僕がなぜ今ここにいるのか。なぜ歌うのか。

 2022年9月7日に“idom”がニューシングル「GLOW」をリリースしました。タイトル曲は、フジテレビ月9ドラマ『競争の番人』の主題歌として起用された楽曲。シングルには同曲に加え「i.d.m.」、「Savior」、「HELLO」、「GLOW -Instrumental-」の全5曲が収録されております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“idom”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第1弾。綴っていただいたのは、新曲「GLOW」にまつわるお話です。この世は無情だ、ずっとそう思いながら生きてきた彼が、なぜ今ここにいるのか、なぜ歌うのか…。その想いを明かしてくださいました。歌詞と併せて受け取ってください。



この世は無情だ。
 
そんなことばかり思って、歩んできた人生だった。
多くの人が辛い現実と共に、日々を生きている。
僕もその一人だった。
 
貧しさや様々な問題を抱えていながら、それらを悟られないよう、周囲に気丈に振る舞い、明るい人物を演じていた。家に帰れば、ほの暗い部屋で布団に体を隠し、歯を食いしばって声を殺しながら涙を流す。そんな10代を乗り越えて、自分自身の力でこれから歩んでいこうとしていた矢先、新たな絶望はやってきた。
 
新型コロナウイルスの感染拡大により、希望していたイタリアでのデザイナーとしてのキャリアが絶たれてしまったこと。僕にしてみれば人生の行き先を見失う出来事だった。そして愛する友人との別れ。当時、僕の心は限界に達していた。
 
そんな僕がなぜ今ここにいるのか。
なぜ歌うのか。
 
全く歌うつもりなんてなかった僕が、現実から目を背けるために始めた音楽。ネットに自分の作品を載せて、沢山の人たちと繋がることが心の支えになった。その輪はどんどん大きくなり、気づけばこうして多くの機会を与えられている。
 
正直なところ、この運命が僕に何を求めているのかは分からない。
ただ、これまでの痛みが全てこの瞬間のためにあったのなら、それを乗り越えたことに確かに意味はあると思いたい。
 
GLOW」は弱い僕が前へと進んでいく、希望の歌だ。
 
弱いなら 弱いまま
もがいてたっていいから
ありのままで進め
 
この曲を書きながら「強さ」とはなんだろうとずっと考えていた。
 
腕力があること、お金があること…、色々考えてみたけれど、どれも僕にはしっくりこなかった。だってどれも僕は持っていなかったから。確かにそれらを羨んだ頃もあった。けれど、これまでの道のりを振り返った時に、今の自分の力になっているものは、どれも逆境の中で手に入れたものばかりだった。努力して掴み取ったもの。自分自身の弱さと向き合って乗り越えようとし続ける姿こそが「強さ」だと、僕自身を通して多くの人に証明したい。
 
あぁ 痛みを越えて 未来を掴め
ぼくらの光を
 
この曲における光や輝きという言葉は希望の象徴であり、自分にとって大切な何かだ。それは家族や仲間かもしれないし、必ずしも人でなくてもいい。僕にとっては音楽が希望の光だった。いつか僕が誰かの希望になれたなら、そんなことを夢見ながら僕は音楽と共に歩んでいく。
 
idom



◆紹介曲「GLOW
作詞:idom
作曲:idom