているだけ
曲という存在が
私というちっぽけな人間より遥かに大きくて豊かな存在であることを
一つの文を通して思い知らせれたようで
なんだか不思議な体験だった
<優河>
<優河>
2022年3月23日発売
<収録曲>
1.やわらかな夜
2. WATER
3. fifteen
4.夏の窓
5.loose
6.ゆらぎ
7. sumire
8. 夜明けを呼ぶように
9. 灯火
10. 28