2024年11月6日に“クジラ夜の街”が、メジャー2ndフル・アルバム『恋、それは電影』をリリースしました。今作には、映画『この動画は再生できません THE MOVIE』挿入歌の「Saisei」や、崎山蒼志とのコラボ共作「劇情」などを含む全12曲が収録されております。
さて、今日のうたでは“クジラ夜の街”の宮崎一晴による歌詞エッセイをお届け! 綴っていただいたのは、収録曲「ホットドッグ・プラネッタ」にも通ずるお話です。現代の音楽の楽しみ方とは、音楽への向き合い方とは、考えてみたとき自身が今思うことは…。
◆紹介曲「ホットドッグ・プラネッタ」
作詞:宮崎一晴
作曲:宮崎一晴
「影響を受けたCD」のジャケットを何十枚も並べてSNS載っけてみたり
ロックフェスに出るアイドルをコケにしたり
おすすめの若手バンドを紹介するYouTuberを冷笑したり
流行りのポップスをあえてディスってみたり
ライブ鑑賞直後、余韻そっちのけで、セトリとレポ書いて投下したり
他人のプレイリストを密かに値踏みして比べっこしてみたり
音楽をファッションとして、自己顕示欲を満たしたり
逆にそれを馬鹿にすることで悦に入ってみたり
ジャンルマウント、冷笑合戦、ロック論争、みたいなもので入り乱れ。
いつの世もそうなんだと思いますが
今は更に、若いリスナーたちの、音楽を巡る“カオス”が極まってきてるなーと思います。
「何を聴くか」ではなく
「何を聴いてる自分を承認してもらうか」
というポーズを取るファンに向けて
あるバンドマンは
「自分の好きな物を好きでいろ」
「誰にも指図される筋合いはない」
「他人の意見に縛られるな」
と警鐘を鳴らしたりもしていますが
この情報社会で、誰の目も気にせず自分だけのブームを自分だけのペースで愉しむのはどうやら難しいようで
音楽という
形のない、正解のない、感性だけを信じるしかないモノを前にして
人は人と繋がらずにはいられない、ぽいのです。
分かち合わずにはいられない、ぽい。
誰かに認められて初めて
自分の「好き」を自覚する
割と多くの人がそんな感じ。
ライブでもそう。
周りの人がサビで手を上げたから、手を上げて、間奏入ったら、手を下ろす、みたいな。
さて
こういう状況、に対し、俺も
今まではなんとなく
間違ってる、とか
もっと自由に音楽を楽しむべき、とか
自立しろよ、とか
自信持てよ、とか
適当にポコポコ思ってたんですが
よくよく、よくよく考えてみたら
別にマジで
なんでも良いじゃん
と、なりました。
本当になんでも良かった。
そもそも、音楽との向き合い方についてアレコレ説教できるほど偉くないし。
でもって仮に、自分が権威ある大物アーティストだったとしても
リスナーたちに向けて
「もっと自由に音楽を楽しめ」なんて、とてもじゃないけど言えないなって思います。
だって我々はすでに、圧倒的に自由だ。
何したって良い。
どんなふうに向き合っても。
音楽=ファッションだろうが
音楽=ステータスだろうが
音楽=人と繋がる手段だろうが
全てはそれぞれが勝手に決めること。
勝手に決めていいこと。
誰にも咎められない。
曲の聴き方だって問わない。
倍速で聴きたいならそれで良いし。
15秒尺永遠にリピるのが気持ちよければそれで良い。
あなたの生活を彩るためのBGMにしてもらっても良いし。
可愛く踊りをおどるためのツールでも良い。
そんでそれを巡ってまた対立や論争が起こったって良い。
各々の美学をぶつけ合えば良い。
どんな風に音楽を楽しむのも、全権はあなたの手中にある。
だから
「自由に音楽を楽しむために」なんて言って全員一律整えてく方が、よっぽど不自由。
今のこのカオスが一番健全なんです。
この状況こそが、自由。
その上で俺は
例えばこういう風に聴くと良いよとか
ライブはこうすると楽しいよとか
参考程度にお伝えする。
従っても従わなくても良い。
今後、そういう風に、この界隈と向き合っていこうかなと、なんとなく思い直したわけです。
「ホットドッグ・プラネッタ」って曲は
こういう目まぐるしい環境にて
自分の「好き」を見失ってしまう人の気持ちを歌いました。
この曲においてはそのテーマが“バンド”ですが
好きだったモノがだんだんと、わからなくなってしまう気持ち、全体のことを歌っています。
正解はないので、聴いてみてください。
強いてひとつ言うなら
これはサウンドや場面設定に反して
全くファンタジーな歌ではありません。
<クジラ夜の街・宮崎一晴>
◆紹介曲「ホットドッグ・プラネッタ」
作詞:宮崎一晴
作曲:宮崎一晴
◆メジャー2ndフル・アルバム『恋、それは電影』
2024年11月6日発売
<収録曲>
1. SHUJINKO
2. きみは電影 (Prelude)
3. ホットドッグ・プラネッタ
4. 雨の魔女
5. 失恋喫茶
6. 劇情
7. 星に願わない
8. End Roll
9. 出戻 (Interlude)
10. Saisei
11. それだけ
12. せいかつかん