選択できなかった未来はいつだって美しい。

 2022年9月7日に“idom”がニューシングル「GLOW」をリリースしました。タイトル曲は、フジテレビ月9ドラマ『競争の番人』の主題歌として起用された楽曲。シングルには同曲に加え「i.d.m.」、「Savior」、「HELLO」、「GLOW -Instrumental-」の全5曲が収録されております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“idom”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「i.d.m.」にまつわるお話です。このタイトルは一体何を意味するのか…。大切なひととの別れを、忘れよう、思い出として消化しようと、今もがいているあなたへ。この歌詞とエッセイが届きますように。



忘れられない君との思い出。
 
夢から現実へのグラデーションの間で揺れ動かされているようなあの感覚。過ぎ去った日々は、年月を重ねる毎に美化されていく。嫌だったこと、ツラかったこと、悲かったこと…、確かにあったはずのそれらの記憶は忘却の彼方へと押しやられ、気づけば「あぁ、あの日々は楽しかった」なんて思いに支配されているものだ。
 
二度と手に入れることが出来ないからこそ、
選択できなかった未来はいつだって美しい。
 
君との日々を忘れられない「俺(この曲の主人公)」は、「今の自分は君にどう見えているのだろう」などと思いを馳せながら新たな道を探している。デビューEP収録曲「i.d.m.」ではそんな美しき日々を思い返し、それを失う現実を何とか受け入れようとする人物を描いた。
 
I'm singin'
Lonely
あの街で歌ってるよ Call me
 
君はあの日々のことも忘れて先に進んでいるというのに、「俺」は未だに君との思い出の中に囚われて過ごしている。あの場所で君からの連絡を待ち続けて…。
 
なんと滑稽なことか。ただ当の本人は至って真剣なのだ。失って初めて後悔し、いつまで経っても頭にこびり付いて離れない。悲しいかな、男とはそんな生き物なのである…(笑)。
 
少し話は変わるが、約2年半前の楽曲制作を始めた頃、僕は「idm」という名前で活動していた。
 
1年ほど経ったタイミングで、「idom」という名前にアップデートしたのだが、この曲は僕がまだ「idm」だった頃に書いていた曲だ。そんな活動初期の遺産を掘り起こし、デビューEPに収録できたことは本当に良かった。日々変わりゆく僕の音楽性の変化を、EP内で少しでも感じてもらいたかったのだ。
 
薄々お気づきかもしれないが、本文のテーマ『i.d.m.』のタイトルは、自分のアーティスト名になぞらえて付けたもの、そして何度も出てくるフレーズ“I don't mind”を略したものだ。
 
“I don't mind”を直訳すると
「私は気にしない」といった意味になる。
 
この曲の「俺」は、未だに相手に惹かれていることや、過去の美しい思い出を散々語ってはいるものの、結局その想いは実らないことを理解している。だから何とか最後の強がりで自分に言い聞かせているのだ。
 
I don't mind if you go away 
(君が遠く離れても気にしないよ)
 
人生を送るなかで、こういった別れというものは付き物なのかもしれない。だが誰もがそれらを忘れようとしたり、思い出として消化したりしている。今、この瞬間を美しき日々とするために。
 
idom



◆紹介曲「i.d.m.
作詞:idom
作曲:idom