ぼくの音楽は音楽以外で出来ている。

 2021年8月4日に“THE BEAT GARDEN”がニューアルバム『余光』をリリース!DJのSATORUが脱退することもあり、今作が現体制最後の作品です。前作以降にリリースされたシングルと、書き下ろしの新曲「好きな人がいる人を好きになった」、「Everglow」を追加した計11曲が収録。デビュー以来掲げてきた"EDR=エレクトリック・ダンス・ロック"に縛られることなく音楽性の幅を果敢に広げた、会心のアルバムに仕上がっております。

 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“THE BEAT GARDEN”のUによる歌詞エッセイをお届け!音楽は音楽以外で出来ている。その“音楽以外”の大切な記憶や感情を、2012年の“あの頃”までさかのぼって、綴ってくださいました。そして2021年の今、彼が想うこととは。是非、今作の歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。

~歌詞エッセイ~

音楽は
音楽以外で出来ている。

誰かが言ってた。

リズムと言葉
メロディーと和音。

鳴っているのが
これらだとしても

辛いとき
幸せなとき

描き方も
聴こえ方も

同じはずがないから

だから
その言葉をずっと信じている。


THE BEAT GARDEN
アルバム『余光』リリース。



――2012――

東京、大阪、名古屋を中心に

ベタ踏みでも80kmしか出ない
ボロボロの軽バンに乗って
路上ライブで行脚していた。

事務所が決まっても
動員も曲もほとんど
生み出していないから

バイトをして
夜中に出発して

目的地に着くと
いい感じの道に停めて車内泊。

リクライニングできる広さはない。
背中はみんな90度。

冬は寒くて夏は暑い。
花粉で嫌いだった
春と秋が少し好きになった。


当時スタッフをしてくれていた
地元の後輩さとるは
20歳を越えても高校に通っていて
家がなく車に住んでいた。

それでも会うときは
スタバを差し入れてくれたり
洋服も高そうなブランド物を身に付けていて

そのお金があったら部屋借りたら?と
総ツッコミを入れても

断固として駐車場に住み続ける
不思議なやつだった。


ちなみに車は
ホンダの“LIFE”に乗っていて

「おれLIFEでLIFE送ってるっス!」と

ニカっと笑う彼が
冬を越せるのか心配になった。


その後。
迷いなく人生を生き続けた彼は

春を迎え
DJ SATORUになった。


――――


一方、僕は迷っていた。

音楽の枝分かれは
どんどん加速している。

ロックだけでも
パンク、ヘヴィ、ハードコア、サイケ、グランジ、シューゲイザー、グラム、ガレージ、オルタナティブ

好みを分かりやすくする為のものが
余計に分かりづらくさせてる感さえある。


それに加え

やりたい音楽と
やり続けられる音楽はちがう

とか

楽器、ダンス、コーラス
全部出来るけど中途半端だ

とか

考えすぎて余計に
行き先が不透明になっていく中で

先輩のツアーの手伝いをして
移動中に車の中で曲をつくって
夜はクラブでライブをして

ただただ
流れに流されながら


「握手会」を
始めることになった。



――握手会――

初めてそれを見たのは
派遣のアルバイトで設営に行った時。

幕張メッセで椅子を並べながら
「大変そうだなー」と

あんなに縁遠いと思っていた
世界線。

そこにいま
立っている。



とある対バンの日


ずっとうしろのほうで
携帯をいじっている二人組。


そうね。
何言っても伝わんないよね。

イライラして
歌い終わって
真っ暗なステージ袖の壁を殴って

ヘコんで
手の甲も腫れて

もうそのままひとりで帰りたかった。



そんな日でも

どんなに
今日のライブはダメだって日でも

自分と話してみたいと
思ってくれているひとがいるかもしれない。


だからすぐに気持ちを立て直して
握手会にいかないといけない。


トイレで水をバァーと出して
冷やした。


少し遅れて物販に行くと

いつもの
あの人が

はじめましての
あの子が


嬉しそうに
並んでくれてた。


――――


眠れなくなるくらい
食べることを忘れてしまうくらい
声が出なくなるくらい

伝えたい
歌いたい

何かが確かに宿ったのは

この「握手会」だった。


手の甲が腫れたあの日からずっと
大事な時間。



