2024年6月19日に“シナリオアート”が7th Mini Album『sensitive sketch』をリリース! 今作には、未発表曲として「イマジナリーサマー」、「ハイティーン」、「ネムレヌイヌ」、「リンドン」以上4曲が収録。メンバー全員がそれぞれ作詞作曲を行なっており、まさに15年間で培った各々の力を総動員した“全員野球”のような1枚です。
さて、今日のうたではそんな“シナリオアート”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。執筆はハヤシコウスケが担当。綴っていただいたのは、収録曲「ネムレヌイヌ」にまつわるお話。眠れないし、いつも体はだるい。けれど、それ以外はずっと幸せであるその理由とは…。
今日は眠れなかった。昨日も眠れなかったし、明日もきっと眠れないのだろう。そんな具合に眠れない日々が続く。その理由は体質的なものか、精神的なものか、中学生の頃から続いているので、もはや私はプロの不眠症患者だ。朝方までただ天井を見つめたり、人生のわからなさについて考えたり、変わりゆく空の色をじっと眺めたり、星新一の本で時間を潰したりした。
先日、久しぶりに実家に帰った。そこで初めて、父親と自分が似ていることを感じた。仕草や話し方、趣味嗜好まで似ていて、改めて私たちは親子であることを実感した。今までこんなことを考えたことはなかった。
歳を重ねるにつれて、身につけた鎧がポロポロ取れて、最後に残るのは遺伝子由来の人格なのかもしれない。
父親もやはり眠れないらしい。神経質なところもそっくりだ。
これまで環境や出会いによって人間は変わっていくと思っていたが、私はこの年になって、結局は体質が全てを導いているのかもしれないと感じるようになった。
日中はぼんやりと過ごすことが多い。夢の中にいるようだ。「ゆっくりで穏やかで優しいね」とよく言われるが、私はただ頭がボーッとしているだけかもしれない。
そんな感じだから、いつも体はだるく、現代の人間としての負い目を感じながら生きている。
特に才能のない自分だが、自慢できる点がひとつある。それは「運の良さ」だ。
ただただラッキーボーイなのだ。いつもダウナーな人間が、運が良いと言っているのは滑稽だろう。しかし本当に良いんだ。
初詣で賽銭をいっぱい入れたり、徳を積んでいるわけでもないのに。
出会う人が優しくって、いつも導いてくれる。高校進学、大学進学、デビューも現在も、それは華麗に優しくて優秀な人が人生を進めてくれた。
好きなことで生きているし、欲しいものも手にしている。それに音楽だけで10年も生きれていることが奇跡だ。
人との巡り合わせや運命のおかげで、日々が成り立っている。まさかこれが努力の結果や実力というわけではない。超ラッキー。ほんと何もない男なはずなのにめっちゃツイテル。
眠れないし、毎分毎秒だるいけど、それ以外ずっと幸せだとおもう。そんなことを考えながら、新しいアルバムの楽曲「ネムレヌイヌ」を書いた。
何も考えてなさそうな、おうちのワンちゃんが実は哲学家で不眠症っていう感じの曲。ほら!気になるね!!
眠れない夜のお供として、ぜひ聴いて頂きたいと思います。
<シナリオアート Gt/Voハヤシコウスケ>
◆7th Mini Album『sensitive sketch』
2024年6月19日発売
<収録曲>
M1 アカネイロフィフティーン
M2 イマジナリーサマー
M3 ハイティーン
M4 ネムレヌイヌ
M5 メトロノームタワー
M6 センシティブガール
M7 リンドン