コロナ禍じゃなかったらこの作業から逃げていたかも。

2021年10月20日に“the shes gone”が1stフルアルバム『SINCE』をリリースしました。今作は、YouTube再生回数1500万回を突破している代表曲「想いあい」やシングルとして発売された新曲「ラベンダー」や先行配信曲「線香花火」などを含む、全10曲収録となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“the shes gone”の兼丸(Vo.Gt.)による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。綴っていただいたのは『2020年のコロナ禍に入ってから作詞で意識するようになったこと』について。そして、コロナ禍だからこそ生まれた春の中に」とMake my day」のお話です。是非、歌詞と併せてお楽しみくださいませ。



さあ、ついに この コラムも最終回。
 
11月に差し掛かってそろそろ冬に近づいてくるのかな? なんてところでシズゴ初の冬の曲「ディセンバーフール」についてお話しようと思ったけど、あれはもう言いたいことは歌詞に書いてある、見てもらったまんまなので、補足も何もないです!はい!
 
寒くなってから聴くと堪らないんだよね。
余計に寒さを感じる、、
 
ということでラスト第3回は『2020年のコロナ禍に入ってから作詞で意識するようになったこと』をテーマに話していきたいと思います。
 
それは
 
“向き合うこと”
 
 
2020年からコロナ禍になって、ライブも、人と会うことも無くなっていたけど、曲は作れるということで3rd mini album『FACE』の制作をしていました。外には出れないから、部屋にいることが増えてました。制作をしていると本当に自分との戦いというか、“自分が言いたいことはなんだろう?”って自己を見つめる時間が増えていました。
 
そんな中、制作していたのが「春の中に」。
 
元々、コロナに関係なく書く予定だったんだけど、この曲でやりたかったのは“目に見えない誰かを肯定する”こと。
 
共感ではなく、分かるよって理解してあげることが自分に出来ることなんじゃないかなと思って、“季節に関わらず訪れる始まりや挑戦、それに向き合った時に気付く自らの未熟さや不安、悩み”=“春”と捉えて書き進めていきました(たしか)。
 
お分かりの通り難しいことになっちゃって、あまりにも悩みすぎて、硬い頭になり、これじゃダメだ~って繰り返した結果、今リリースされている楽曲の中で作詞に1番時間が掛かりました(笑)。 
 
何が時間かかるって、明確に“この人に向けて!”ってことじゃないから尚更、誰かを肯定してあげられる言葉って適当じゃいけないと思うし、他人事では書きたくないし、だけど“頑張れ!大丈夫!”とは言い切れなくて。
 
加えて、こういう歌詞を書いている際に生じるのは、自分のことも肯定してあげる作業。
 
書き進めてる中で出てきた歌詞に対する“これでいいのか、、?”っていう疑問に対して、“その言葉で大丈夫だよ!”ってどこかで自分を肯定してあげる。自分自身に向き合う作業。
 
 
これが時間かかるんだよね。
 
 
Make my day」も1ヶ月半くらいかかったかな。シズゴ、リニューアルってわけではないけど、自分たちの新たな面と、自分たちの可能性を信じてみたくて。っていうか、こういう曲ずっとやりたかった!
 
ポップな楽曲だけど、ちゃんと自分が思うバンドを感じられるアレンジが出来たし、歌詞は「春の中に」で向き合う作業の経験があったからこそ、少し遊びも入れてあげれたしね!物理的な距離的な近さではなく、心の近いところに直接届けるようなね。
 
この2曲に関しては、こんなに時間かけて作ったんだよ!えっへん!ってことではなく、何かに頑張れる自分がいたことがとてつもなく嬉しかった。
 
大人って言われる年齢になってくると、子どもの時より妥協点や目の逸らし方を覚えて、何か1つのことに努めることが難しくなってくるから。
 
何かに頑張れる自分に気付けたことが嬉しかった。
“兼丸!やればできるじゃない!”って。
 
難産であればあるほど完成がとてつもなく嬉しい。無駄だと思っていた時間がそうじゃなくなる瞬間。悩んだ時間が報われる瞬間というか。何にも変え難い喜びがある。これだから音楽はまったく。あれ、僕はドMなのかな。
 
ということで“向き合う”っていうメンタル的な部分もあるけど、そんな過程があったお陰で作れた2曲でした。コロナ禍じゃなかったらこの作業から逃げていたかも。「春の中に」も「Make my day」も、2曲とも生まれてなかったかも。そういうタイミングだったのかな。
 
さて、3回に渡って1st full album『SINCE』収録曲の制作過程や、作詞の話をしてきました。いかがでしたでしょうか? ここまでディープに話したのは初めてかも。コラムを通して、より楽曲を愛してもらえたらいいなぁ。全てはそこに繋がってくれたら何でも良いや。
 
3回とも読んでくれた方はありがとうございました。
 
『SINCE』よろしくね。
それでは、ライブハウスでお待ちしてます。
 
またね。

<the shes gone・兼丸>

◆紹介曲
ディセンバーフール
作詞:兼丸
作曲:兼丸

春の中に
作詞:兼丸
作曲:兼丸

Make my day
作詞:兼丸
作曲:兼丸

◆1st フルアルバム『SINCE』
2021年10月20日発売

<収録曲>
1.Make my day
2.ラベンダー
3.想いあい
4.ガールフレンド
5.春の中に
6.ふたりのうた
7.シーサイドテイル
8.線香花火
9.ディセンバーフール
10.Ask him.