2025年5月28日に“サイダーガール”が5th FULL ALBUM『CIDERPIA』をリリース! 従来の炭酸系サウンドは感じられつつも、一度離れたメンバーたちが再度集まり、今までの“爽やか”なイメージという一言では伝えきれない厚みや温もりさえ感じられる、一皮も二皮も向けた作品となっております。
さて、今日のうたではそんな“サイダーガール”の知による歌詞エッセイを3日連続でお届け! 今回は第1弾です。綴っていただいたのは、今作『CIDERPIA』に込めた想い。活動休止中に自身が考えていたこと。昔とは変わっていた音楽に対する意識とは…。
これは壮大な自分語りなのだ、と思っている。
5月28日、ニューアルバム『CIDERPIA』(読み方はサイドピア)をリリース致しました。サイダーガールGt.の知です。
一見爽やかなバンド名、清涼感の強い楽曲、耳にすっと馴染むボーカル。様々な要素で青年たちの集いと思われるかもしれませんが、全くそんな事はありません。
帰宅部、よく言えばほぼ活動しない部活の幽霊部員、根暗引きこもり、逆張り、インターネット育ちのひねくれ者集団だと自認しています。
そういう僕らでも集まれば同じ音楽を奏で、スタジオではくだらない話や下ネタで延々とゲラゲラ笑い、喜怒哀楽を共有しています。言わば、ヒエラルキーの下層部で土いじりをしているような人間が集まり(だがしかし他のメンバーは僕よりよっぽど人間として出来ている)、人生における第一の青春の時期を上手に過ごせなかった僕としては、第二の青春をひしひしと痛感しながら活動しているわけです。
だからこそ、このアルバムは自分のそんな人生の一部を切り取りお裾分けする気持ちで、誰かに届けばいいなと瓶に封じ海に流す手紙のような作品であると自負しています。
切り取るとは言え、アンパンマン程の慈悲深さを生憎自分は兼ね備えておらず、自己の心情吐露ではありますが、未来へ向かう岐路で迷っている人に寄り添える作品であったらいいなと思っております。
なのでいつか流れ着いたその時に、この文章を読み返していただけたらと思います。
今作は、全10曲入り。その内「Choose!!!」を除く9曲は僕が活動を再開してから楽曲を制作しました。
そう、僕は活動を休止していました。しかし先輩や知人にも「あ、そうだったんだ」としれっと流されるくらい緩やかにお休みを頂き、緩やかに只々生きていました。
勿論心中穏やかではなかったですし、バンドの事を忘れた日はありませんでしたし、ふと頭の中によぎる度に何かイケない事をしている気持ちにも苛まれていました。
音楽に人生の殆どを注いできた僕は、何も持っていない空っぽの人間になってしまったのです。
昔、実家で働きもせず引きこもっていた時期がありました。その時も何もやる気は出ず、一日中ゲームをして、たまに思い立って作曲でもやってみるかとmidiシーケンサーのソフトでポチポチと打ち込み、自宅で仕事をしている父の来客が来れば、自室を持っておらずリビングのPCを触っていた僕は迷惑にならないようにそっと物陰に隠れ身を潜めていました。
その時ポチポチと打ち込んだ音楽たちが、今もバンドの楽曲になっているものなどもあるのですが、当時はその音楽を聴いてくれる人は一人もおらず、作る人間もその音楽のファンである人間も僕ただ一人だけでした。
僕が作っていたものは、音楽もどきだった、と強く思ったのです。
誰もが知っていて、誰もに愛される、など他人由来で生まれるものが音楽なんじゃないかと。
大言壮語を吐いて必死で作っていたものも、誰にも届かなかったらそんなの音楽もどきじゃないかと。
僕がインターネットでボカロ曲を公開し、バンドを始めて誰かに自分の音楽もどきを聴かれるようになって、ようやく音楽として進化したんじゃないかと、思うのです。
自己満足の末に辿り着く理想も自分の中にはありますよ。だけど僕にとっては誰かに聴いてもらいたいという原体験が大切なんだと思います。
だからこそ、自分の音楽を愛してくれる人たちが直ぐ近くに居たのに、そこから目を背けてしまったから、イケない事をしている気持ちに繋がったんだと思います。
僕はもう一度バンドに戻る事になり、第二というよりはむしろ第三の青春を仲間たちと送らせてもらっています。
引きこもって一日中ゲームをしていた日々も、
ドキドキしながら自作の音楽をインターネットに公開した日も、
バンドでステージに上がって見えるみんなの顔も、
下ネタでゲラゲラ笑うスタジオも、
沢山の思い出が僕の人生という日記帳にいつの間にか栞として挟まっていたんだと思います。
僕が忘れてしまっていたものを取りに帰る時間に少しだけ、お付き合い下さい。
<サイダーガール・知>
◆5th FULL ALBUM『CIDERPIA』
2025年5月28日発売
<収録曲>
01.栞
02.Choose!!!
03.生きルンです
04.ヒナ
05.透明
06.火鍋
07.HELLO
08.wagon
09.夜に揺られて
10.わすれもの