レアライフ

 2025年5月28日に“Dannie May”が配信シングル「色欲」をリリースしました。七つの大罪の一つとして知られる、色欲。男女の“お互いに都合のいい関係”をテーマに制作され、人間の持つえぐみをDannie May独特のエキゾチックな雰囲気で現代風に落とし込んだ本楽曲。持ち味であるボカロ×ネットロックの曲調に、初めて取り入れた生のブラスが艶やかさとヒリつきを生み出す、新感覚ミュージックとなっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“Dannie May”のマサ(Vo&Gt)による歌詞エッセイを2カ月連続でお届け。第1弾は、今年2月にリリースされた楽曲「レアライフ」にまつわるお話です。ある日のライブ終わりにもらった一通の手紙。そこにしたためられていた思いとは…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。



対バンという形式のライブに出る時、時間が許せば物販に出るようにしている。
もちろん撤収が遅れてライブハウスや共演者に迷惑がかからない範囲で、とは思うのだが、僕たちの音楽を愛してくれてる人と直接話すのは励みになるし、ライブやSNSとはまた違った形で繋がれるのは楽しい。
 
何度目ましてかで友達のように話していたとしても、緊張して上手く話せなかったとしても、等しく愛情を伝えて貰えるのはとても嬉しいことだ。
 
そこで差し入れを頂いたりもするのだが、中には直接お手紙を渡してくれる方もいる。
 
ある日のライブ終わり、自分の母親と同じくらいのある女性から一通お手紙を頂いた。お話を聞くに、普段ライブに来てくれているファンの男の子のお母様だった。
「今日は体調不良で本人はライブに来れなくて。でもライブ、とても楽しかったです」と、お褒めの言葉とお手紙を頂きつつ、帰ったら読もうと思い上着の懐にしまった。
 
大体ライブの日は撤収を終え家に着く頃には24時を回ることが多い。この日も同じだった。
持ち帰った機材や差し入れを整理して疲れた体をシャワーでほぐし、眠る準備もあらかた済んだ頃、あの手紙のことを思い出した。
 
上着のポケットを探り、封筒から便箋を取り出す。3枚の便箋にしたためられていたのは、彼と僕らの出会い。彼の生まれながらの境遇。そして彼と僕らが出会ったことでのお母様から見た彼の変化だった。
 
詳細は個人的な事なので伏せるが、まとめるとこのような内容だった。
 
生まれながらの持病を持っていて、社会人になった今でも戦いながら懸命に生きているということ。
青年として経験するには辛い出会いと別れがあったこと。
僕たちと出会って彼の世界が少し明るくなったこと。そんな事が本当に暖かい言葉でしたためられていた。
 
胸がいっぱいになった。
音楽をやっていて良かったと思ったしもっと続けていこうと思った。
 
自分の部屋で色んなものをこねくり回しながら作った音楽が誰かの助けになっていて、自分の音楽が「存在してて良いんだよ」と言われた気がして、きっと彼と同じくらいに僕も救われた。
 
お手紙に返事が書きたくて、でも音楽で返したくてこの曲を作ろうと決めた。
 
―――
 
満点ばっかじゃつまらない
恥かいてるくらいが丁度良いのさ
たまに躓き たまに迷い
不恰好な程胸躍る
未完成な方がおもしろい
汗かいてる君は輝いてるんだ
雨のち晴れさ歩いてゆこう
心の向く方へ
 
―――
 
どうしようもないような不条理も憂いも、1人で受け止めるしかない時がある。
人に相談する気力も起きなくてただただ砂嵐のような日々を耐え抜くだけで精一杯の日もある。
 
だけどきっとそういう人のために僕たちの音楽はある。
言葉だけでは到底信じられないようなエールも、音に載せれば途端に魔法に変わることがある。
 
 
彼がこれからもその強さを持ち続けられますように。もし不安な日があったとしたらこの曲がその日だけでも糧になりますように。
 
 
僕からの最大限のエールをこめて。
出会ってくれた感謝をこめて。
 
<Dannie May・マサ>



◆紹介曲「レアライフ
作詞:マサ
作曲:マサ