思ってたのと違った?そんなの勝手でしょ…。

 2017年10月4日に“山本彩”が、2ndアルバム『identity』をリリースしました。プロデュースを手がけたのは、1stアルバム『Rainbow』に引き続き、亀田誠治。制作には、水野良樹(いきものがかり)、阿部真央、いしわたり淳治などの豪華クリエイターが参加しております。さらに今作は、山本彩自身が作詞作曲をした楽曲も多数!今日のうたコラムでは、山本彩により生み出された、ラブソング「どうしてどうして」をご紹介いたします。

どうして? どうして? あなたなんかに
ふられなきゃ いけないの? 身のほど知らず
どうして? どうして? 傷ついてないのに
謝るの? 調子乗って いい人ぶらないで
「どうしてどうして」/山本彩

 この曲の主人公を表すことわざは【高嶺の花】です。頭が良く、見た目も美しい。誰もが憧れはするけれども、ほど遠い存在の人。それが<私>という女性であり、彼女自身そのことを十分すぎるほどに自覚しております。しかし、果敢にもそんな<私>にアタックし、結ばれた<あなた>がいたのです。にもかかわらず、どうやらその人は<わたし>をふった模様。まさか自分がふられるとは思っていなかった彼女は、もちろん【高嶺の花】としてのプライドが許さず、歌の冒頭からは“怒り”が伝わってきます。ただ、徐々に明かされてゆくのは、誰にも言えない【高嶺の花】の気持ち…。

近寄りがたい人って言われて
ずっと恋もして来なくて

何もかもが超普通なあなたに
ちょっと魔が差して恋した

付き合ってあげたのにさ
三ヶ月だけで…
「どうしてどうして」/山本彩

 歌詞内には<クールぶってドライぶっているのは 感情 顔に出せないだけ>という本音も綴られています。素直じゃないがゆえに、周りから敬遠されて、恋もして来なかった彼女は、優しくされることや愛されることへの免疫があまりなかったはず。きっとずっと“孤独”だったのでしょう。だけど、そんな心の穴を埋めてくれたのが<何もかもが超普通なあなた>です。魔が差して<付き合ってあげた>なんて言っていますが、本当はものすごく嬉しかったのだと思います。その幸せが続くと、信じて疑わなかったのだと思います…。

冴えないあの子と昨日
歩いてたでしょ…

どうして? どうして? 心の中で
叫ぶけど どうしても 声に出せない
どうして? どうして? あの子がいいの?
私より いい人は どこにもいないのに…
「どうしてどうして」/山本彩

 でも<あなた>は、たった三ヶ月だけで<冴えないあの子>に乗り換えたのです。その突然の裏切りを知った<私>の心には、いろんな<どうして?>がとめどなく生まれてゆくけれど、彼女は素直じゃない【高嶺の花】の女性。結局は何ひとつ、言葉にして伝えることはできなかったのではないでしょうか。別れを告げられても「あっそ…」ぐらいの反応しか返せなかったであろうことが想像できますね…。

高嶺の花は 遥かな崖で
ひとり寂しく 咲く
見下ろす街を 見上げる空を
羨みながら 泣く

思ってたのと違った?
そんなの勝手でしょ…

どうして? どうして? 出会わなければ
そんなこと 今もずっと 考えちゃうよ

どうして? どうして? あなたなんかに
ふられなきゃ いけないの? 身のほど知らず
どうして? どうして? 傷ついてないのに
謝るの? 調子乗って いい人ぶらないで
「どうしてどうして」/山本彩

 そして、ひとりきり流す涙…。おそらく<あなた>は【高嶺の花】としての、クールでドライな<わたし>が好きだったのでしょう。しかし、恋人同士になって“素”の部分が見えてくると<思ってたのと違った>と。もしかしたら、恋愛経験が豊富ではない彼女は<あなた>のそんな本性を見抜けなかったのかもしれません。もう、信じきってしまっていたのです。だからこそ、ラストのサビでは、冒頭の“怒り”の正体が、実は大きな“哀しみ”であったことに気づかされます。

いい子はいい子になろうって必死でしょ?
ダメな子もダメな子になろうって必死なの。
(映画『渋谷』より引用)

 余談ですが、映画『渋谷』という作品にこんなセリフがあったのを思い出しました。同じように【高嶺の花】の<私>だって【高嶺の花】になろうと、これまでも今も必死なのではないでしょうか。でも本当は、ただ普通の恋がしたい、ただ幸せになりたい女性です。それは<見下ろす街を 見上げる空を 羨みながら 泣く>姿からも伝わってきますよね…。そんな彼女がどうか、ありのままの彼女でい続けられる人に出会える日がやってきますように…!

◆2nd Album『identity』
2017年10月4日発売

<収録曲>
1 JOKER
2 Wings
3 夢の声
4 Let's go crazy
5 ゆびきり
6 サードマン
7 どうしてどうして
8 愛せよ
9 何度でも
10 喝采
11 陸の魚
12 春はもうすぐ
13 蛍