CIDER + UTOPIA

 2025年5月28日に“サイダーガール”が5th FULL ALBUM『CIDERPIA』をリリースしました。従来の炭酸系サウンドは感じられつつも、一度離れたメンバーたちが再度集まり、今までの“爽やか”なイメージという一言では伝えきれない厚みや温もりさえ感じられる、一皮も二皮も向けた作品となっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“サイダーガール”の知による歌詞エッセイを3日連続でお届け! 今回が最終回です。できるだけ目立ちたくない。その思いが音楽にも反映されてしまった時期を越えて、新たに放つアルバム『CIDERPIA』で表現したものは…。ぜひ今作と併せて、エッセイを受け取ってください。



僕もメンバーも、出来ればそんな目立ちたくないと日頃話しており、じゃあなんで音楽やって人前立ってんねんと思う方も居ると思うけど、音楽が好きだしバンドを続けられたから。ただそれだけなので、目立ちたくない思いと相反するわけではない。
 
音楽で自己表現をする上ではそりゃあ目立ちたいのですが、普段の立ち振る舞いの話なのである。
万年暗いねと言われるような性格だけど、暗いわけじゃなくて、落ち着いているだけだと思う。
世間から少し逸れただけで、居ないものとされるけど、そこにも自分は居ると思いたい。
 
 
誰かが群れを作っているのを見ると妬み嫉みに襲われてしまうし、常日頃、孤独を抱えて生きている。自分のことを分かってもらいたいから、曲を作り、言葉を綴る。
顔出しをしていない僕らが何者なのか、どうやって生きているのか、何を考えているのか、漠然としていると思うけど、音楽を通してみれば、そこには一人の人間が居る。それを分かってもらいたい。エゴなのだけど。
 
 
昔、地方へ遠征する時に、両手に抱えた機材とキャリーケースを持って空港へ向かう電車へ乗り込んだら、満員電車で誰も乗り口を譲ってくれなくて、乗れなかったことがある。
そりゃ、邪魔だよな。こんな何人分にもなるような荷物を持ったまま電車に乗るなんて迷惑だよな。
ごめんなさい、ただそれだけ伝えて少しでも空いている電車を駅のホームで待った。
 
 
人より目立ちたくないから、帽子は深く被るし、上下無地の黒の服を着るようになったし、出来るだけ人であろうとした。
どうしても音楽ではそれはしたくなかった。けど、少し負けちゃって流行りものとか、分かりやすい言葉を並べて、不特定多数の“みんな”が共感してくれるナニカを目指していた。
それは、誰にも届かない言葉として、壁に投げつける音楽もどきとして僕は感じてしまった。
 
 
だからこそ、音楽を再開した僕は、自分が好きでいられる作品を作り続けた。
その集合体が『CIDERPIA』である。
 
心の泥を曝け出すことも、思い出を振り返ることも、ただなんとなく過ごした日常も、誰かの背中を押したいと願ったことも全て、僕自身だった。
そして、これが僕自身であり、サイダーガールとして表現する一つの桃源郷である。
だから、CIDER + UTOPIAからなる造語の『CIDERPIA』というタイトルになった。
この作品を通して、サイダーガールというバンドを色んな角度で解釈してもらえたら嬉しい。
少しでも僕の人生が其処に在ると感じてもらいたい。
あなたの背中を押せる作品になっていれば、何よりも幸せである。
 
 
これは壮大な自分語りなのだ、と思っている。
 
<サイダーガール・知>


 
◆5th FULL ALBUM『CIDERPIA』
2025年5月28日発売
 
<収録曲>
01.栞
02.Choose!!!
03.生きルンです
04.ヒナ
05.透明
06.火鍋
07.HELLO
08.wagon
09.夜に揺られて
10.わすれもの