目標をもって動いているひと
目的を探しているひと
何もないと言いながら
何もないとは真逆の
忙しい毎日を過ごしているひと。

何かと戦っている人たちばかりだ。



ぼくはみんなと
一緒にいい風に年をとって
一緒にあがっていきたいと思ってる。


ゆっくりだけど
ずっとよくなってきた。

年をとるのが嫌ではないのは
みんなのおかげ。


味方がいるっていいな。
味方でいたい。



間違えていてもいい。
この道を進むんだ。

話す度に
そう思える。



だからもう
迷っていない。なう。



――2021年――

12ヶ所24公演
自身最大規模の全国ツアー。


こんな時期だというのに
チケットがSOLDOUTしてくれた。


ずっとドキドキしてた。
会社の人たちも喜んでくれた。

ほんとにありがとう。


チケットを取れなかった
今回会えなかったあなたにも
また必ず会いに行かせてね。

ごめんね。
元気でいてほしい。



やっと歌える。

Beemer(最高に人間らしい粋な仲間達)
事務所やシグマのみなさん
ライブハウスのみなさんも


消毒
検温
ソーシャルディスタンス
会場の確保
移動の手配
SNSのメッセージ
手にあざができるほどの拍手

今まで以上に一緒にライブを
作ってくれているに他ならない。



覚悟を持って来てくれたひと

覚悟を持って行かないことを選んだひと


みんなと
みんなが
また会えるように。

今日を繋いでいきたい。



そんなふうに考えていると
ベッドに入っても眠れなくなって


3時間も経ってしまった。


瞼は重いのに
脳は軽やかに動き回って

どういうことなのあれ。

同じ体なのに
主人は眠たいと申しているのに

なんで
眠ってくれないの。

なにか
魔法が使えるようになるなら

いつでもすぐに寝られる
魔法がほしい。

その時は
女の子の抱き枕も
セットで出しちゃう。

(もっと眠れない)
(いやん)



さらに
喘息が出た。
こうなるとやばい。

寿命が5年縮まってもいいから
ライブのとき

お願いだから
声が出て欲しい

大袈裟ではなく
そう思った


――グループ――

4人のグループLINEに

「寝れない」と送った。

深夜2時。

既読2人。


日付変わって
今日になっても明日のイメトレを続けるREI
(もはや本番)

カップラーメンを食べてるSATORU
(まじで浮腫め)

爆睡するMASATO
(当日は寝坊。なんでやねん。)



喘息の漢方を飲んで

LINEをしてたら眠ってた。


当日は
無事に声も出て良かった。

グループでよかった。



――余光――


このアルバムも
リリース当日にオリコン3位をいただいて

ビートガーデンも
少しずつ
ランクイン出来るようになった。

素直に
うれしい。


いい曲だね。
いい歌詞だね。

褒めてもらえるのは
描いた本人だけかもしれない。


もちろん

聴いてくれるひとに
こちらの事情全てを思い浮かべて
踏まえて聴いてほしい

なんて
思わない。



ただ、
マイクを持たない
スポットライトにも当たらない


誰かがいて
生まれる言葉があって


ぼくは
あなたと出会えて変わって


音楽をして
生きている。



これから先
いちねん先
じゅうねん先


どんなじぶんに
どんなあなたに
どんな音楽に

出会えるんだろ。


――――


陽が沈んでも
消えない光を「余光」と呼ぶ。


悲しいことがあっても

強い逆風に
晒されて

消えそうになっても。


何度でも

もう一度
もう一度って

昇っていくんだ。



辛いとき
幸せなとき


あなたの“LIFE”でも
この「余光」が流れてくれたら

幸せです。


ぼくの音楽は
音楽以外で出来ている。


THE BEAT GARDEN / U


最後まで読んでくれたみなさん

Beemerのみんな

歌ネットさん
いつもありがとうございます。

これからもビートガーデンを
何卒よろしくお願い致します。

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◆ニューアルバム『余光』
2021年8月4日発売

<収録曲>
01マリッジソング
02 Snow White Girl
03 遠距離恋愛
04 Morning Glory
05 夏の終わり 友達の終わり
06 好きな人がいる人を好きになった
07 光
08 ぬくもり
09 Everglow
10 スタートボタン
11 エピソード