新曲はもちろん。様々な名曲がどのように家入レオ色に染まるのか、お楽しみに…!さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放つ“家入レオ”本人による歌詞エッセイをお届けいたします。綴っていただいたのは新曲「Answer」に通ずる想い。とある取材の始まりから幕を開けるエッセイ。進んでゆくインタビューのなかで、ふと彼女が気づいたこととは…?
~歌詞エッセイ:「Answer」~
レコード会社の一室で新曲プロモーションの取材をしていた日だった。
媒体の方と挨拶をするスタッフの声に耳を傾けながら、目の前にあるペットボトルを手に取り、蓋を開け、水を口に含みながらリアクションだけでその会話に参加した。
誰もいなかった部屋に一気に人が集中した時に生み出される独特な熱量は、今でもわたしを不思議な形で高揚させてしまう。
脱いだコートの静電気、鞄を椅子に置く音。
更新版です、と手渡される紙資料、お茶を勧める声。
空気中を回旋しつづけているであろう微粒子のことをぼんやり思いながら、心のさざ波が落ち着くのを待っていると、はじめまして、といつの間にか対面上に座っていた男性が発音した。
色素の薄い白い肌に程よく散らばったそばかす、ちょうど良い感じにひび割れた唇。
わたしも慌ててはじめましてと頭を下げる。
顔を上げると辺りに漂う空気がその場にいる全員に馴染んでいたので、準備が整ったんだなと思った。
そして自分の声域にぴったりなテンポで話しはじめたその方は、過去の記事も読んで今日伺ったんですけど、という導入で取材をはじめた。
抜かり無い事前準備をして来てくださった真摯な姿勢に嬉しさを感じつつ、過去のインタビューで何を自分が言っているのかあんまり覚えていないなと申し訳なく思った。同時に「Answer」に込めた想いはこれだと思った。
数年前からなんとなくわたしは悩んでいた。
デビューしてから、果たして自分はこの壁を越えていけるのだろうか?と途方にくれる事もあったけど、まずやってみる、向き合ってみる。
そうしてシャカリキにやっていると、いつの間にか壁が次の場所に繋がる扉になっていた。でもある時から、壁が壁でしかなくなった。
ひとりで考えていると負のループに引き込まれていきそうで、必然的に誰かと一緒にいる時間が増えていき、そんなの誤魔化しだと叫ぶ自分に気づいた時、私は私にひとりぼっちになる強さをプレゼントしようと思った。
デビューして9年目。
あの日思い描いたことと、少し違う今があって、その今が愛おしい。
迷っているなら、また自分は何がしたいのか、いくらでも問いかけたらいい、探しに行けばいい。
そう思えた時、肩の力が抜け、口元に微笑みが戻ってきたのを感じた。
一度決めた答えを変えちゃいけないって誰が言ったの?「今」を一生懸命生きるからこそ、答えもその都度変わるし、自分も変わり続けていく。
答えをずっと探してきたけど、答えを出して、実践して、また新しい課題に頭を悩ませて、また考えて、答えを出して、生きていく。その繰り返し。
答えは瞬間を繋いでいくものであって、永遠なものではない気がする。
自分を縛ってしまう答えならいらない。
だから、インタビューで答えているのは、取材を受けている時点での答えであって、今同じ質問をされたらまた違う答えが出てくるかもしれない。変わり続ける答えを楽しみながら生きていきたい。
これからも、笑ってまた泣いて繰り返して、
そうして生きてゆく。
その時々の「あたらしい僕が」
<家入レオ>
◆紹介曲「Answer」
作詞:家入レオ・Kanata okajima
作曲:家入レオ・久保田真悟(Jazzin'park)
◆1st EP『Answer』
2020年5月13日発売
初回限定盤 VIZL-1766 ¥3,000+tax
通常盤 VICL-65372 ¥2,000+tax
<収録曲>
01. Answer
02. 秋桜
03. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
04. 悲しみの果て
05. POP STAR
06. 泣くかもしれない
07. Answer(instrumental)