きこえるまで

 2024年8月7日に“みゆな”が新曲「きこえるまで」をリリースしました。2023年11月にリリースした「追いかけて」以来、約9ヶ月ぶりとなる新曲。抱きしめられたときのような温もりを感じられる1曲となっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“みゆな”による歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回は第2弾です。綴っていただいたのは、新曲「きこえるまで」を作るにあたって、自身の頭の中でイメージした物語。<あなた>と<私>の心模様を、歌詞と併せて、受け取ってください。



「苦しいな」
あなたが震えながら小さくこぼした言葉を私は今日もきいている。
「....」
そして、あなたにかけてあげられる言葉を私は今日も見つけられなかった。
まるで都会の雑踏に分かりやすく立ち尽くすあなたを見つけられずに邪魔だと思いながらすれ違う様な、そんな冷たさだと思った。
「元気になってほしい」なんてただの私の願いでその願いという名の糸をあなたに縫い付けて無理に元気な顔をつくってほしくはなかった。
なのに私は常套句ばかり浮かんできて、それに伴って動こうとする舌を切ってしまおうかと思う夜もあった。
私は、傍観者じゃないか。
このままでは言葉の責任を恐れ、
あなただから逃げたくせに優しい人とは思われたい。ただの偽善者にすぎない。
あなたが私に話してくれた時に
私とあなたは同じ重さでいなくてはならないのに。
あなたが私を見つめてくれた時に
私とあなたは共犯者にならなくてはいけないのに...。
 
「もうダメかもしれない」
きいたことのない言葉がきこえた。
弱々しい声になぜか生命を感じた。
私にできることはなんだろう。
私があなたにしてあげられることはなんだろう。
必死になって考えた。
もう時間がないのだと、
あなたの生命に迫られている。
難しい言葉など考えていられない。
今、私が思っていること。
私のためなんかじゃなく
無条件の愛を、あなたに、!
「ねえ、大切に思ってるよ」
私は強く抱きしめた。
サボテンのようなあなたは、
きいたことのない言葉に動揺して私に棘を刺し続けた。
それでもあなたを抱きしめ続けた。
それは少し柔らかくて傷をつけられない棘だった。
臆病で、でも優しくてあなたらしいと思った。
「ありきたりな言葉だよね。だけどこれが私の精一杯の想い」
今までこの言葉を伝えたかった。
ありきたりでも良くて、
ありきたりだから良いんだ。
私の言葉があなたの心に入っていくのがわかる。
シンプルな形だからこそあなたの疑心を通り過ぎていく。
あなたが力を緩めて
安心しきった顔で寝た。
その顔は疲れでもなく、とても優しい顔をしていた。
 
 
「あなたの心にきこえるまで
届けるから。」
 
ーーーーーーーー
 
長いだけの駄文かもしれません。
ただ、「きこえるまで」を作るにあたって私の頭の中でイメージした物語です。
読んでくださってありがとうございました。
 
この歌があなたの心に届きますように。
 
<みゆな>



◆紹介曲「きこえるまで
作詞:みゆな
作曲:みゆな