2024年10月9日に“Conton Candy”が初のフルアルバム『melt pop』をリリースしました。バンド結成からの5年間が詰まった“入門盤”であり“完全盤”ともいえる本作品は、タイトル通り、Conton Candyが抱かれているであろう“pop”な印象を“melt(溶かす)”する1枚に。収録曲は、「ロングスカートは靡いて」、「ファジーネーブル」など、彼女達の名刺代わりである代表曲を中心に9曲、さらに新録6曲の全15曲が収録。
さて、今日のうたではそんな“Conton Candy”の紬衣による歌詞エッセイを3回に渡りお届け。今回が最終回です。綴っていただいたのは、収録曲「my JAM」にまつわるお話。関係が壊れてしまうことを恐れて、誰かの前で素直になれず、想像と妄想を繰り返しているあなたへ…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。
◆紹介曲「my JAM」
作詞:八島紬衣・鈴木楓華・鈴木彩楓
作曲:八島紬衣・鈴木楓華・鈴木彩楓
「気になるあの子と△□×したい」
誰しも、想像・妄想を繰り返しながら生きていく。
そして手が届く少し先の人に惹かれたりする。
分かったようなふりをしてもらって、2人で気持ちを半分こして分け合って笑って、ふわっと生きてる。そうやって僕の世界は回ってるのかもしれない。
━━━━━━━━━━━━━━━
真っ暗な夜に溶ける僕。
いつも通り心は冷たいままで、帰る場所もない。
今日もぽっかり空いた空白を埋めてくれるのはあの人だけ。お互いの寂しさを埋めるように見えて、満たされているのは僕だけで、ただ横にいて少し触れ合ってるだけでいい。
でもいつかお互いの気持ちが1つになった時、どこか報われる自分がいるんだと思う。
でも僕の全てを渡すのは当然怖くて、少しだけしか渡せない。きっとあの人に嫌われたら僕の人生は空っぽになってしまうから。でも人は誰しも期待してしまう生き物であって、自分が作り出した理想像を追いかけてしまう。君はもしかしたら僕のことを全て分かってくれるんじゃないかという錯覚、この関係もいつか裏切られてしまうのではないかという威嚇、線を踏み越えてしまった時に僕に課されるであろう罰たちは心の中でごちゃっとしながら存在していて、この感情たちに住所はないから、ただプカプカと浮遊しているだけ。そんな気持ちたちに布をかけるように見て見ぬふりをしてふわっと生きている。心はもうとっくのとうにボロボロなのに。そんなことを考えながら辿り着いたのは、キラキラ光る看板で人を誘き寄せるように存在しているカラオケ。好きな歌を歌って、隣には君がいて。この瞬間だけは世界に2人だけしかいないような感覚になれる、そんな感覚に陥りながらノリノリな僕。僕の世界の中心はきっとここなんだと思う。時間はあっという間で10分前、鳴る電話、終わらないでこのままでいて。
この時、気持ちが嘘みたいに真っ直ぐ言葉に乗っていた。
僕はとうとう言ってしまった。
もう全て終わりだ。
「もうちょっとだけここにいて、抱き寄せてほしい」
「もうここにいて、夜が明けるまで手を繋いでいて」
一度放った矢は帰ってこない。
積み重ねてきた君との思い出が音を立てるように崩れ落ちて僕の心は完全に空っぽになった。
君は僕のその言葉にただただ笑っただけだった。
━━━━━━━━━━━━━━━
一体なにが起きたのか分からないままの帰路。
外はもう少しだけ明るくなってきた。
たった数時間前の話なのにもう懐かしいような感覚になりながらも、必死に一歩一歩進んだ。
あの人はきっと僕のことなんかすぐ忘れて生きていくんだろう。僕はここに取り残されたままなのに。
あの髪、顔、腕、腰、足、何一つ触れることなく2人の関係は終わった。
これは果たして恋だったのか依存だったのか。
でも確かなことが1つある。
「僕の強がりを覚えていて欲しい」
大きく見せようとしすぎて絡まって解けなくなって結局僕は力尽くでそれを解いてしまった。
君の前で素直でいたならどんな2人になっていただろうか。
そんなことを考えていたら辿り着いた家、見えた太陽は何色だったんだろう。
もう何もかもが綺麗だね、
ねえ、何が綺麗なの?
<Conton Candy・紬衣>
作詞:八島紬衣・鈴木楓華・鈴木彩楓
作曲:八島紬衣・鈴木楓華・鈴木彩楓
◆フルアルバム『melt pop』
2024年10月9日発売
<収録曲>
01. 相槌
02. ファジーネーブル
03. BABY BABY
04. ロングスカートは靡いて
05. 花びらと生活音
06. 急行券とリズム
07. もっと
08. 桜のころ
09. TOKYO LONELY NIGHT
10. 爪
11. baby blue eyes
12. アオイハル
13. moonwalk
14. my JAM
15. 好きなものは手のひらの中